前回に引き続きコーヒー粉体(変態じゃないよ)ファナティックみかみです。

本稿はコーヒーのカットされた粉がどのように味覚に作用するかさらに迫ってみたいと思います。

まずは代表的なグラインダー形状、フラットとコニカルを検証します!

フラットカッターとコニカルカッターの違い

まず取り上げたい違いは粒の形、粒形です。

コニカルとフラットの粒形
コニカルとフラットの粒形

前回もちらっと述べましたが、フラットの粒形は細長い直方体に近く、平べったくて角が少ない形をしています。対してコニカルは多角形で粒が立方体に近く、角が多い形をしています。

コーヒーの抽出において、水はこの角の部分からコーヒーの粒子に入り込むと言われています。フラット場合、粒形は角が少なく、また平べったいために表面張力が発生しやすいと考えられます。水が入りづらい。つまり抽出効率が低い=未抽出サイドUnder側

コニカルは角が多く多角形なので平らな面積が少なく、表面積が多いので水を吸収しやすい形状です(ころころ)。これはつまり抽出効率が良い=過抽出サイドOver側。

なおコニカルは、表面積が多いためエイジングが早く進みます(酸化しやすい)。つまり日持ちが悪いです。挽いてすぐ味を出したい場合、例えばすぐ抽出する場合は良いでしょうね。反対に引き売りした時は劣化が早いのであまりお勧めできません。

なので、もう一度まとめると・・・。

フラット=抽出不足性能 Under傾向

コニカル=抽出過多性能 Over傾向

と考えることができます。

エスプレッソ抽出におけるドーシングと粒体の関係

エスプレッソ抽出におけるそれぞれの代表的なグラインダーブランドはこんな感じですかね?

  • フラット           
    •  ditting Peak
    • Mahlkonig EK43
    • Nuova Simonelli Mythos One
  • コニカル            
    •  Mazzer Rober(マッツァーはフラットもやってるけどね)

繰り返しになりますが、フラットはフレーク状で平べったいので、エスプレッソのポルターフィルターのドーシング(豆を入れることね)した場合にあまりかさが増えないので、多く粉を盛ることができます。アップドース。

コニカルは多角形でかさが増えるので、体積が多くなりフラットほど粉を詰めることができません。

粉が細かいほど抽出効率は良くなるので、例えばOverギリギリできれいさを維持しようとすると、フラットで粉を多めに盛った方が希望の味を出しやすいことになります。反対にUnder気味に、粉少なめでサラっと抽出したいけど、できるだけ味はしっかりさせておきたいとなるとコニカルの方が良いという事になります。

詰めたい粉の量と粒度から逆に使用したいグラインダータイプを選択することができます。(ここでもTDSとEY的な視点が発生)

またフラット粒体は形がそろっており、タンピング時に粒子間の隙間が少なめになるので硬くタンピングする事ができます=抽出に時間がかかる=Over。

コニカル粒子は多角形なのでお互いの隙間が空きやすく、あまり硬くタンピングできない=抽出に時間がかからない=Under。

という風にもなります(OverとUnderが逆転したね)。

エスプレッソのチャネリング(水の落流=経路ができて抽出が偏ること)ではコニカルが起こりにくく(隙間がいろんなところにある)、フラットの場合はタンピングを強くやりすぎたり、粉を細かくしすぎるとパッキングが硬くなるため、せん断(ねじれてクラックができること)が発生したり、バスケットと粉の間でチャネリングが発生する場合があります。

フラット、コニカルはこんなとこかな?

続いて刃の成型、形状等その他最新の特徴を考察していきませう。

最新の機能、特徴について

最近は研究、検証が進んでいて、様々な試みが行われています。代表的なものを取り上げますね。

刃の成型方法

グラインダーで注目を浴びている機械にMahlkonigのEK43があります。もともと廃版寸前だったのが、World Barista ChampionshipでMatt Pergerが使用したことで一躍スターダムに躍り出ました(遅れて花咲いた俳優みたいなグラインダー)。彼のプレゼンによるとグラインド時にダマが発生しづらく、粒度分布に大変優れていたので、エスプレッソに素晴らしい作用をもたらすとのことでした。

最近ロールアウトされたditting 804 Lab SweetはWorld Coffee Brewer’s Championshipの大会認定機になったのですが、今までの804と比べるとアシディティーが明確でフレーバーはしっかり。クリーンカップかつなめらかな質感が感じられるようになりました。(反面甘さ、印象は弱めで、ボディも弱い)

これら両方のグラインダーに共通していたのは刃の成型方法でした。

EK43は古いモデルでもともと刃に鋳物=Cast Ironを使用してました。刃一つ一つを金属の鋳型に鉄を流し込むことで成型を行っていたのです。成型後は機械でゆがみを取り、刃付けを行って出荷していました。ditting社でも同じように以前は鋳物の刃を使っていました。

ここまで書くとわかると思いますが、一つ一つ型取りすると大変手間がかかります。さらにゆがみ調整、刃付け等を行うと時間がかかり、コストもかかります。なので、鋳物製造は中止され、代わりに精度の高い鋼管を裁断し、マシンニングを使用してコンピューター制御で刃をカッティング。切付けて成型するようになりました。

