こんちはーCoffee Fanatic三神です。

今年より本格的にコーチング/コンサルティング業を開始した訳ですが、そういえば自分の焙煎に対する捉え方をブログ上では書いていなかったですね。ということで、今回は焙煎設計(Roast Design)についてまとめます。

やっぱり焙煎のトレーニングを依頼するにしても、ファナティックが何を考えてるかわからないと依頼しづらいもんね( *´艸`)。

という事で複数回になると思いますが、順序立てて、そしてやや時系列的に見ていきたいと思います。

まずはいままで重要とされた概念達を冷静に見直し、自分の主観を捨てていく作業から入ります。

・・・断捨離!!

それではいってみよー

果たしてそれは重要だったのか?水抜きとGold Color・・・・

焙煎やってない人だと意味わからないかもしれないですけど、焙煎には“水抜き”、“Gold Color(Point)”と呼ばれる焙煎の通過点があるとされています。ロースターさんはこの2つのいずれか、もしくは両方に強い関心があります。

以前にGeorge Howell焙煎とPaul Songer焙煎の時に紹介しましたね。

両方とも1ハゼと呼ばれる炸裂現象の前の通過点を示しています。

“水抜き”は焙煎における余剰水分を除去する事を指します。焙煎初期~中期にかけてやや低い火力で推移することで余計な水分を減らしていき、フレーバーの前駆体成分の転化をより積極的にするための動作として認知されています。

この水抜きの完了は主にロースターさんの嗅覚によって判定されます。これを行わないと、成分の転移が十分に行われず、クリーンカップを阻害し、フレーバーの発達を妨げると言われてきました。反対にやりすぎると前駆体成分を喪失し、フラットになるとも言われていました(乾燥が進むと1ハゼが来づらくなる)。

“Gold Color”もほぼ同じような意味合いでとらえられています。メイラード反応が活発になる地点とされ、この変色地点への到達が早すぎると、上記のごとく脱水不良となり、長すぎるとフレーバー前駆体成分を失うとされています。この地点までをDrying Phaseと言い、Gold Colorから1ハゼまでをMaillard Phaseと言います。Gold Colorの判定はこの2つのPhaseの中継地点のような位置づけになっています。

Colorと書かれているので、この地点は目視で確認します。

  • 水抜き= 蒸気が落ち着き、生臭さが消える地点。
  • Gold Color= 生豆の緑色が、黄金色に変色する地点。

水抜きの場合、投入後7~8分位に到達するのが一般的で、Gold Colorの場合は4~5分位が一般的です。いずれも火力操作してこれらの範疇に収めるように焙煎を進めます。

両方とも火力操作の目安という位置付けですが、両者の焙煎進行合いは異なります。水抜きの方が完了時の色合いが濃いので、Gold Colorより焙煎が進んでいますね。

一般的には“Gold Color”の方が世界的に普及していると思います。なぜなら香りでの水抜き判定はその場にいないとわからないし、視覚化できないからです(匂いは画像で残せないからね)。

ファナティックはずいぶん長らくこの両方の焙煎を行ってきました。個人的には香りで確認する“水抜き”の方を重視していました。なぜなら色は生豆の生産処理や密度といった物理特性でかなり色づき方が異なったからです(特に密度が違うと超バラバラ)。しかし一方の水抜きも香りを嗅がなければいけないので、自身の体調にすごく左右されました。特に花粉症のシーズンはホントにつらいです。まったく香りがとれません・・・。

なので、どちらも一長一短がありました。

【水抜き=香りの確認】

  • 体調に左右される。
  • 自身の指針を他人と共有しにくい。
  • どの香りが水抜き完了なのか人によって見解が異なる。

【Gold Color=色の確認】

  • 生豆の状態によって色づき方や色調が異なる。
  • 光源によって色合いが異なって見える。
  • どの色がGoldなのか人によって見解が異なる。

どちらの場合も、“どの地点が適当なサインなのか?”と“判定方法の一貫性を保てるのか?”という2点において致命的にコンセンサスがとれません。結局ロースターさん個々の目安にしかなりません(みんな違う・・・・)。

一体どこからが水抜きでGoldなのか・・・?

