という事でやってまいりました、スペシャルティ近代史の後編(●´ω`●)。

後編は“顧客教育と市場開拓、そしてワイン的なコンテクスト”から始めます!!

(タイトル画像は前後編ともにミラノのStarbucks Reserve Roasteryの写真だお♡)

【後編の目次】

  • 顧客教育と市場開拓、そしてワイン的なコンテクスト
  • 生産地への関わり方とサステナビリティ
  • 浅煎りとハンドドリップ回帰
  • まとめ

顧客教育と市場開拓、そしてワイン的なコンテクスト

素晴らしい品質のコーヒーが調達出来たら、次は市場への訴求=マーケティング/プロモーションです。スペシャルティコーヒーの重要な側面として、マイクロトレーサビリティや品質等がありますが、これ以外に顧客教育/市場開拓、そしてワイン的なコンテクストが加わってきます。

ファナティックは2012年にSCAJのツアー企画でIntelligentsiaやCounter Culture、Stump Townなどを訪問したのですが、当時の各ロースターの関心毎は“Transparency:価格透明性”ともう一つは”Customer Education:顧客教育”でした。3社ともトレーニングセンターを店舗と別に設けてあり、卸客や小売客向けにコーヒーのカッピングや産地の情報、エスプレッソの抽出方法等のトレーニングを行っていました。

こうした顧客教育/市場開拓、ワイン的なコンテクストの3本柱の取り組みは、やはりパイオニアであったPeet’s Coffee and TeaやStarbucksが最初でした。

At first only Europeans or sophisticated Americans visited his little shop. But gradually, one by one, Alfred Peet began educating a few discerning Americans about the fine distinctions in coffee. He sold whole-bean coffee and taught his customers how to grind and brew it at home. He treated coffee like wine, appraising it in terms of origins and estates and years and harvests. He created his own blends, the mark of a true connoisseur. Just as each of the Napa Valley winemakers believes his technique is best, Peet remained a firm proponent of the dark-roasted flavor—which in wine terms is like a big burgundy, with a strong, full body that fills your mouth.

“最初はヨーロッパ人や洗練されたアメリカ人だけが彼の小さな店(Peet’s Coffee)を訪れた。しかし次第にAlfred Peetは舌の肥えた少数のアメリカ人に対して一人ずつコーヒーの細かい違いを教育することを始めた。彼はホールビーンコーヒーを販売し、顧客に家庭での豆の挽き方や淹れ方を教えた。コーヒーをワインの様に扱い生産地や栽培区画、そして収穫年度といった観点から評価した。独自のブレンドを作成し、それは真の愛好家のマーク(シンボル)となった。ナパバレーのワイン醸造家が自身の技術が最高だと信じるように、Peetは確固たる深煎りフレーバーの信奉者であり続けた。ワイン的な観点で見ればそれは強いフルボディーで口の中を満たす偉大なバーガンディ(ブルゴーニュ)の様であった。”

Schultz, Howard. Pour Your Heart Into It: How Starbucks Built a Company One Cup at a Time (p.30). Hachette Books. Kindle.

ん?カリフォルニアのNapa Valleyだと品種はカベルネとかメルローとかが多いから、深煎りコーヒーの引き合いに出すんだったらブルゴーニュじゃなくてボルドー(英語名=Claret:クラレット)じゃないかしら(´・ω・`)・・・。ブルゴーニュのピノノワールはそんなに強いボディにならんしねぇ・・・・・。なんか変だな(笑)

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ま、そこは置いとくか・・・・・・

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ちょっと私の体験談を交えてお届けしていきますねー!!

