気づけばもう年末・・・。こんにちは年の瀬 Fanatic三神です。

今回は今までの抽出における諸条件や変動要素などをまとめて、いかに抽出を設計していくのか?RDCで言うところのBrew Designについてまとめてみました!

もうこれでもか・・・・って感じになってしまいましたが、お付き合いいただければ幸いです。

寝正月確定の方は、コーヒーをたくさん淹れてくださいね♡

実践的Brew Design

  • カッピングで素材の特徴を把握する
  • 水質選定
  • 設定したバランスを“達成可能”な抽出器具を選定する
  • 抽出方法の仮設定=一貫した抽出手順を考える
  • 濃度と抽出量を設定する
  • 酸/フレーバー VS. 甘さ/質感
    • 湯の温度を調整する=酸と苦みのバランス
    • メッシュの調整=どの程度まで味を引き出すか
  • 抽出方法の再設定
    • 抽出時間の調整①=味の濃さ+質感の強さをどこまで強めるか(TDS補強)
    • 抽出時間の調整②=メタルフィルター/ウエットペーパー/ドライペーパー
    • 抽出回数の調整=味の濃さ+質感の強さをどこまで強めるか(TDS補強)
  • プレゼンテーション

カッピングで素材の特徴を把握する

素材の把握でカッピングに否定的な方もいますが、長くコーヒーの品質評価を行ってきた身とすれば、これだけ簡単で、再現性が高く、しかも特徴を把握しやすい方法はないと思います。

今もってカッピング以上に素材の特徴を判定できる手段に出会ったことがありませんねー。

ただ誤解のないように言いますと、カッピングは“カッピングフォーム上の全ての特徴が分かりやすい”(Clean Cup~Overallまで)抽出であるという事であって、提供用に最適な抽出ではないという事を理解する必要があります。実際にお客様にお出しするコーヒーはお店や、バリスタの考え方によって味わいが設計されます。

酸が強い・・・

ナチュラルフレーバーが強い・・・

質感が弱い・・・

甘さが強い・・・

フレーバーが繊細・・・

あまりクリーンじゃない・・・・

などなど、いろいろ感じることがあると思います。その上でこの部分はこういう風に調整したいと思ったりすることもあるでしょう。

こういった味のリバランスを行う際に、コーヒーが持つカッピングフォーム上の全ての特徴が分かると設計しやすくなるのです。

抽出はマジックではありません。どんなに素晴らしい抽出テクを用いても、ブラジルNo.2がパナマのゲイシャみたいな味になることはありません。生豆そのものが持っている特徴と、焙煎によって生み出されたキャラクター以外の物を発現することはできません。

また全ての味覚要素を盛り込むことはできません。酸を際立たせるのであれば甘さや質感強度を抑える必要があるし、その反対の場合もあります。こうした味のバランス設定においては、いいとこ取りはできないのです。

対象コーヒーの味のバランスを考え、抽出目標を設定する

ある程度コーヒーのキャラクターがつかめたら、抽出対象となるコーヒーのカテゴリーを決めます。Drip?Espresso?French Press・・・・?カテゴリーが決まると抽出器具とBrew Ratioがある程度のレンジに定まってきます。

その上でオリジン、生産処理、焙煎度合、カッピング等から把握できた素材の特徴から、どういったバランスのコーヒーに抽出するかを検討します。濃さはどのくらいか?甘さと質感を増強するのか?酸とフレーバーを増強するのか?それぞれのバランスを任意の状態に設定するために想定する味のモデルを想像します。

浅煎りや水洗式のコーヒーは酸が明確であることが多いです。

深煎りやナチュラルのコーヒーは甘さが強くボディーがあることが多いです。

それぞれの焙煎豆の状況から味づくりを考えます。

水質選定

抽出に使用する水は全ての味の土台になるので、当たり前ですが超重要です。お店に来ている浄水場の制限もあるし、浄水器の性能も関わってきます。軟水器で硬度を下げることは一般的でも、逆に硬度を上げることはそれほどないですね(一応そういう水質調整機もある)。

ちなみにおいしい水でいれたらコーヒーがおいしくなるとか稚拙なことを考えてはだめですからね(; ・`д・´)。あくまで水の状況と、自分が求める味のイメージに基づいて客観的に分析して下さいね!!

