こんにちはー。Drug Fanatic三神ですー(うへへへ)

最近はお薬ネタが続いてます。

前回はカスタムウオーターでお薬を数点お買い物しましたが、今回はCup of Excellenceで行われていた、試薬を使ったカッピングをご紹介しますです。ファナティックは2012年のニカラグアと2014年のエルサルバドルで実際に行いました。再現するにあたってたくさんお薬を買うことになってしまいました・・・(笑)。

久しぶりにRDCでやってみましたが、有機酸はおいしいですね!うまく混ぜればケミカルコーラとか作れそう( *´艸`)

なお今回登場する、リン酸とコハク酸はファナティックが独自に追加したものです。発酵の検体である酢酸は他の物質だったかもしれませんが、とりあえず今回は酢酸を採用しました。

COE試薬Cupping Calibration

そもそもはどういったコーヒーが素晴らしくなる要素があるか?という分析のために発案されたのだと思います。このカッピングが行われた当時には、実際のコーヒーでないものをカップする意味があるのか?という批判もあったかもしれませんね(もちろん試薬カップの後に実際のCOE出品コーヒーでカリブレーションする)。なおこうした取り組みの主幹はやはりMr. Paul Songer氏です。

当然試薬はコーヒーとは違うのですが、こうした特定の味の要素だけを抽出したカッピングはとても分かりやすく、その違いや相乗効果を判別しやすい効能があります。という事で、機会があればファナティックはやってみることをお勧めします。

またこの試薬カッピングはあくまで“たてまえ”です。実際にはそういった酸の成分等が入っている場合もありますが、全く含有されていないこともあります。しかしコーヒーに後述する酸の味に近いものが感じられた場合には、各種の有機酸等を含む果物を表現しても可能という事にもなります。

【酸とフルーツの一例】

Citric(クエン酸)⇒柑橘系フルーツ他

Malic(リンゴ酸)⇒林檎系フルーツ他

Tartaric(酒石酸)⇒葡萄系フルーツ他

いずれもフルーツの代表的な酸ですね!

果実の糖と有機酸

http://ww7.enjoy.ne.jp/~citrus-ryu/toutosann.htm

ということで、どういった味わいがそれぞれのフルーツの酸なのか、又は近いのか、という事をシミュレーションするための方便なのですね。この試薬カッピングは。だからあるなし論で考えたらだめです。たぶんクエン酸とリンゴ酸以外は大体ないから(^○^)。

それでは実際に試薬をリストアップしていきます。なおこの試薬カッピングではコーヒーの代表的な酸である“キナ酸”は出てきません。コーヒーにどの様な“コーヒー以外のキャラクターが”現れるのか?を検証するのが目的だからだと思われます。

試薬はアマゾンとかの通販でも購入できるので良かったらトライしてみてくださいね♡

【酸の部】

  • クエン酸
  • リンゴ酸
  • 酒石酸
  • 乳酸
  • リン酸
  • コハク酸

【質感の部】

  • グリセリン
  • メチルセルロース

【トラブルの部】

  • 塩化カリウム
  • タンニン酸
  • 酢酸

では酸の部からいきましょうか!

酸の部

まずは酸のそれぞれの味を一覧で出してみます。

【酸の味覚プロファイル】

  • クエン酸        穏やかでシンプルな酸
  • リンゴ酸        酸が強く華やかでやや甘さと質感を伴う。Structureが強い
  • 酒石酸           酸が強く質感を伴う。アフターに渋みを伴う。Structureが強い
  • 乳酸               やや酸が強くシンプル。質感を伴う
  • コハク酸        シンプルな酸で甘味を伴う
  • リン酸            かなり強い酸。塩味と苦みを伴う

・・・こんな感じでした。ちなみに意外かもしれませんが、有機酸の中でクエン酸(酸度100)は実はそんなに強くない酸です。実際は他の酸の方が強くてリンゴ酸(120)、酒石酸(130)、乳酸(120)、コハク酸(120)、リン酸(250!!)となっています。

食品添加物基礎講座

https://www.asama-chemical.co.jp/TENKAB/YUKAWA12.HTM

(・・・・なんかソースによっては乳酸が強くなったり、弱くなったりするな・・・・?テイスティングした感じでは割と強い印象だったけど・・・?)