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よく“顧客の需要に応える”とか“お客さんが求める物”を出すのが良いように言われることがありますが、スペシャルティにおいてこれは全く当てはまりませんです。

自分がスペシャルティコーヒーの生豆営業を行っていたからよくわかるのですが、私の入社当時、巷のコーヒーシーンでスペシャルティコーヒー、特にその浅煎りの需要は全然なかったです(2018年でやっと国内流通量の12%位に達したがマイクロロットはまだかなり少数)。もちろん規模もそれなりにあって全国に有名なお店はあるのですが、今ほどスペシャルティに取り組んでいるお店は東京でも少なくて(比較的大きかったのは堀〇さん位だったかな)、当時はどちらかと言うと首都圏以外の道府県で盛り上がっていました。都内にもスペシャルティの自家焙煎もあるにはあったのですが、先物取引ができるほどの使用量になっていないところが多くありました。なので、正直新規開拓が難しい状態でした。

当時ワタル社内でのカッピングは現在より深い焙煎度合いで行っていました。スペシャルティはコモディティよりもやや深く煎らないとカッピングでキャラクターが分からないという風に考えられていたからです(コモディティのカッピングは基本浅い)。それでも焼豆サンプルをロースターに持っていくと「浅すぎる」と言われました。

老舗ロースターのスペシャルティへ理解は、“苦みが弱くてコーヒーらしくない”といったような感じで、消費者においては“酸っぱいコーヒー”(現在より当時の焙煎は深めであるにも関わらず・・・)印象でしかなかったです。

一般的なコーヒー業界では”クリーンカップ”と言う概念がなく、今でいう熟度の低さ、苦さを含めて“コーヒーの味”だったので(逆に”過熟”と言う欠点がある)、酸味があってクリーンで苦味が少ないスペシャルティコーヒーを持ってこられても困る訳ですね。強いていうなれば”きれいさ”は”マイルドや柔らかい”と言う言葉に置き換えられていましたが、ロースター(焙煎業者)もカフェも今までと全く違うカテゴリーのコーヒー持ってこられてもお客さんにその良さが説明できないし、価格も高い上に普段扱っているコーヒーと違いすぎるので、老舗焙煎業者の多くは”スペシャルティ”という言葉にアレルギーを感じて敬遠していました。

水洗式できれいな味のロットは「味がない」と言われましたね(笑)。また、今でいう発酵系のナチュラルなんか持ってったら不良品を紹介しているようなものです。確実にクレームになります。はい(・ω・)ノ。

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ここまで書くとわかると思いますが、そもそも日本にスペシャルティコーヒーの需要なんか元からなかったんです。その荒野を地道に開拓してお客様に伝えていったのは、日本のスペシャルティコーヒーの自家焙煎やスペシャルティコーヒーの直輸入にシフトした生豆問屋/輸入者達だったのです。

自家焙煎の方では*From Seed to Cupの概念やクリーンカップの意味を顧客に一生懸命説明し、新しいカテゴリーのコーヒーであることの啓蒙活動を行いながら営業していました。生豆輸入者は焙煎業者に対してクリーンカップが如何に品質において重要で、酸味は良い酸味(明るい、フルーツ様)と悪い酸味(未熟果実、酸敗)があることをカッピングセミナー等で繰り返し伝えていったのです。特にスペシャルティ業界全体で味の”強さ“と”質“を分けるという事に腐心していました。

*From Seed to Cup:種からカップまで。スペシャルティコーヒーの根幹をなすマイクロトレーサビリティを表す用語

こうした顧客教育の取り組みはアメリカや日本だけに関わらず、スペシャルティコーヒーが伝播してく国々で行われていきました。なので、スペシャルティコーヒーには顧客教育/啓蒙という側面が必ず付帯します。

昔はSCAJで試飲のコーヒーを出していると、来場者から「浅すぎる」とよくコメントをいただきました。私は意地っ張りだったので、エスプレッソ試飲もカッピング焙煎の物で提供していました。当時はもう酸っぱすぎてヤバイ位の感じでしたが(ぎゃあ)、ここ数年は浅煎りのエスプレッソでもそこまで文句は言われなくなってきましたね(あはははははー)。

ちなみにここら辺の話は2008年のことですが、すでにここまで来るのにかなり時間かかっているのを痛感するのと同時に、特にこの10年の進化のスピードには目を見張るものがありますね。

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ちょっと長くなりましたが、顧客教育/市場開拓の他に“ワイン”と言うキーワードもとても重要になってきます。