水が硬かったら硬いことを前提としたセットアップ。水が柔らかかったら柔らかいことを前提としたセットアップをしないといけません。

とりあえず水の硬度における味覚の作用は以下の通りになります。

  • 水の硬度を上げると味覚の対比効果が強まります。甘味、苦味、質感が付加され相対的に酸が抑えられていきます
  • 水の硬度を下げると味覚の対比効果が弱まります。酸味が主体的になります

硬度は高すぎると酸味が弱くなって雑味/エグ味が増え、低すぎると酸味が主体的で味が淡泊になります。

水の硬度の主成分はカルシウム塩とマグネシウム塩になり、これらの配分を変更しても味わいに変化をつけることができます。

  • カルシウム塩=質感の強度向上に関連
  • マグネシウム塩=甘味の強度向上に関連

最近では水の硬度を調整する人が増えてきました。カスタムウオーターですね。まあお店で水を作るのはハードルが高いので、主に競技会向きですねー。

PHが酸性に傾いている水だと当たり前ですが酸味が比較的明確になります(まあ飲んでわかるほど酸っぱい水で抽出することはまずないだろうけど・・・・。)。

またカリウムやナトリウムなどのいわゆる“Roughness成分”(塩味)が入っているとコーヒーの酸味が和らぎ甘味が強くなりますが、クリーンカップが低下してフレーバーのStructure(明度)が鈍くなりますね。

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よかったら下記もご参考に。

抽出上級編!水の章

とりあえず水をカスタムしてみた

伝説のCOE試薬カッピング!!+α

設定した味のバランスを達成可能な抽出器具を選定する

抽出器具によって個性や味の出方が違うのは当然ですね。ただ全てをトライすることはなかなか難しいので、少しずつ検証を重ねるしかないですね。下記は一例です。

  • HARIO V60
    • 酸やフレーバーが分かりやすい。過抽出未抽出の味が混在する。質感は軽め
  • Kalita Wave
    • 甘さや質感が出やすい。お湯の接触面積が大きいため濃度感があるが、あまり攪拌が進行しないので味がシンプルになりやすい
  • Cores
    • 甘さや質感がかなり出やすいが質感が粉っぽくなる。メタルフィルターなので、微粉やオイル分が雑味となって味を阻害しやすい

上記はあくまでファナティックの主観なので、抽出する方々はそれぞれを試してみて、自分自身のインプレッションを保持してください。ただ抽出器具は抽出における影響がどうしても大きくなってしまうので、希望とする味のバランスを達成できる器具をテストして選定する必要があります。

ドリッパーの場合は穴の口径によって抽出時間に制限がかかるので、希望の抽出時間との兼ね合いを考えて選ぶことも重要になります。

抽出方法の設定=一貫した抽出手順を考える

エスプレッソマシンやドリップマシンなどは機械抽出なので、あまり抽出その物の方法に関わることはできませんが、ハンドドリップ等の手点てだと人の手による偏差がかなり大きいです。抽出方法の変更はかなり慎重に行う必要があります。

なぜなら抽出方法が変わるとセットアップが一からやり直しになるからです。Brew Ratio、レシピ、温度、メッシュを最初から組み直さなければいけません(リセット(涙))。

もちろん大会などでハイエンド(?)の技法を採用するのも構いませんが、日々のカフェ業務では作業の安定性と品質の再現性、手順の均一性が重要になってきます。自分ひとりでやるのならいいですが、スタッフさんを複数名抱えているお店だと、みんなが許容レンジに収まれる抽出方法を行っていないと人為的な要因で品質が全く安定しません。

いくら素晴らしい(?)抽出方法だとしても、淹れる度に味がブレブレではお客さんは離れていってします。

なので、用途と目的を明確にして抽出方法を採用することになります。あくまで抽出方法は抽出に影響する要素の一つなので、おいしい淹れ方、ダメな淹れ方などは存在しません。抽出方法と抽出方法以外にセットアップしてきた各項目の総和がコーヒーの最終的なテイストを形成するという事をしっかり理解する必要があります。

まず試してみたい特定の抽出方法、または各調整項目を検証する上で再現性の高い抽出方法を採用し(仮決めする)、一通りセットアップが完了したら再度抽出方法を考察します。

濃度と抽出量を設定する

器具と抽出方法が決まったらBrew Ratioで抽出比率を決めます。そして希望抽出液量とBrew Ratioから算出されるレシピを設定します。

例えばBrew Ratioが1:15、使用するお湯の量が300gだと粉量は20gになります。大体粉量の2倍量の水がコーヒーの粉に吸われるので、落とし切りの場合、出来上がりは250g~260gの範疇に入ると思います。これがレシピですね。