しかし実際のフルーツだと含有量が異なるので、酸の強さを果物に例えて序列するとレモンが一番酸強く、その次にリンゴ、ブドウの順になると思います。

ということで実際の成分の強さと、果物での強さの感覚は分けて考えないとダメということですね(#^.^#)。

このグループだとリン酸H3PO4のみ無機物ですね。それ以外は有機酸です。コハク酸は貝などに含まれるうま味の一つとして認知されていますが、アミノ酸ではありません。なおクエン酸、リンゴ酸、コハク酸は“クエン酸回路”という人体の代謝エネルギーを生み出すメカニズムの一部になっています。

クエン酸

いわゆるすっぱい柑橘系を想起させるさわやかな酸です。味わいはシンプルで少し淡泊な感じです。強さもそれほどないです。ただ実際のフレーバープロファイル(シトラス系)の場合はシンプルでさわやかな酸質を感じたときに用いるといいと思います。

リンゴ酸

背骨(Spine、Structure)のしっかりした強い酸です。クエン酸に比べると微かに甘さと質感があり、酸の味わいに複雑さを感じます。基本的に華やかな印象です。酸がはっきりしていて甘さがあり、ややコンプレックさを感じる場合にリンゴ系のフレーバーを想起できると思います。またはリンゴ酸に関連するフルーツで形容します。

酒石酸

リンゴ酸よりやや酸が強く同様にStructureを感じます。質感もありますね。特徴的なのはアフターの収斂味を感じさせる渋み。まさに葡萄の皮といった感じですね。このことからなにかしらの酸にやや渋みが加わった場合にブドウ系のフレーバーを表現してもよさそうです。または酒石酸に関連するフルーツで形容します。

乳酸

酸は強いですが、複雑性を感じる酸ではないです。かなり質感を伴っているためなんとなくトロっとした後味を感じます。それほど甘さはありません。やや重さがあってなめらかな質感を伴う酸はヨーグルト的な感じになるかもしれませんね。フルーツの中には乳酸系の芳香を持つ物もあるので(トロピカルフルーツ等)、そういったフルーツでも形容できると思います。

コハク酸

ややシンプルな酸に甘さをともなったマイルドな印象。リンゴ酸より派手さはないですが、結構甘さを感じます。あえてコメントで“コハク酸”という言い回しはしづらいでしょうが、うま味は甘さを伴う(ちょっと定義は異なるが“うまい”は“あまい”から来たとも言う)ので、こういった味わいを“UMAMI”と表現してもいいかも?(ただの甘い酸だけど・・・)

リン酸

かなり強烈な酸の強さです。よく苦みを伴うといいますが、苦みより塩味の方が主張強いように思います(濃縮マグネシウムのトラウマ・・・・(/ω\))。しょっぱい酸ですね。発酵がかなり強いナチュラルのコーヒーではこういった塩味のような味わいを感じることがあります。塩気を感じるので別の意味でスープのような、うま味的な印象がありますね。(サンラータン???)

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この他にアミノ酸(アスパラギン酸、イノシン酸、グルタミン酸等)なども試そうかと思ったのですが、アミノ酸はそのほとんどが焙煎中に起こるメイラード反応でメラノイジン(香気褐色成分集合体)になってしまうので、あんまり意味ないかな?・・・と思って今回は割愛しました。うぽ。

質感の部

つづいて質感=Mouthfeelの部です。メチルセルロースとグリセリンで異なる質感の印象を作り出します。

【想定モデル】

  • ボディー(コク)                        メチルセルロース
  • シルキー                                        グリセリン
  • エスプレッソのボディー            メチルセルロース(濃い目)