Peet’sのスピリットを継承したStarbucksの従業員への教育に目に向けると、スタッフ(スタバでは“パートナー”と呼ぶ)が各銘柄の味の特徴をお客様にきちんと伝えるという点が特徴として挙げられます。こういったコーヒーの知識に関わるプロフェッショナリズムも同社が醸成してきた文化ですが、あたかもワインの味わいを描写するかの様に行われるプレゼンテーションは、コモディティコーヒーが主体の当時としてはかなり斬新であったことが伺えます。

”我々はむしろ、コーヒーを飲むロマンスを顧客に教育することに着手した。私たちは上質なワインを提供するワインスチュワード(ソムリエ)の様に上質なコーヒーを紹介したかった。彼らがフランスの特定の地域で育まれたワインの特徴を語るように、我々のバリスタにケニアやコスタリカ、そしてスラウェシのフレーバーを知性的に伝えられる様になってもらいたかった。自社直営の小売店の中で、スターバックスはスタッフを通じて一人の顧客のブランドロイヤルティを一つずつ構築していったのだ。”

Schultz, Howard. Pour Your Heart Into It: How Starbucks Built a Company One Cup at a Time (p.246). Hachette Books. Kindle.

こうしたワイン的なコンテクストは、スペシャルティコーヒー業界の巨人であるGeorge Howell氏(ジョージ・ハウエル)によって設計されたCup of Excellenceのカッピングフォーム概要欄にも見ることができます。

Overview of Form(フォームの概要)

The Cup of Excellence® cupping form is loosely based on the scoring system described in Winetaster’s Secrets by the late Andrew Sharp and on the original SCAA Cupping form, no longer in use.

”Cup of Excellence®のカッピングフォームは、故Andrew Sharp著(アンドリュー・シャープ)の“Winetaster’s Secret”に記載されていたスコアリングシステムと、現在は使用されていないオリジナルのSCAAカッピングフォームに大まかに基づいている。”

2.3 – Acidity: this is what brightens a coffee. It gives life. In wine it is often referred to as nerve (nervosité in French), backbone or spine.

”2.3 – 酸味:これはコーヒーを明るくする物である。酸は活力を与える。ワインにおいては神経(フランス語ではnervosité:神経、緊張感)、背骨、あるいは脊椎と、しばしば表現される。”

2.3.1 – Quantity of acidity is not directly related to quality. The judge must score the quality of the acidity, not how much acidity is in a particular coffee. As with wine, not all coffees should be notably acidic. It is rather the expression of that acidity, whether powerful or very mild, that is important: is the acidity harsh or overly tart? Is the acidity refined or tangy or does it have a pleasant snap? These are the kinds of questions the judge should ask when scoring a particular coffee’s acidity.

”2.3.1 – 酸味の量的要素は品質に直接関係しない。ジャッジ(カッピング審査員)は特定のコーヒーにどれだけ酸味があるかではなく、酸味の品質を採点しなければならない。ワインと同様に全てのコーヒーが酸味的である必要はない。それはむしろ酸味の表現であって、パワフルなのかあるいはとてもマイルドなのかという事ではなく、酸味がきつく過度にすっぱいのか?酸味が洗練されているのか?ピリッとしているのか?あるいは心地よいスナップが効いているのか?といった点が重要になる。これらは特定のコーヒーの酸味を審査するにあたってジャッジが問うべき設問の類なのである。”

Howell, George. “Brazil Cup of Excellence 2002” Alliance for Coffee Excellence: https://library.sweetmarias.com/wp-content/uploads/2020/09/COE_Cupping_Form-Vintage-old-version.pdf

ワイン的な視点がコーヒーの評価に用いられていることが分かりますね。このような味覚や評価アプローチは現在のスペシャルティ業界におけるスタンダードになっていきました。さらに生産処理に至ってはCarbonic Maceration(Sestic)やYeast/Lactic Fermentation等に代表されるように、ワインのコンサルタントを招聘してコーヒーのプロセスを開発するなど、ワイン業界とスペシャルティコーヒー業界はより密接になったと言えるでしょう。堀〇さんもワイン大好きだしね。

