こんにちは!!Coffee Fanatic三神です!!
今日はちょっとコーヒー業界の若い人(?)に誤解されているスターバックスについて書いていきたいと思います!
スターバックスも店舗数がかなり増えたので、コモディティなイメージが強くなり、あんまりスペシャルティを想起させるキーワードではなくなってしまいました。社名も昔はStarbucks Coffee”でしたが、現在の社名は“Coffee”の単語がなくなり、ただのStarbucks(笑)になってしまいました(正しくはStarbucks Corporation)。個人的にもCoffeeへのこだわりは少なくなってしまったのかな?とも感じられます。
しかし実際はスペシャルティコーヒーの躍進に大きく貢献した世界的大企業であり、現在我々が購入しているマイクロロットコーヒーの発展や、生産地との取引、マイクロトレーサビリティ等・・・、今では一般的になってきたコンセプトの礎を築いた大変重要な会社です。
今回はちょっとリサーチペーパー的に色んな文献を引っ張ってきて軽くCitationしてみました(全部じゃないからね♡)。そのうちかっちりしたリサーチをやる可能性もないこともないので、ちょっと練習しました。
いやーそれにしてもリサーチペーパー的なのは久しぶりですねー。ParaphraseやQuotationとか、ナツカシイですね・・・・。もうずいぶん前のことなので、正確なCitationのお作法があいまいになってしまい、APA式だかMLA式とかがごっちゃになってますが、まあ、そこはご容赦ください・・・・。
今回調べ始めたらむちゃくちゃ文面が長くなってしまったので、前後編でお届けしたいと思いますー。
それではいってみよー(/・ω・)/
【目次】
前編
- Erna KnutsenのSpecialty Coffee提唱と高品質コーヒーの始祖Peet’s
- Peet’sの継承者Starbucks
- Peet’sとStarbucksによるアメリカ全土の深煎り転換
- American RoastとCity Roast
- Starbucksの生産地投資
後編(次回掲載)
- 顧客教育と市場開拓、そしてワイン的なコンテクスト
- 生産地への関わり方とサステナビリティ
- 浅煎りとハンドドリップ回帰
Erna KnutsenのSpecialty Coffee提唱と高品質コーヒーの始祖Peet’s
それではまずスペシャルティコーヒーの事始めから行きたいと思います。ファナティックブログの最初の記事で解説しましたね。このスペシャルティの言葉問題、実は誰がどのように描写したかほとんど知られていません(あべし)。英語の文献でもきちんと明記されているソースは少ないのですが、以前参考にした、ちょっと古めのSCAAのリソースにRic Rhinehartさんが寄稿した記事がありますのでそれを再度ご紹介したいと思います。ファナティックはRicさんに2013年のBest of Panamaでお会いしましたね。その時はヘッドジャッジされてました(そういえばビールを飲みながらカッピング・ディスカッションしましたねぇ・・・)。
”In a 1998 article for the Specialty Coffee Chronicle Don Holly wrote the following as he grappled with the question of defining specialty coffee: “My understanding of the origin of the term ‘specialty coffee’ is that it was first coined by Erna Knutsen, of Knutsen Coffee Ltd., in a speech to the delegates of an international coffee conference in Montreuil, France, in 1978. In essence, the concept was quite simple: special geographic microclimates produce beans with unique flavor profiles, which she referred to as ‘specialty coffees.’ Underlying this idea of coffee appellations was the fundamental premise that specialty coffee beans would always be well prepared, freshly roasted, and properly brewed. This was the craft of the specialty coffee industry that had been slowly evolving during the twenty-year period preceding her speech. The Specialty Coffee Association of America (SCAA) continues to define specialty in this context. (Rhinehart 2022) “
