こんにちは!!Convective & Conductive三神です!!

今日は皆さんがそれほど意識していないかもしれない(?)、焙煎機における伝熱の作用について触れてみたいと思います!!

実は同じように熱量を当てていても、その伝熱の種類によって熱の伝わり方に大きく違いが出てくるんですねー。

同じ焙煎機でも、火力操作や排気、生豆の投入量を変更するだけでも、これらの伝熱の割合が結構変わってしまうんです。割合が変わると最終的なテイストやフレーバーにもかなりの影響を及ぼすので、知っていて損はないかと思いまする。

というところで、普段あまり明確に意識が及ばない“伝熱方法”に思いを馳せてみませう(*’▽’)!!

伝熱の種類

焙煎やってる人だと最近はよく耳にするかと思うんですが、熱の伝わり方には3種類があるとされています。それが“伝導”、“対流”、“輻射”です。

  • 伝導
    • 接触する物体間で熱の受け渡しを行う
  • 対流
    • 気体や液体などの郡体流を介して熱の受け渡しを行う
  • 輻射
    • 電磁波を照射して熱の受け渡しを行う

(画像引用)The Heat Conduction Principle, Helena Coffee Processing & Export

https://www.helenacoffee.vn/the-principles-of-heat-transfer-in-coffee-roasting/

エネルギー上の熱効率=“リソースあたりのエネルギー量”は“輻射”が最も高いとされますが、焙煎における効率=“時間帯あたりの焙煎進行度”は“対流が”最も高くなります。こんな感じですね。

  • 輻射と伝導
    • 共に熱効率(エネルギー)が高い
    • 物体の表面を加熱する性能が高く、豆内部に伝熱させづらい
    • 煎りムラや、生焼けになりやすい
  • 対流
    • 熱効率(エネルギー)が低い
    • 物体の全体を加熱するため、豆内部へ伝熱させやすい
    • 均一に焙煎しやすく、生焼けになりにくい

こうした伝熱の種類は、焙煎における挙動に明確に違いが表れます。

【焙煎で主に“輻射/伝導”を用いた場合】

“輻射”は照射面、“伝導”は接触点(または面)のみ伝熱するため、豆内部への伝熱効率が低く、あまり豆が膨らみません。二酸化炭素の発生量が少ないため、デガス(エイジング)にそれほど時間がかかりません。攪拌を高めないと均一に伝熱することが難しく、煎りムラや生焼けが発生しやすくなります。

【焙煎で主に“対流”を用いた場合】

“対流”は全方位から伝熱するため、豆内部への伝熱効率が良く、豆が膨らみやすくなります。二酸化炭素ガスの発生量が多いため、デガスに時間がかかります。取り囲む環境全体で伝熱することができるため、煎りムラや生焼けが発生しにくくなります。

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ちなみに焙煎の場合、接する熱源が高い方、すなわち輻射や伝導ではテイストやフレーバーがはっきりする傾向があります。しかし、これらは同時に物体表面を加熱する性能が高いので“焦げやすい”特徴があります。

それでは次に、それぞれの焙煎機でどのような割合で各種伝熱を取り入れているかを見てみます!

焙煎機の伝熱方法

各形式の焙煎機の伝熱方法を分類するとこんな感じになります。

  • 直火(輻射、対流)
  • 半熱風(対流、伝導)
  • 熱風(対流)

伝熱には3種類あるのですが、こうしてみると、基本的に全ての焙煎機に“対流”が備わっているのがわかりますね。

実は結構ココがポイントになってきます。ちなみに構造は以下の通り・・・・。

  • 直火
    • ドラム壁面が穴あき(パンチング)になっており、熱源から発生する“輻射熱”と“対流熱”が生豆に供給される
  • 半熱風
    • ドラムの後方に空気の取り入れ口があり、熱源が温める空気=“対流熱”が生豆に供給される。さらに同じ熱源が温めるドラム壁面=“伝導熱”も生豆に供給される
  • 熱風
    • ドラムの後方に空気の取り入れ口があり、熱源が温める空気=“対流熱”が生豆に供給される。ドラムは熱源で直接加熱されない

半熱風はドラム後方から熱風を流入させる。直火は穴が開いているので、後方から空気を流入させる必要がない

(画像引用)FUJI ROYAL

https://fuji-royal.jp/faq/947/

熱風式はドラムから離れたところに燃焼室があり、直接ドラムを加熱しない

(画像引用)Toper NK

https://www.toper.com/roasters-by-heating-system/

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上記三つの内、“半熱風”における実際の対流熱効率は70~90%位だといわれています。・・・ということで、それぞれの焙煎機の伝熱性形式から分類すると以下のような性能の序列になってきまーす。

【焙煎機性能(左に行くほどその傾向が強い)】

  • テイストやフレーバーの強さ
    • ①直火>②半熱風>③熱風
  • 焦げやすさ
    • ①直火>②半熱風>③熱風
  • 焙煎の均一性=煎りムラの少なさ
    • ①熱風>②半熱風>③直火
  • 豆内部の伝熱性能
    • ①熱風>②半熱風>③直火

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という感じになりますね!!