Sestic, Sasa. “HOW DOES FERMENTATION AFFECT COFFEE FLAVOUR DEVELOPMENT (2022)” Article by Perfect Daily Grind: http://sasasestic.com.au/fermentation-affect-coffee-flavour-development/

生産地への関わり方とサステナビリティ

このように多様性あふれるコーヒーの味覚世界の存続には、その原料の生産維持と供給調達が必要になりますが、今で言うところのSustainability(サステナビリティ:持続可能な)的な取り組みもStarbucksの大きな特徴の一つです。

生産地へのサポート体制は裏返すとそのまま供給の安定化につながります。スターバックスのタイムラインを除いてみると、多くのFarmer Supportセンターがあることが分かります。

 Starbucks Timeline

2004 Opens first Farmer Support Center in San José, Costa Rica

2009 Opens Farmer Support Center in Kigali, Rwanda

2011 Opens Farmer Support Center in Mbeya, Tanzania

2012 Opens Farmer Support Centers in Manizales, Colombia and Yunnan, China

2014 Opens Farmer Support Center in Addis Ababa, Ethiopia

2015 Opens Farmer Support Center in North Sumatra, Indonesia

2016 Opens Farmer Support Center in Chiapas, Mexico

2021 Opens Farmer Support Center in Varginha, Brazil

Starbucks “Timeline” STARBUCKS STORIES & NEWS2022 https://stories.starbucks.com/uploads/2022/05/AboutUs-Company-Timeline-5.5.22.pdf

コーヒー業界において生産地や買い付けにおける、今で言う“Ethical”(倫理的)な取り組みを行ったのも同社が先駆けでしょう(ほんとに倫理的なのかどうかの議論はとりあえず置いといて・・・(・ω・))。その枠組みはC.A.F.E. Practice(カフェ・プラクティス)と呼ばれています。

”人々の魂を鼓舞し育むというスターバックスのミッションは、我々の顧客やパートナー達、そしてカフェをはるかに超えて広がっている。我々は生豆からカップに至るまで(From Bean to Cup)ビジネス責任を全うし、我々が行う場のビジネスのコミュニュティーをサポートすることに誇りをもっている。30か国以上400,000以上の生産者から持たされる、全世界コーヒー流通量の3%を購入する会社として、スターバックスは我々の未来が生産者とその家族の未来に密接に結びついていることを理解している。”

”コーヒーの購入における我々の倫理的な原料調達アプローチの礎がCoffee and Farmer Equity (C.A.F.E.) Practicesであり、これは2004年に始まったコーヒー業界初の倫理的原料調達基準の一つであった。Conservation International(コンサベーション・インターナショナル)と共に開発されたこのC.A.F.E. Practices はコーヒー生産者と労働者、そして彼らの家族やコミュニティの福祉を守りながら、生産者の経済的/社会的/環境的要綱の全てに対して、透明性/利益性/持続可能なコーヒー栽培の実践を向上するために設計された。C.A.F.E. Practicesはスターバックスの長期に渡る高品質コーヒーの供給を助け、コーヒー生産者やコミュニティの生活と生計に肯定的なインパクトを与えた。オープンソースのプログラムは財務報告から労働者の権利保護、水資源と生物多様性の保全に渡る200以上の指標から構成されている。このプログラムは、第三者による認証プロセスを含み、監査の品質と整合性を確保する責任を担うSCS Global Servicesによって監督される。”

Starbucks “C.A.F.E. Practices: Starbucks Approach to Ethically Sourcing Coffee” STARBUCKS STORIES & NEWS, 28 Feb 2020 https://stories.starbucks.com/press/2020/cafe-practices-starbucks-approach-to-ethically-sourcing-coffee/

現在のサード・ウェイブ系に近い比較的新しい世代のスペシャルティロースターはStarbucksのことを否定的にとらえ、自身が扱うコーヒーの品質の高さやダイレクトトレードなどの取り組みを誇示する向きが多いですが、彼らの多くがStarbucks切り拓いてきた実績をあまり知らないという皮肉があります。