ボディー

メチルセルロースは多糖類でいわゆる漆喰とか化粧品に使われたりします。食品添加物としても認可されています。ちなみに糖類は単糖類が甘さを感じるもので多糖類には甘さはなく、上記のごとく粘性を上げる目的で使用されます(増粘多糖類)。

試薬検体はかなり粘性が強く、いわゆる“ボディー”と言うものを体験させてくれます。とても分かりやすい!!“コク”についての定義については議論のあるところですが、ひとまず質感の強さ=“コク”ととらえて考えてみてください。

シルキー

グリセリンは保湿剤として使用されます(“ひび、あかぎれに”ってパッケージに書いてある(笑))。試薬検体は粘性を伴うだけでなく明らかになめらかな質感を表しており、スムース感やシルキー感が分かりやすいですね。なおボディーはやや軽めです。

エスプレッソのボディー

濃目に溶かしたメチルセルロースですが、これが全然溶けません・・・・。なんかね・・・糊みたいになって塊になっちゃうのよね・・・。さすがに溶かしきれなかったので、エスプレッソよりかは幾分薄くなってしまいましたが、かなりスティッキーな質感になったのでこれはこれでわかりやすいですね!

トラブルの部

今度は生豆の欠点、汚れなどの成分です。想定ダメージはこんな感じです。

【トラブル系】

  • Roughness(汚れ、塩味)         塩化カリウム
  • Astringent(収斂味)                 タンニン酸
  • Fermentation(発酵、腐敗)     酢酸

Roughness(汚れ、塩味)

塩化カリウムは健康上の理由でナトリウム摂取を制限されている方などに代用塩として用いられます。味わいは塩気ですが、いわゆる塩化ナトリウムと違ってやや塩味はマイルドでかすかに苦みがあります。コーヒーのクリーンカップを阻害し、明確な汚れではないのですが、すこし荒れたカップになります(クリーンでなく、なんとなく違和感があるとRoughとよく言われる。やっぱり塩味を指すことが多いかも・・・)。熟度の低い実やドライミルでの精選不足、発酵、ロースト臭等によって不要な塩味等のオフフレーバーが発生することがあります。

Astringent(収斂味)

タンニン酸はいわゆるお茶などの渋みですが、小分けで販売されているものが少なく(柿渋とか日焼け用品ばかりヒットする(笑))、普通にタンニン買おうとすると1kgで5000円とかなので(そんなにいらない!!)今回は紅茶のティーバックを長く抽出することで代用しました。かなり熟度の低い実が混入するとこういった青い渋みが出てきます。もちろん生産処理過程での意図せぬ発酵や腐敗などでも発生します。

Fermentation(発酵)

酢酸はいわゆるお酢の主成分です。クエン酸が分解されて酢酸になるケースが多いらしく、酸味の添加物ではクエン酸を避けるケースがあるようです。酢酸は強烈な臭気を放ちます。原因は主に発酵、腐敗した生豆によるものです。最近の発酵が強いナチュラルでは、たまに発酵が行き過ぎていて酢酸的なフレーバーになってしまっているのもあります。

でもいわゆる発酵臭はイチゴが腐ったような香りに近いです。なので今回酢酸とイチゴの芳香成分“フラオネール”を混ぜようと思ったのですが、調べたらなんとこのフラオネール・・・たった5gで6000円もします!!(; ・`д・´)。・・・という事で諦めました(/ω\)。

第二段階(見出し)

以上の様に一通り検体をカップしたのち、次のステップに進みます。むしろここからが真骨頂・・・・。以下のカップを用意します。ここからは“味覚の相互作用”が重要な概念です。

味覚の相互作用

  • クエン酸+ショ糖
  • クエン酸+リンゴ酸+酒石酸
  • クエン酸+リンゴ酸+酒石酸+ショ糖
  • クエン酸+リンゴ酸+酒石酸+ショ糖+塩化カリウム

クエン酸+ショ糖

クエン酸のカップに少量の砂糖を加えます。そうするととがった酸の印象が和らぎ、甘さと質感が加わることで液体の印象やフレーバーが向上します。甘さによって酸の強さが抑えられました。これを“抑制効果”と言います。そして甘さと質感が加わることで印象が向上しました。