ということでファナティックはついにこれらの概念から少し距離を置くことにしました。今までのコーチングや競技会、そして様々なカッピングからこうした中間地点の観測は著しく一貫性がなく、コーヒーの焙煎評価において基本的に必要がないという結論に達しました。これらの概念にはカッピングの実証実験において再現性の高い、明確な相関性が見られなかったからです(検証不能・・・・)。

実際のところ上記の理論からすると短時間焙煎は絶対NGになってしまいますが、プロファイル的に水抜きが不十分とされる焙煎でも、Gold Colorへ到達時間が適切でないとされる焙煎でも、焙煎豆に発達不十分なフレーバーを感じなかったことがありました。ものによっては逆に良く発達していた物もあったわけです(あくまでカッピングにおいて特徴が分かりやすいという意味で)。

定まらない1st Crack

1ハゼ=1st Crackは聴覚で感知しやすい物理現象です。この炸裂現象によってコーヒー豆に隙間が多く発生し、そこから熱量が内部に入り込むとともに、“発熱現象=Exothermic Reaction”が開始されます。

物理的に焙煎状況が激変するので、かなり重要なポイントです。1ハゼから終了時までの時間をDevelopment Phaseと言います。この1ハゼ前後で、コーヒーのフレーバーや酸が最も発達します。

とっても重要な現象なのですが、これまた焙煎時の状況が異なると一定の温度や強さで1ハゼが来ません・・・。下記一例です・・・。

  • 投入量や火力が異なると1ハゼ開始の温度が変わってしまうことがある(焙煎機の設計に依存する)。
  • ナチュラルや水分の多いマンデリンなどは外皮が柔らかいので、体積膨張で外皮が伸びてしまい、結果1ハゼ開始が遅くなる=やや高い温度で来ることがある。
  • パカマラ等の大粒種はスクリーンが大きいので炸裂のためのエネルギーを多く必要とし、よってこれも1ハゼが遅くなる=やや高い温度で来ることがある。
  • 火力の強さによって炸裂の強さも変わるので、特に弱い場合、どの時点を1ハゼ開始とするのかが不明瞭で一貫性を欠く

*上記いずれの場合も焙煎機の種類や設計、個体差、温度計の位置/太さによって変動します。

特にLoring(スマートロースター)みたいな熱風焙煎機だと音が聞こえないので、厳密な1ハゼ開始を特定する事自体がナンセンスだったりします。あはははははははは(^○^)。

あてにしたいけど、意外とあてにならないんですよねー。1ハゼ・・・・。

それでも焙煎の中では他の現象よりもわかりやすい“おしるし”ですね(笑)。

あ、後ついでに言うと終了温度(排出温度)も焙煎の仕方や投入量などによって焙煎度合が変わっちゃうことがあります・・・・。(うぎゃあ)

メイラード反応とカラメル化は重要なのか?

焙煎において重要だと言われている上記二つの現象。特にメイラード反応が重要視されていますが、実はカラメル化も遅れて同時進行してます。

  • メイラード反応= アミノ酸と糖類の結合及び褐色化
  • カラメル化=    ショ糖類の褐色化

簡単にまとめるとこんな感じ。両者の違いにすごくこだわる人は多いですが、得られる結果はほぼ同じ・・・。それは“香ばしい香り”です。

フレーバー的にはキャラメル、チョコレート、トースト、こんなもんですね。どんなに頑張ってもシトラス、ベリー等のフルーツフレーバーが現出することはありません・・・。フェニルアラニンのメラノイジンにはスミレやライラックの香りがあるようですが、まずそんなの出てこないですね。

20年くらい前までは、“チョコレート”は素晴らしいコーヒーを表現するフレーバープロファイルでした。しかし今では一般的です・・・(ふつー)。

偉大なコーヒーのフレーバーはフルーツや花の香り、明るい酸などに起因しているので、はっきりいってメイラードとカラメル化にこだわる必要はほとんどありません。そもそもたいていのコーヒーにキャラメルやチョコレートは感じるし、焙煎度合いを深めれば、メイラードもカラメル化も促進されます。

焙煎中に自然に伴ってくる現象なので、メイラードやカラメル系のフレーバーを出すためにわざわざ“水抜き”とか“Gold Color”とか、無理に頑張る必要はないわけです。

その“焙煎プロファイル”の根拠はなんなのか・・・?