今まで解説してきたようにStarbucks、そしてその精神的支柱になったPeet’sこそがあらゆる意味でスペシャルティコーヒーの文化の礎を築いた、まさにパイオニアなのです。

浅煎りとハンドドリップの回帰

ここまでスペシャルティ、産地、深煎り、顧客教育等色々と解説をしていきましたが、スペシャルティコーヒーにおける抽出についての変遷も重要なポイントですね。日本やアメリカ含め、スペシャルティコーヒーにおける初期の理想的な抽出方法はフレンチ・プレスでした。

日本などではそのお国柄か、様々な抽出方法が考案され、その様式美や抽出品質技術が向上していったのですが、スペシャルティのムーブメントはそれに対するカウンターカルチャー的な、あるいはアンチテーゼとして働きました。

その中でハンドドリップの抽出技術そのものを真っ向から否定する自家焙煎の方々もいました。その根底にある考え方は「いくら抽出技術を磨いても、結局原料が良くなければ意味がない」というものでした。この主張には、あまりにもニッチになりすぎて根拠の不明瞭な難しい淹れ方や理論が業界に溢れてしまったため、コーヒーが気難しくとっつきづらいものになってしまったという側面も含まれています。

私が担当したスペシャルティロースターのお客様の中には「頑固そうなマスターが難しくて複雑な抽出方法を説明してたら、お客さんはそんなのめんどくさくなって離れて言っちゃうよ」と皮肉交じりに語る方もいましたね(笑)。

またスペシャルティコーヒーはクリーンカップが前提なので、コーヒーオイルなどを余すところなく全て抽出できるフレンチ・プレスこそが最もシンプルで究極の抽出方法であるととらえられていました。なので、当時は自分を含めてスペシャルティ=フレンチ・プレスでした。カッピングに近い抽出でもあるので、バイヤーや焙煎士の品質評価の延長としてこの抽出方法がされた選好されたのかもしれませんね。

なおPour Your Heat Into Itにもフレンチ・プレスが登場してきます。

“Here are some new beans that just came in from Java,” he said. “We just roasted up a batch. Let’s try it.” He brewed the coffee himself, using a glass pot he called a French press. As he gently pressed the plunger down over the grounds and carefully poured the first cup, I noticed someone standing at the door, a slender, bearded man with a shock of dark hair falling over his forehead and intense brown eyes. Jerry introduced him as Gordon Bowker, his partner at Starbucks, and asked him to join us.”

”「さあこれがJava(インドネシア、ジャワ島)からきた新豆達だ。ちょうど一バッチ焼きあがったところだから早速試してみよう」Jerryはそう言って、彼がフレンチ・プレスと呼ぶガラスポットでコーヒーを淹れ始めた。プランジャーを優しく粉の上まで押し下げ注意深く最初のカップに注いでいる間、私はドアの傍にいる人に気づいた。その人はダークブランの髪色が額と茶色の瞳にかかる顎髭を蓄えたスレンダーな人だった。JerryはスターバックスのパートナーであるGordon Bowker(ゴードン・ボウカー)を私に紹介し、参加するように促した。”

Schultz, Howard. Pour Your Heart Into It: How Starbucks Built a Company One Cup at a Time (p.28). Hachette Books. Kindle.

私がStarbucksで働いていた頃も、テイスティングはもっぱらフレンチ・プレスでした。

いやー・・・、今考えると深煎りのコーヒーをプレスで複数種類飲むのは結構しんどかったですね(笑)。よく気持ち悪くなっていました(/o\)。

ワタルに入ってから、初めて浅煎りのフレンチ・プレスを飲むようになりましたが、ずっとスタバの深煎りに慣れていたので当時は目から鱗のような感じでしたねー。美味しかったです(うま)。ケニアのDorman社で飲んだフレンチ・プレスもおいしかったなぁ・・・。当時のセミナーなどでのテイスティングでもフレンチ・プレスは大活躍でしたね