もちろん程度によっては上記の順にならないこともありますが、大体こんな感じです。

最も一般的な形式である半熱風は全てのカテゴリーで真ん中に位置していますが、今日はこの半熱風式の焙煎機が、熱源と排気の調整によって、どのように伝熱の性質を変化させるのか見てみたいと思いまーす!!

焙煎時における半熱風ドラムの対流熱と伝導熱の関係

半熱風式の焙煎機では“対流熱”と“伝導熱”を利用しているのですが、火力、そして熱源からドラムの距離によってそれぞれの伝熱分配が変化します。エネルギーの高い伝導熱があるため、フレーバーとテイストは熱風式より強く、明確に表れますが、対流熱が減少してしまうと焙煎の効率が下がり、煎りムラや生豆内部の熱伝達がうまくいかず生焼け(Half Raw)になるリスクが高まります。

多くのロースターが回避したいであろう“焦げ”や風味の“未発達”は火力の低い長時間焙煎(LTLT/Bake)で起こりやすくなりますが、どういった焙煎操作を行った際にどのように伝熱分配が変わるのか・・・・?

ちょっとケーススタディしてみました。

①焙煎中に火力を低下し過ぎた、または火を消してしまった場合

皆さんも1ハゼ以降に意図せずRORが急上昇した場合には、大幅に火力を下げる事があると思いますが、そうするとこんな感じになります・・・。

  • ドラム後部から内部に流入させるための空気をバーナーで加温できなくなる
  • ドラムの余熱での伝導熱が主体になる
  • 対流熱効率が減少し、焦げ、煎りムラ等、豆内部への伝熱不足が発生する場合がある

なお焦げに関してはもちろん焙煎後半(特にDevelopment Phase)で派生しやすくなるのですが、温度帯の低い焙煎初期のいずれかにおいても火力を大きく下げてしまうと、伝導熱が優位になって焦げ臭やピリピリした刺激が発生するリスクがあります。

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半熱風式ではこんな感じでバーナーを通過した空気がドラムの後ろから流入する

(画像引用)旧Terroir Select Coffee =現George Howell Coffee(旧HP記載のため画像は参照不能)

https://georgehowellcoffee.com/

また、生豆投入時に火を消す”Soaking”というテクニックがありますが、ボトム温度(TP)は下がりやすくなるものの、上記の通りドラム内に流入する空気をバーナーで温められなくなってしまいます。この場合、対流熱効率が大幅に減少してかなりの伝導熱主体になるため、あまり火を消す時間が長くなると、クリーンカップの低下や焦げのニュアンスが現れてしまう可能性があります。

この様に半熱風ドラムでは熱量を下げると伝導熱優位に大きく傾くのですが、火力低下時に対流熱をできるだけ活用、または保持したい場合は以下の操作を行う事が有用です。

  • ドラムスピードを上げる
  • 排気を閉じ気味にする

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ドラムスピードを上げると(その遠心力が重力を上回らなければ)攪拌性能は向上し、生豆が対流熱にさらされる頻度が高くなります。また排気に関しては、テストスプーン口からの空気の出入りがない状態=Neutral(中立点)であれば排煙不足を回避しながら一定量の対流熱をキープすることができます。

ただ、焙煎後半に火力を下げた場合、ドラムスピードを拡大するのは対流熱を利用する上で理に適っているのですが、一方で焙煎時間は短くなっちゃうので、なんかイタチごっこみたいになっちゃいますね( *´艸`)ウフフ。

②Development Phaseで排気を大幅に拡大し、火力を下げた場合

最近流行りの(?)、欧米のロースターでよくある、Development Phase(1ハゼ~終了)で排気を大幅に拡大し、火力を段階的に下げて時間を延ばす・・・・みたいな操作を行うとですね、こんなことになります・・・・(/ω\)。