Brew Ratio = 1:15

レシピ= 粉20gに対してお湯300g

抽出湯量を厳密に定めるのは難しいので、使用するお湯の量すなわち投湯量がベースになります。いわゆるエスプレッソマシンで言う供給湯量換算=Volume Metricってやつですね。逆に抽出湯量から投湯量を制御することはWeight Metricと言います。

客観的に濃度を測定する場合はTDSメーターを使用して濃度を測ることができます。ハンドドリップの場合だと1.1~1.3%位の濃度が一般的だと思いますが、テイスティングの上で好みの濃度を設定してください。

  • 濃くする場合はBrew Ratioの比率を下げる        (例)1:15⇒1:14
  • 薄くする場合はBrew Ratioの比率を上げる        (例)1:14⇒1:15

この項目は上記の“抽出方法”と同じくらい抽出に影響が大きく、Brew Ratioとレシピを変更した場合、セットアップが一からやり直しになります。さらに粉量によっては抽出時間もかわるので、抽出方法、Brew Ratio、レシピをまず仮決めしないと先に進めません。これら3つはセットアップの土台となるセッティングベースとも言えますね。

反対にセットアップ途中で上記の3点を変更すると、セッティングベースが狂うので検証不可能になり、永遠に彷徨い続けることになります(/ω\)。これら3つは例えるとコンピュータのOSのようなもんですな・・・・。

酸/フレーバー VS. 甘さ/質感

大まかな濃度が決まったら今度は抽出による味のバランスを設定していきます。ここら辺は収率(EY=Extraction Yield)に関わってくる部分になります。前回の分解編で触れた内容を一つずつつぶしてく形になります。

ファナティックの抽出についての考え方(分解編)

湯の温度を調整する=酸と苦みのバランス

湯温管理で苦みと酸のバランス配分を調整していきます。

  • 湯の温度を上げると収率が上がります。甘味、苦味、質感が付加され相対的に酸が抑えられていきます
  • 湯の温度を上げると収率が下がります。酸味が主体的になります

湯の温度は特に苦味の発生に大きく影響していきます。おそらく人間側の生理的な現象が大きいと思われますが、温度が高い液体に苦味を感じる傾向が強いという事実があります。なので、苦味を抑える場合は温度を下げていく作用が必要になります。(深煎りなどでは80℃台のやや低い温度帯で抽出する慣習も存在する)

メッシュの調整=どの程度まで味を引き出すか

メッシュの挽き目(粉の粒度)はコーヒーの持つフレーバーの明確さと、味覚要素全般(酸味、甘味、苦味)の明確さに関係があります。

  • メッシュを細かくすると収率が上がります。甘味、苦味、質感が付加され相対的に酸が抑えられていきます
  • メッシュを粗くすると収率が下がります。酸味が主体的になります

バリスタさんは経験的にメッシュの粒度がフレーバーに及ぼす影響を理解されていると思います。メッシュの細かさはファナティックが言うフレーバーの明確さ=“Structure”に大きく関連します

フレーバーを強めたければメッシュを細かくするのが最も効果的です(高Structure)。しかし反面苦味や、余剰成分が抽出され(過抽出)、さらに微粉が多くなることによって質感が粉っぽくなります。そうすると味が邪魔されてフレーバーを感じづらくなります。

  • メッシュ細かい=Creamy方向(Powdery)
  • メッシュ粗い=Smooth方向(Watery)

こうしたことからフレーバーの明確さはクリーカップ性をどこまで担保できるのかが一つの焦点になります。

なお使用するグラインダーによって粒度分布や粉体形状が異なります。良かったらこちらもご参照ください。

抽出上級編!! グラインダーの章②

抽出方法の再設定

今まで上げてきたBrew Ratio、レシピ、温度、メッシュは数値的に調整が可能な項目であり、基本的に一度設定すれば変動することが少ない項目です。機械抽出であれば再現性のある抽出を行うことは可能ですが(エスプレッソマシンとかPour Steadyとか)、ここからは実際に人の手によって調整される項目を上げていきます。

なお最初の方で述べた通り、抽出方法を変更した場合、Brew Ratio、レシピ、温度、メッシュをもう一度設定しなおす必要があります。なので、ここで仮決めをしておいた抽出方法を見直し、定まったらまたBrew Ratioとレシピから各項目を再セットアップしていきます(アップデート&再起動)。

・・・・・でもまあ、マイナーチェンジ位だったらそんなにセットアップ変えなくてもいいかもしれませんね(#^.^#)。

抽出時間の調整①=味の濃さ+質感の強さをどこまで強めるか(TDS補強)