クエン酸単体と比べると明らかに複雑性が増し、フレーバーのStructure(構成/構造)がしっかりします。このカッピングを通してコーヒーの甘さが如何に重要であるかを確認します。

クエン酸+リンゴ酸+酒石酸

酸を複数種類混ぜ合わせることで、それぞれ単体で感じた印象よりも厚みが増し複雑になります。華やかで、心なしか酸の強さもマイルドになったように感じられます。同系統の異なる味を合わせることで印象が向上することを“相乗効果”と言います。よくある例はカツオと昆布の合わせ出汁等です(イノシン酸+グルタミン酸)。ここでは単一の酸よりも数種組み合わさった時の酸の多様性の向上を確認します。

クエン酸+リンゴ酸+酒石酸+ショ糖

上記②の複雑な酸に砂糖を加えます。そうすると甘さが追加されることでさらに酸がマイルドになり、質感も重くなります。特にアフターテイストが長くなります。複雑さはさらに増し、液体として印象度がかなり強くなることが分かります。コーヒーでも多くのフレーバープロファイルで表現できるコーヒーは、このように様々な味覚の要素を内包する事があることを確認します。

クエン酸+リンゴ酸+酒石酸+ショ糖+塩化カリウム

③の溶液に今度はさらにネガティブ要因であるRoughness、塩化カリウムを足します。さてどうなるでしょうか(/・ω・)/・・・・?

カップしてみると液体はそれまで感じていた明確な酸は途端に印象を弱めてしまい、華やかさはみじんも感じなくなってしまいます。かろうじて甘さの印象は残りますが、フルーツ様の酸は確実に変質してしまいました。

この④ではスペシャルティーコーヒーの根幹である“クリーンカップ”が如何に重要であるかを確認することができます。どんなに素晴らしいフレーバーがあっても、土台となるコーヒーそのものの“きれいさ”がなければ、素晴らしい要素が感じられないのです。

味覚の相互作用の中には“対比効果”というものもあります。この場合は甘さに対しての塩味が相当し、甘さの印象が向上する可能性もありますが、塩の割合が多すぎるとそれ以上に失うものが多いことが分かりますね。このあたりは水の硬度(カルシウム塩/マグネシウム塩)と通じるものがあります。

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こうしてCOEの試薬カッピングでは色々なことを検証するのですが、1つ注意があります。

上記の理論だとコーヒーは酸の種類が多くて甘い方がいいことになってしまい、酸の種類が多くて甘いナチュラルなんかが一番いいコーヒーになってしまいます。しかし以前別のブログで書いたこともありますが、それぞれのコーヒーの味のバランスはオリジン、品種、生産処理でかなり異なります。なので、要素が多い方が良いと一概に言えません。(まあ・・・甘さが強くて悪くなることはあまりないと思いますが・・・。)

フルーツで考えるとレモン、オレンジ、ブドウ、パイナップルは全て味が異なりますが、どれが一番いいという事は言えません。なぜならみんな違うからです。

シンプルでも明確な特徴を持つコーヒーもあるし、一見すぐにわからないような複雑なコーヒーもあります。質感が軽く爽快なコーヒーもあれば、甘さが強く質感がヘビーなコーヒーもあります。それぞれの個性が異なるわけです。評価にあたっては稀少性も重視されます(シンプルだけど新しいフレーバーとか)。

なので、味の対比効果を参考にしながら、実際のコーヒーのバランスを考えて評価する必要がある訳ですね。(むずかしーねー)

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という事で試薬カッピングでしたが、もしやってみたくなったらファナティックにセミナー依頼してね!!

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試薬はもう十分だ!!!

わたしが本当に欲しいのは・・・

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恋の秘薬(惚れ薬)・・・・

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はい!逮捕!!!!!(/・ω・)/