よく“適切な焙煎”、“おいしい”、“正しい焙煎方法”などが焙煎の書籍であったり、コーチングマニュアルなどで解説されていることがありますが、何をもって適切/おいしい/正しいのかが全く分かりません。

しかし必ず焙煎の教本には“推奨”の焙煎プロファイルが書いてあったりします。でもこの推奨も良くわからないのです。でも推奨があるってことは、それ以外のプロファイルを著者は“推奨していない”訳ですよね・・・。

例えばおそらく日本の深煎り派の人たちにとってはサードウエーブ、特にノルディック系の焙煎は“正しくない”ことになると思います。反対に今のサードウエーブ系のロースターは、例えば長時間低温焙煎なんかは“コーヒーの個性を殺している”と考えているかもしれません。

・・・・そう。

特定のスタイルや、焙煎アプローチを“推奨”するからこそ、おかしいことになるのです。

つまりは“こうすべきだ”という主観的コーチングが多いんですよねー。コーヒー業界は・・・。または変に“科学的見地”から、こういう風に焼いた方がいいというコーチングもありますしね。

“スペシャルティーはこういう焙煎をした方がいい”とか、“水抜きは9分までがいい”とか、“マンデリンは深く焼いた方がいい”とか、たいてい何かしらの主観や決定が入り込んでいます。

今まで読んだりした書籍には必ず、“~が良い”、“~すべき”、“~すべきでない”という事が暗に示されています。

なぜか選択の余地がないのです。あっても焙煎度合位です。でもロースターが本当に知りたいのは“やっぱり・・・。

“何をどうしたら味がこうなる”という事実そのものではないでしょうか(/・ω・)/?

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一例をとって、例えばコーヒーコンサルタントのScott Rao氏は、1ハゼ後のDevelopment時間(Phase)は焙煎全体時間の20~25%程度が良いと提唱しています。それはScott氏本人が素晴らしいと感じた焙煎サンプルの多くが例外もありながら20%程度だったからだそうです(DTR=Development Time Ratio)。

DTR

https://www.scottrao.com/blog/2016/8/25/development-time-ratio

しかし読者は彼が体験したカッププロファイルが当然ですがわかりません。それと同時に彼の嗜好もわかりません・・・。(何がどう良かったのかしら・・・・?)

果たしてDTR20~25%以外の焙煎はだめなのでしょうか?

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もちろんそんなことないですよね(^○^)。

WCRC2019のログデータを見ればわかりますが、優勝者のDTRはSingle OriginとBlendでかなりの開きがあります。チャンピオンのアーセニー氏はSingle Originはやや失敗したと言っておりDTRは19%。成功した方のBlendのDTRは10%でした。全然焙煎傾向が違います。

・・・という事でDTR20~25%が最適だという尺度はScott氏の物になります。それが彼の“推奨”です。その尺度を獲得するにはScott氏と一緒に焙煎してカッピングをして、カリブレーションする必要があります。何がOKでOKでないのかを共有しないといけない訳ですねー。

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と言うところで今日はここらへんでいったん切ります・・・・。

次回は焙煎に対してのスタンスをお話してみたいと思います。

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俺の心はすでに脱水症状・・・・

しかし・・・・好き嫌いの彼方にこそ真の愛があるのだ!!

LoveのGold Pointを超えていけ!!(意味不)

行きつく先は1ハゼという名のBig Bang!!(意味不)

どかーん。