Starbucksの店舗オペレーションでは基本的にBUNNのブリューワーを使用しており、通常販売のコーヒーはバッチブリューの機械抽出でした。フレンチ・プレスは個別オーダーに対応していましたが、裏メニュー的な扱いに近かったですね。こうしてみるとコーヒーの品質にはこだわるものの、やはり抽出方法に関してのこだわりや考察などはかなり希薄であったように感じられますねー。

まあ、Starbucksの躍進はカフェラテとフラペチーノなどの、どちらかと言うと牛乳系ソフトドリンクで大きくなったので、あんまりコーヒー一本でビジネスが盛り上がったという感じではないですけどね(笑)。

サード・ウェイブ系(って言ったら嫌がるだろうけどとりあえず・・・)の代表格である御三家、Intelligentsia、Counter Culture, Stump Townでもエスプレッソ系以外のコーヒーは、初期の方はバッチブリューとフレンチ・プレスの組み合わせだったと思います。2010年にStump Townに訪問した時、提供テーブルに置いてあった”Zojirushi=象印”のポットにはフレンチ・プレスで抽出したコーヒーが入っていました。お金を払うとマグカップを渡されるので、自分で象印からコーヒーを注ぐ大胆なセルフスタイルでしたねー(*‘∀‘)。

しかし、これ以降、業界的に徐々に抽出方法などに動きが出てきて、突然ハンドドリップのムーブメントが加速しました。

2011年にニューヨークに行った時のStump Townではハンドドリップ抽出(Chemex:ケメックス)がメニュー表にあり、*サイフォン(Yama:ヤマ)なども記載されていました。当時はフレンチ・プレス以外の抽出方法の模索が始まった時期でした。

*サイフォンは、欧米ではVacuum Pot(バキューム・ポット)と呼びます

2012年のSCAJツアーで北米のロースター各社を訪問した際は、IntelligentsiaはV60の陶器、Stump TownではChemexが使用されていました。レールで連結され複数のドリップを同時に行える”Drip Stand(ドリップスタンド)”なるものを見たのはIntelligentsiaが初めてでした。うずたかく積まれたV60の陶器ドリッパー(赤)とマグカップは圧巻でしたね。

こうした抽出方法の回帰現象と多様化は抽出機器や器具にも多くの影響を与え、Aeropress、Steam Punk、Trifecta、Cloverなどの正圧/負圧を用いたサイフォン/エスプレッソ的な物から、Moccamaster、Wilfer、Smart 7、Pour Steadyといった自動ドリップ機等に至るまで他種多様な機器が生まれていきました。

なお細かいトレーサビリティあるマイクロロットコーヒーを扱い、生産処理やカッピングプロファイルなどのより専門的な知識、そしてプロフェッショナルリズムを高めたサービスと抽出を行うコーヒームーブメントをThird Wave(サード・ウェイブ)と言うようになりました。

ちなみにそのいわれはTrish Rothgeb(トリッシュ・ロスギブ)という女性です。

“Third Wave Coffeeという用語は、レッキングボールコーヒーロースターズに所属していたトリッシュ・ロスギブ(彼女がこの用語を有名にしたときはトリッシュ・スキーだった)に起因している。遡ること2002年、ロスギブはロースターズ・ギルドのニュースレター、「The Flamekeeper」の記事の中でコーヒーのThird Waveについて述べていた。”

“興味深いことに、ロスギブはThird Waveを明確に定義しておらず、おそらくプロのコーヒーロースターやバリスタの聴衆のためにあえてそうする必要はないと考えためと思われる。しかし、彼女はThird Waveのバリスタについて次のように描写している。”

“彼らは数か月を掛けて完璧さを追求し余計な物をそぎ落として、彼ら自身を代表するコーヒー飲料(Signature Drink)を絶妙かつ宝石のようなエスプレッソの調合に仕上げる。いずれの場合も、ホイップクリームやフレーバーシロップを排したコーヒーそのものを楽しむひと時がより深い意味を持つようになった。こうしたバリスタはいつ豆が焙煎されたか、コーヒーがどのような生産処理を経たのか、ブレンドにはどのような調合の意図があるのかの他に、カッピングを通じて得られた各風味特性を描写することができるのだ”

