こんにちは!!

Coffee Fanatic三神です!!

執筆作業はもうこれでもかと、ほぼ毎日行っているファナティックですが、最近ブログに時間を割くことができずにちょっとご無沙汰していました。

(/ω\)スミマセン

今回は久しぶりに焙煎のことを書いてみようかと思います・・・・。

SNSでご存じの通り、最近は割と高い頻度(?)で焙煎セミナーを行っているのですが、さすがにコンテンツが多くてですね、参加者の皆様も一発で吸収するのもなかなかシンドイと思うんですよね・・・。

ということでですね、ちょっと補講といった感じで今日はお話していきたいと思います。

まずは前提としての焙煎科学の考察をしてみたいと思います。

其之一 前提としての焙煎科学?

コーヒー業界のトレンドは波があるので、アーティスティック(芸術/感性的)に行くトレンドと、サイエンティフィック(科学的)が流行るトレンドを行ったり来たりします。

最近は科学的なトレンドが流行っている傾向ですね。結構リサーチが進んでいる部分もあるのですが、少なくない量で過去の研究とかぶっている領域もあります。ただ、以前はそれらの研究が工業的にはリンクしていた部分はあったかと思いますが、マーケット(市場)とにリンクしていることがあまりありませんでした。例えばある科学的メカニズムがあったとして、それがどのようにカッピングスコアや抽出のオペレーションに関わって来るのかがつながってなかったんですよね。

コーヒーに関する研究は日本でもいっぱいあって、すごく細かい考察をしている部分もあるのですが、ただ実際にそれがどうなるとおいしいのかとか、どのように焙煎したらどういったテイストバランスの結果になるのかまで繋げているものはあまりありません。科学的に正しい=おいしいにはならんのですね。なぜなら“おいしい”はその人味のとらえ方や文化によって変動するからですね。どういった味覚的評価や味覚的市場にリンクしているのかが定かでなければ、どんなに新しい科学的発見があっても、「ふーん。それで(‘◇’)?」って感じになります。

また拙著でも書いてますが、特定の成分が果たして本当にそのフレーバーや味の要因になっているかもちょっと疑わしいところがあります。そして“科学的”の定義すらも実はあいまいで、個人的なトライ&エラーが一概に科学的では無いとも言えないんですね。

西洋の文化だと、客観的な根拠を提示しないと、認めてもらいづらいという現状は確かにあります。例えていうなれば、最近流行りの(?)〇〇ゆきの「それはあなたの感想ですよね?」・・・・って感じになっちゃうんです。

自分が中心になって客観的に物事を把握しないといけません。その際に必要なのは①クリティカルシンキング、②正しい三段論法、③バイアスの排除が必要になってきます。そうしないと一人よがりの謎理論になっちゃうからですね。

ただ、理論の構築においては、実体験からくる検証結果が先に来るべきなんです。重要なのは、その“根拠を裏付ける”ということですね。自分の焙煎でこうしたらこういう結果になったというメカニズムを発見出来たら、研究論文や科学ジャーナルでもなんでも良いので、その発見したメカニズムをサポートする(裏付ける)ものを引っ張ってくれば良いだけです。

ちなみに研究論文や科学的メカニズムを先に持ってきて焙煎プロファイルを構築すると、まず間違いなく自分の思っている味から遠のいていきます。あくまでも実体験からくるものが先で、行き詰ったり、反対にうまくいったときに「どうしてなのかな?」と思った際に科学を参照するのが本来の筋です。なぜなら我々は自分たちがおいしいと思えるコーヒーを作るために焙煎しているのであって、科学的な根拠の正しさを証明するために焙煎している訳ではないからです。

なお科学的研究論文の70%以上は再現性が確認できないという報告がされています。また既存のセオリーがガラッと変わってしまうこともあります。なので、学術論文だからといって盲目的に信用してはいけないんですねー。

(参考)BBC. (2017). Most scientists ‘can’t replicate studies by their peers’

https://www.bbc.com/news/science-environment-39054778

ということで、まず、科学は意外とあやふやだということを覚えておいてください♡

からの真っ向から反対の科学考察2点

焙煎における科学考察の両極端といえる最初分岐点と言えば・・・・。これはもう、焙煎初期における高火力、低火力の違いですね!!

早速比較してみたいと思います!!