  • 排気拡大によって対流熱を損失する
  • Development Phaseで時間が長くなるため、高温のドラムに接する時間が長くなる
  • 伝導熱主体の地合いが長く続くことによって、焦げのリスクが上昇する

排気を拡大すると上昇気流が発生して、熱量は損失しているにも関わらず豆温度計の表示は上がるので、見た目上は対流熱が増大しているように錯覚します。しかし対流熱のカロリーを損失してしまうので確実に焙煎時間は長くなります。

ロースターによっては排気の大幅な拡大によって下がった熱量を、火力の上昇で補う方もいますが、そうすると伝導熱割合だけが強くなっていき、焦げのリスクから逃れることができません。彼らのイメージ的には“More Air”で対流熱を積極的に取り入れているつもりなのでしょうが、残念ながら結果はどんどん反対の方向に進んでいってしまいます・・・。

うひゃあ。

③特殊な半熱風焙煎機の場合

一般的な半熱風の対流熱効率は70~90%程度と解説しましたが、特殊な焙煎機の場合ではちょっと話が変わってきます、例えばAillioなどではかなり対流熱効率が低いです。IH(Induction Heating)では磁力線の照射対象のみしか加温することができず、周辺の空気を温められないからです。こういった特殊なケースでは以下の動向を見極めることで熱効率の分配がおおよそ判定できます。

*豆温度計=Bean Probeの動向を観察した場合

*排気はNeutral(排気の過不足がない状態)を維持した場合とする

  • 生豆の投入量を減じたときに豆温度計の表示(1ハゼ、終了温度等)が上がる
    • 伝導熱より対流熱が高い
  • 生豆の投入量を減じたときに豆温度計の表示(1ハゼ、終了温度等)が下がる
    • 対流熱より伝導熱が高い

半熱風式の焙煎機に実装されている豆温度計(Bean Probe)はもちろん、生豆に接触してその温度を表示するのですが、同時にドラム内部の空気の温度にも晒されています。普通の半熱風式では対流熱効率が高いので、生豆の投入量を減じると温かい空気に晒される割合が増えるため温度計の表示が上がっていきます。しかし対流熱効率の低いAillioのような焙煎機だと、空気よりもドラム壁面の温度の方が高いので、逆に生豆投入量を減じると豆温度計の表示温度が下がっていきます。

IHでは熱源自体は熱量を持たない。照射される対象のみが加熱される

(画像引用)はるちゃんキッチン

https://haruchan-ih.com/user_data/about_ih

④火力過多で伝導熱が対流熱を上回ってしまった場合の見方(逆のパターン)

今まで解説したように、基本的には火力を減じることによって伝導熱主体になることが多いのですが、通常の半熱風式でも一定のレベルを超えて火力が強くなると、熱源がドラムに近づきすぎて、流入空気よりもドラム壁面の温度が高くなってしまうことがあります。そういった場合、下記の動向を観察すると伝導熱が対流熱を上回ってしまったどうかが判定できます。

*豆温度計=Bean Probeの動向を観察した場合

*排気はNeutral(排気の過不足がない状態)を維持した場合とする

  • 火力を大幅に上げたときに1ハゼの豆温度計の表示が下がる
    • 伝導熱が対流熱を上回っている
  • 火力を大幅に上げたときに1ハゼの豆温度計の表示が上がる
    • 対流熱が伝導熱を上回っている

対流熱効率が高い通常の半熱風であれば、普通は1ハゼや終了時の温度が上がります。あんまり反転して温度が下がることはほとんどないのですが、しかし、メーカーやモデル、そして設計によっては、高火力によってドラム壁面がドラム内空気よりも高温になり、1ハゼや終了時の温度が逆に下がって表示されることがあります(RDCのFuji Royal 5kg窯はガス圧が2kPaとかになると、通常のプロファイルより1ハゼや終了時の温度が低くなる)。なので、ベンチマークの焙煎からそれぞれの焙煎現象(イエローや1ハゼ)の温度の高低を観察すれば、伝導熱、対流熱の比率をなんとなく判別することが可能になります。

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というところの伝導熱と対流熱のお話でしたー・・・・

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うーん、なんか・・・・逆にややこしくなっちゃったかな(;´∀`)・・・・?

うぺぺ。

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ダイレクトな言葉でフラれるか・・・。

それとも真綿にくるまれるような言葉でフラれるか・・・。

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どっちがいいかは貴方次第ぃいいいいいいいいいいいい。( ;∀;)

ぐふ・・・・・