“THE TIHRD WAVE COFFEE” BLACKOUT COFFEE CO, 25 May 2022 https://www.blackoutcoffee.com/blogs/the-reading-room/the-three-waves-of-coffee

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明確な定義はないのですが、バリスタの描写から分かるように、抽出やコーヒーへのより深い知識を有し、コーヒーその物へより深く入っていく流れはPeet’sやStarbucksに端を発するSecond Waveが土台になっている訳ですねー。

まとめ

という事で、スペシャルティ事始め等の近代史を除いてみましたが、この様にStarbucksのおかげで今の我々があるという事がよくわかりますね!今回はPeet’s CoffeeとStarbucksの足跡を今一度皆さんに知ってもらいたいななぁという思いで一通り書いてみましたー。

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ありがとう!!Starbucks!!

(∩´∀`)∩♡STB♡

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そして今回も鬼の様に文章が長くなってしまってごめんなさい(/o\)グフ

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ん!?コーヒーの中から歌声が聞こえる・・・・

こ、これはもしかして・・・・。

心地よい眠りにいざなう伝説のセイレーンでは・・・・。

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君の歌声の前では、カフェイン効果全く無しだよう!!!!!!!

うほう♡

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(そういえば初代のスタバのロゴのサイレン(Siren)ってアマビエに似てるね!?)

【参考文献】

“Coffee roasting” Wekipedia Wikimedia Foundation, 11 March 2022, at 07:06 (UTC) https://en.wikipedia.org/wiki/Coffee_roasting

Davids, Kenneth “COFFEE GLOSSARY: C” Coffee Review. 10 May 2022 https://www.coffeereview.com/coffee-glossary/c/

Patrick “Coffee Roasts Names (Their Meaning And Flavor Profiles)” Kahawa Planet, 10 May 2022 https://kahawaplanet.com/coffee-roasts-names/

Peets Coffee “Timeline” 10 May 2022. https://www.peets.com/pages/timeline

“Plant of The Mouth: Robusta Coffee” JSTOR DAILY, 25 May 2022 https://daily.jstor.org/plant-of-the-month-robusta-coffee/

readmorebetter “Why is it called city roast?” reddit(2019) https://www.reddit.com/r/roasting/comments/c67njm/why_is_it_called_city_roast/

Rhinehart, Ric “What is Specialty Coffee?” Resources Specialty Coffee Association of America, 10 May 2022 http://scaa.org/?page=RicArtp1

Roast Magazine “Saying Coffee” Book of Roast (2017) Portland, Oregon, USA: JC Publishing, Inc.

Shultz, Howard and Yang, Jones, Dori “Pour your heart into it (2012)” New York, New York, USA: Hachette Books. eBook Edition

Starbucks “Timeline” STARBUCKS STORIES & NEWS2022 https://stories.starbucks.com/uploads/2022/05/AboutUs-Company-Timeline-5.5.22.pdf

Taobot, M, John “The Struggle for Control of a Commodity Chain: Instant Coffee from Latin America” Latin American Research Review, Vol. 32, No. 2 (1997), pp. 117-135

“THE TIHRD WAVE COFFEE” BLACKOUT COFFEE CO, 25 May 2022https://www.blackoutcoffee.com/blogs/the-reading-room/the-three-waves-of-coffee

Thurston, W, Robert. Morris, Jonathan. Steiman Shawn “Coffee: A Comprehensive Guide to the Bean, the Beverage, and the Industry (2013)” Rowman & Littlefield Publishers p255

“90 Years Ago, Seeking Salvation, Brazil Burned Billions of Pounds of Coffee” Daily Coffee News, 22 Sep 2021 https://dailycoffeenews.com/2021/09/22/90-years-ago-seeking-salvation-brazil-burned-billions-of-pounds-of-coffee/