次は抽出時間の調整になります。全く同じ器具、レシピ、抽出方法だった場合、抽出時間の違いは下記の通りになります。

  • 時間を長くすると収率が上がります。甘味、苦味、質感が付加され相対的に酸が抑えられていきます
  • 時間を短くすると収率が下がります。酸味が主体的になります

抽出時間は質感の形成にも大きく影響します。時間が長い方が、粘性が上がります。液体の攪拌を控えて時間を長く取れば、味の出具合を少し抑えて主に質感だけを強めることもできます。

あ、あとエスプレッソなどの抽出圧力も質感の増減に関わります。圧力が高いと抽出時間が短くなる作用があります。

  • 圧力高いと質感が強くなります。抽出時間が短くなって酸味が主体的になります
  • 圧力低いと質感が弱くなります。抽出時間が長くなって甘味、苦味、質感が付加され相対的に酸が抑えられていきます

ちょっと逆な感じになるのが圧力の面白いところ( *´艸`)。

抽出時間の調整②=メタルフィルター/ウエットペーパー/ドライペーパー

抽出器具では粉とコーヒーの液体を分離するフィルターに様々な素材があります。基本的に目が詰まっている方が抽出に時間がかかり、目が粗い方は抽出時間が短くなります。

同じペーパーでウエット、ドライを比べてみたときは以下の様になります。

  • 濡らす(ウエット)と時間がかかり、収率が上がります。甘味、苦味、質感が付加され相対的に酸が抑えられていきます
  • 乾燥(ドライ)していると時間がかからず、収率が下がります。酸味が主体的になります

濡らした方が、コーヒーオイルが出るといいますが、抽出に影響するのは抽出時間その物が要因としては大きいです。

メタルフィルターについては、投湯回数が多いと攪拌が進んで微粉が目に詰まりやすくなります。1投目は落ちが早いのですが、あまり回数を増やすと後半の落ちが突然悪化するので抽出時間のコントロールに注意が必要です。

抽出回数の調整=味の濃さ+質感の強さをどこまで強めるか(TDS補強)

抽出回数はコーヒーの粉とお湯の接触回数と言い換えることができます。接触回数を増やすには、

  • 投湯回数を増やす
  • 広範囲に投湯する (シャワープレート等)
  • コーヒーとお湯の混合液を攪拌する(スプーン攪拌やラオスピン等)
  • 抽出液を循環させる(短時間水出し抽出機)

などがあります。

  • 接触回数が多いと収率が上がります。甘味、苦味、質感が付加され相対的に酸が抑えられていきます
  • 接触回数が少ないと収率が下がります。酸味が主体的になります

同時に接触回数が多いと濃度上昇と共に質感強度も上がります。

エスプレッソマシンでも最近は複数回でお湯を供給する“パルス”タイプのものも登場してきました(Aurelia 3)。また一時期流行ったPre-infusion(蒸らし機能)も接触回数を増やす機能の一つですね。

複数回投湯する抽出方法においては、最初の1投目のお湯の量を少なくすると接触回数が多くなります。(コーヒーの粉が液体に濡れている方が成分の移動がしやすいため)

1投目の湯量を多くとると酸味がはっきりして、少なくすると甘さがしっかりするのは4:6メソッドで説明されてますね(^○^)。

プレゼンテーション

重ねて何度も言いますが、おいしい、おいしくないではなく、お店やバリスタの考える”どういったおいしさを提供するか?”がとっても重要です。

  • 味づくりのポイント、狙いを明確にする
  • お客様へのプレゼンテーション/アピール
  • エバリュエーション
  • 抽出再考

当然お客さんは多く、一人ひとりの嗜好が異なります。全ての嗜好に合わせることは不可能です。逆にどういった味わいや楽しみ方を提案するかが焦点です。その場合には自分のコーヒーに対する考え方と位置をしっかりと把握しなくてはいけません。

こうしたフローをおさらいして、さらに味づくりを磨いていくのですねー・・・・。

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まあ長くなったけど、主に作用するところをまとめると、

  • 水の硬度⇒  テイストの増減
  • Brew Ratio/レシピ⇒ 濃度
  • 温度⇒ 酸味と苦味のバランス
  • メッシュ⇒ フレーバーの明確さ
  • 抽出時間⇒  テイストの増減+濃度
  • 抽出回数⇒ テイストの増減+濃度

*テイスト=(酸味、甘味、苦味)

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こんなとこ・・・かな???

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いったりきたり・・・・

右往左往することこそが恋の極致( *´艸`)

まさに恋の道はたどり着くことのない堂々巡り。

・・・それは永遠の道程・・・・。

べっぽ♡