見てみると明らかに刃の形状と質感が全然違います。まず刃のエッジ数が鋳物の方が少ない事がわかります。 鋼管カットは最も粗い刃が16枚。対して鋳物は10枚になっています。そしてそれぞれ粗い刃から数えておおよそ6段階の刃付けがされています(右に行くにしたがって順に小さな刃になる)。

これは単純に、鋼管カットの方が粉砕回数が多い事を意味します。

鋳鉄は巣が微細レベルで入るため、細かい刃付けが困難なため刃の数が少ないのだと思われます(下手すると欠ける)。また鋳型では鋼管カットの様な微細な型(この場合は細かい刃)は金属が流れにくく、技術的にも成約があるので無理がありそうです。

刃の数は鋼管タイプの方が多く多段階になってシャープ。鋳物は刃が少なく丸みを帯びています。実際に粉砕すると刃が少ないので鋳物の方が早く粉砕できます。そして結果的に鋳物の方が微粉が少なく、粒度が揃っていました。

これによりいきなり鋳物見直しブームが始まり、みんな昔のスタイルに戻ることになりました。Peak、EK43、804Lab Sweet等がこぞって以前の鋳物スタイルの刃を搭載する事になったのです。

考えてみたらすごい事ですね。昔に戻るとは!!

ここからは僕の考察なのですが、鋳物の刃には以下の効能があると思われます。

粒形

鋳物は刃が少なく粉砕回数が少ないので、粒体の角が少なくかつやや大きい

⇒未抽出Under傾向

粒体表面

鋳物はマイクロレベルで表面にざらつきがあり、粒体表面は荒れている可能性がある

⇒過抽出Over傾向

微粉

鋳物は鋼管に比べると金属が柔らかいのでカット時に豆に柔らかく刃が当たると考えられる。つまり衝突破壊による微粉発生が少ないと思われる。さらに刃の数が少ないので粉砕回数が少なく、微粉発生の機会も少ない。

⇒微粉が少ない

これらにより、鋳物刃はアシディティーがきれい。フレーバーも感じやすい。質感はなめらかになると思われます。

反対に鋼管刃は甘さがしっかりして味が強く、質感も重たい。という風になるでしょう。

ファナティックは両方比べてみたけど、味の特性がほんとに違うので、どっちがいいとかじゃなく、出したい味のイメージ、豆の種類や焙煎等で使い分けるのがいいように感じました。(うふうふ)

チタンコーティング

ディスクの刃をチタンでコーティングすることによって刃の剛性を高めます。これによって摩耗が抑えられ、刃が長持ちします。最大の特徴は静電気耐性が強いので、エスプレッソなどの天敵、Clump=ダマが発生しづらいという点ですかね。抽出時にチャネリングや中執不均衡のもとになるのでできるだけない方がいいです・・・。

でもね、高いよ・・・。チタン・・・。あとむっちゃ硬いから工作しづらい。

回転数の制御

最近のエスプレッソグラインダー低回転で粉砕するものが出てきました。これは熱の発生を抑えるだけでなく、ゆっくり排出されるとドーシング時に細かくグラム数を調整するのにとても役立ちます(グラインディングスピード早いと超わたわたになるよ!ひゃー!って感じ)。最近はグラム計量して抽出するバリスタ多いからね。

逆に忙しい繁忙店だと粉砕は早い方がいいですけどね・・・。

そして最新式のNuova SimonelliのMythos 2は任意で回転数を選ぶことができるようになりました。400~1200Hzの範囲で設定できます。ちなみに数値が高い方が、速度が速いです。遅いと粉砕に時間がかかります。早いと遠心力が強くなるのである意味ちょっと雑に粉砕されます。遠心力に引っ張られて粒も大きくなりますね。

刃の回転数遅い

粉砕の遠心力弱いので、マイクロレベルで粉砕回数が多い。

・粉の角が多い

・表面積が多い(ザラつき)

・同じ粒度設定でも粒が微細レベルで小さい

⇒過抽出Over傾向

刃の回転数早い

粉砕の遠心力強いので、マイクロレベルで粉砕回数が少ない。

・粉の角が少ない

・表面積少ない(なめらか)

・同じ粒度設定でも粒が微細レベルで大きい

⇒未抽出Under傾向

またこのMythos 2は刃の温度帯が3段階から選べるようになっています。基本的には温度は低い方がいいのですが、エイジングの関係などから温度調整も調整妙味があります。豆のエイジングが足りない場合は温度を上げて抽出効率をアップすることも可能です。コーヒーの成分も温度によって移動速度が変わるので以下の通りになります。

刃の温度

低い⇒未抽出Under傾向

高い⇒過抽出Over傾向

まあ毎度毎度なんですが、こうしてみるといろんな局面で細かくOverとUnderを行ったり来たりしてるのですね。永遠に・・・。コーヒーの抽出はまさに無限(無間?)地獄!!

いやーほんと変態的・・・もとい粉体的コンテンツ!!

さすがのファナティックも疲れました・・・。ふう・・・。

内容は上級編超えてるなー。んがー。

次回は水と成分抽出、味の対比効果ですかね・・・。まだまだがんばるぞー!!おー!!

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好きって言い過ぎても、

好きって言わな過ぎても、

どっちもダメなんだね・・・♡。

これこそ甘酸っぱさの無限地獄!!!

べっぽ!!