【A】高火力推しのひと♡

初期火力が高い方が生豆内部への熱量伝達が促進され、豆は膨らみ、内部の未発達(Underdevelopment)を回避できる。

【B】低火力推しのひと♡

初期火力が低い方が生豆外部の硬質化を防ぎ、内部への熱量伝達を妨げないため、内部の未発達(Underdevelopment)を回避できる。

・・・・・・

両方とも同じように内部に熱量を入れたい感じなのがわかりますね。ただ方法論が全く反対です。またその科学的考察と根拠も異なります、例えば・・・・。

【A】の根拠

コーヒーの焙煎は初期に80%体積が上昇するため、初期に高い熱量をかけた方が豆は膨らみ、内部への熱量はより伝達され、豆の構造はもろくなって成分は水に溶けやすくなる=(高TDS)

・・・こうした主張は標高が高くて酸素が薄い地方のロースターさんでよく主張されていますね(Paul SongerとScotto Raoは両方とも本拠地がコロラドのボルダー@標高1,600m)。

(引用)Perren, R., Geiger, R., Schenker, S., & Escher, F. (2023). Recent developments in coffee roasting technology.

■が豆の体積

大体引き合いに出されるグラフはこんな感じです。左が高温短時間焙煎(HTST:Stir Fry傾向)で右側が低温長時間焙煎(LTLT:Bake傾向)です。このグラフを見ると焙煎の初期で体積は著しく膨張しているようです。

両者はともに一定温度の熱風を供給して、左のHTSTは260℃、右のLTLTは228℃になります。ちなみにこの実験ではFluidized Bed(流動層)形式の熱風焙煎機で行っています。つまりは完全熱風で縦に風を送って攪拌するタイプの焙煎機です。日本だとJETROASTとかNOVO MKIIとかがこれに当たりますね。

*Fluidized Bed(フルイダイズ・ドベッド)流動層

多孔質板あるいは多孔板からなる底をもつ容器に粒径の小さな粒子(約20μm~2mm)を入れ,気体を底板を通して流すと,気体は粒子間の空隙を通して上方に流れる。このとき粒子には気体の速度に対応した上向きの力が作用する。この力が粒子に作用する重力とつりあうと,粒子は流体のように容易に流動できる状態となる。このような現象を流動化という。さらに気体の流速を増していくと,粒子間の空隙を流れる気体の流速はほとんど変わらず,粒子に作用する上向きの力と重力がつりあった状態にとどまり,残りの気体は気泡を形成して流動化した粉粒体層を吹き抜ける。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版

流動層(Fluidized Bed)になったコーヒー豆

(画像引用)ダイイチデンシ株式会社 NOVO MKII

https://baisenki.com/spec

・・・・・・・

ふむふむ。なるほど( ゚Д゚)。

それではもう一つの主張に行ってみますか。

【B】の根拠

初期の火力が強すぎると豆の外側の焙煎が先に進み、そのままだと内部に火が入らなくなってしまうため、序盤では火力をおさえて徐々に上げていくようにするのが望ましい。

こうした主張は標高が低く酸素の濃いエリアのロースターさんでよく言われていますね(George Howellのマサチューセッツのアクトン@標高80m=東京の町田市くらい)。

(引用)Dutra, E.R., Oliveira, L.S., Franca, A.S., Ferraz, V.P., Afonso, R.J.C.F. (2001). A preliminary study on the feasibility of using the composition of coffee roasting exhaust gas for the determination of the degree of roast. Journal of Food Engineering, 47, 241-246.

〇が実際の豆の体積、◇が体積増加率

これはブラジルで行われた実験で得られた体積膨張のグラフです。【A】で紹介したグラフとは反対に初期では体積が膨張せず、中盤を過ぎてからの体積膨張が著しいことがわかります。

(あ、ネットをさまよってたら、これと全く同じグラフをBrista Hustleも引用してたね(/・ω・)/)

該当の実験ではガスが熱源のポップコーンメーカーに機械撹拌装置を追加して製造された焙煎機を使用しています。ちょっと微妙な設計ですが(笑)、これはいわゆる半熱風に近い構造です。焙煎においては9分で焙煎度合いが最大(Frenchってことかな?)。12分で焦げるくらいのガス圧を供給しているため、熱量としてはかなりのHTST寄りだといえます。しかしこれだけ高火力を与えても、序盤に全く体積は膨張していませんね・・・。はて?(/・ω・)/

私の焙煎キャリアの多くは半熱風焙煎機の物ですが、やはり初期では焙煎豆はあまり膨らまず、一ハゼ以降で膨張していることは実体験からしても明らかです。

・・・・・・・・

この様に、まったく反対の結果が出ているのですが、ポイントは焙煎機の伝熱形式が全く異なるということですねー。

  • 【A】は対流熱主体の熱風撹拌=熱風焙煎機
  • 【B】は伝導熱+対流熱の機械撹拌=半熱風焙煎機

ちなみに【A】の主張を行う別のセミナーに参加した時、参照された体積膨張のグラフはやはりFluidized Bedの縦対流熱風焙煎機でした。

こうしたことから考えるに、やはり焙煎機や伝熱方式が異なると違う結果が出るようです。よって【A】の科学的根拠は半熱風焙煎機には適用できず、【B】の科学的根拠はFluidized Bed焙煎機に適用できない可能性が高いですね(/・ω・)/

じゃあ、別の観点から考えてみる

とりあえず、ファナティックは焙煎機の形式に関わらず、

  • HTST(Stir Fry傾向)=酸が強く、質感が弱い
  • LTLT(Bake傾向)=酸が弱く、質感が強い

と考えています。

まあ、もし上記に賛同できなくても、例えばこれだったら大体みなさん賛同できますよね?

  • 浅い焙煎=酸が強く、質感が弱い
  • 深い焙煎=酸が弱く、質感が強い

では、もう一度【A】で参照したグラフを引っ張ってみます。

左側のHTSTでは体積膨張後にも水分の揮発レート(黒の実線)のピークが後に来ており焙煎終了時でもレートは下がり切っていないです。右側のLTLTでは体積膨張も水分の揮発レートもおおむね同じように推移してますね。

つまりHTSTでは豆内部の水分が残りやすく、LTLTでは残りにくいということです。同じ論文の別のテーブルを参照してみます。

(引用)Perren, R., Geiger, R., Schenker, S., & Escher, F. (2023). Recent developments in coffee roasting technology.

まずRoasting Loss水分ですが、LTLTの方が減っていますね(11.4±1.4のロス)。そして最終重量もLTLTの方が減っています。(15.86±0.02のロス)。まあ、こういったグラフを参照するまでもなく、普通に焙煎していれば、水分や重量の減りはLTLTの方が多いことは皆さんの実体験としても普通の事なのではないかと思います。

Cooling Lossの部分でHTSTの水分ロス(1.6±0.2)が多いのは、焙煎後の残留水分量がLTLTより多く、冷却中に“乾燥”したということですね。ということは焙煎直後は、水分が結構残っていたことを意味します。

ということで生豆内部の伝熱具合はLTLTの方がより火が入って、焙煎度合が深いということになりますね。つまり・・・・、

  • HTST=豆内外の焙煎度合いに差が多い=外と内の焙煎度合の平均が浅くなる
  • LTLT=豆内外の焙煎度合いに差が少ない=外と内の焙煎度合の平均が深くなる

したがって・・・・

  • HTST=粉砕時の焙煎の平均値が浅い=酸が強く、質感が弱い
  • LTLT=粉砕時の焙煎の平均値が深い=酸が弱く、質感強い

になる訳ですな!!(∩´∀`)∩

豆が膨らむのはそれなりに大切ですが、やはり、それよりも中と外の焙煎度の違いの方がコーヒーのテイストに与える影響は大きくなります。

ちなみにAillioみたいな伝導熱主体の焙煎機だとよりこういった挙動が強く出ます。火力が強すぎると、伝導熱が強すぎて煎りムラになり、内部に火が伝達する前に外側の焙煎がすごい勢いで進みます。膨らむ膨らまない以前の問題ですね(笑)。

どうしても豆を膨らませたいのであれば、対流熱を増やすのが最も効果的です。Fluidized Bedのような熱風焙煎機であれば割と簡単に膨らませることができますが、半熱風の場合はドラムの回転数を上げ、ダンパーを締め気味にして対流熱を損失しないようにすれば膨らみやすくなります。

ただ繰り返しですが、膨らんでもHTSTでは結局、豆の外と中の焙煎度合の差の方が影響度高い事が上記のグラフやテーブルからもわかりますね。

なので、あんまり膨らますこと自体に意味がなく、結果として膨らむというのが筋ですかねー?大事なのはカップの結果です!!味が気に入れば、全く問題ありません(/・ω・)/。

まあ、ここら辺の「膨らむ/膨らまない」に関しては次回の其之二でお話したいと思います。

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というところの焙煎補講、其之一でしたー

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ボリュームじゃない!!!

恋愛はお互いの温度差が大事なんだよ( *´艸`)!!!!!!!!!!!

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私はいつでも高熱源体。

ちゅどん