”1998年のSpecialty Coffee Chronicleの記事の中でDon Holly(ドン・ホリー)はスペシャルティコーヒーの定義の問題に取り組んだ時に、次のように述べていた。「私が理解するところの“スペシャルティコーヒー”という言葉の起源は、1978年のフランス、モントルイユの国際コーヒー会議の代表団に向けたスピーチの中でKnutsen Coffee LtdのErna Knutsenによって最初に提唱されたものだ。本質的にそのコンセプトは全くシンプルであり、“特殊な微小気候が育む特徴的な風味を持ったコーヒー豆”を彼女は“スペシャルティコーヒー”と言及していた。コーヒーを規定するこのアイディアの根底には、スペシャルティコーヒーの丁寧な取り扱い、新鮮な状態での焙煎、そして適切な抽出を行うといった基礎的な前提があった。彼女のスピーチに先立つ20年間でゆっくりと進化してきたこのコンセプトはスペシャルティコーヒー業界におけるまさに宝(工芸)だった。SCAA(Specialty Coffee Association of America)は現在もこのコンテクストに基づいてスペシャルティコーヒーを定義し続けているのだ。」(Rhinehart 2022)”
Rhinehart, Ric “What is Specialty Coffee?” Resources Specialty Coffee Association of America, 10 May 2022 http://scaa.org/?page=RicArtp1
このように明確に“スペシャルティコーヒーと言う概念”を生み出したのはクヌッテン女史だった訳ですが、実はそれ以前から良質のコーヒーを調達しようという動きがありました。一番明確にその経緯が見えるのが、サンフランシスコ発のPeet’s Coffee & Teaです。他にもこういったコーヒーロースターはあったかもしれませんが、記録がたどれる物がないので、実質Peet‘sが始祖と言えるでしょう。
”1930年。Alfred Peetはオランダのアルクマールにあるコーヒーと紅茶を扱う彼の父親の会社、B. Koorn & Companyで、焙煎機とコーヒーグラインダーのメンテナンスの仕事をしながらコーヒートレーディングを学ぶ。大学を辞めた後、コーヒーと紅茶の輸入に専念するためにロンドンに移る。自らの手で物を作り続け、機械をいじり続ける。”
”1950年。インドネシアで茶業に従事。この基軸となる経験は最終的に、まだ深煎りと言うものを知らないコーヒー消費者に深煎りのインドネシアコーヒー豆を提供するという着想を彼にもたらす。一時的にニュージーランドに居住。同地に飽きアメリカへ出向。カリフォルニアに到着。コーヒー輸入業に従事する。すぐに世界で最も裕福な国が最もひどいコーヒーを飲んでいることを知る。”
”1966年。コーヒー輸入業を辞し、カリフォルニア大学(University of California)キャンパス近郊の労働者階級地区、ヴァイン・アンド・ウオールナットのバークレーで自分の店を始める。より深く、より甘い焙煎を行うために、高品質の生豆のみを使用し焙煎システムを手動で調整する事を誓う。誇らしげに母親にコーヒーを送るものの、彼女は“焙煎が深すぎる”と控えめに示唆する。“ありがたいことに”彼はそれを無視する。”
Peets Coffee, “Time Line” 10, May, 2022. https://www.peets.com/pages/timeline
上記はPeet’sのウェブサイトで記事されているタイムラインですが、ここではAlfred Peetが如何にコーヒーの品質と深煎りにこだわったかが分かります。1800年代以降、コーヒーの世界的流通量が拡大し、アメリカではFoglers(フォルジャーズ)やMaxwell House(マックスウェル・ハウス)などの缶詰粉コーヒーが主流になりました。これによりそれまで高級嗜好品であったコーヒーの価格は低下し、コモディティ化していきます。この著しい消費拡大時期を一般にFirst Wave(ファースト・ウェイブ)と言います。
また、Starbucksの第二の生みの親ともいえるハワード・シュルツが書いた”Pour Your Hear Into It(邦題:スターバックス成功物語)”にはPeet’sの創業者であるアルフレッド・ピートについての言及があります。
”Peetが1955年にアメリカに移った時、彼はショックを受けた。ここは世界で最も裕福な国で西洋世界のまぎれもないリーダーだったが、そのコーヒーは恐るべきものだった。ほとんどのアメリカ人が飲むコーヒーはロブスタで、それはロンドンやアムステルダムでは安価なコモディティとして扱われる低級品のコーヒーだった。上質なアラビカコーヒーが北アメリカにもたらされたことはほとんどなかった。その大半はヨーロッパに流通し、味覚上では別格の扱いを受けていた。1950年にサンフランシスコで創業したAlfred Peetはアメリカ向けのコーヒー輸入業を開始した。しかし当時はあまり需要がなく、知る人ぞ知る存在だった。やがて1966年に彼はバークレーのヴァインストリートに小さな店、Peet’s Coffee and Teaをオープンし1979年まで営んだ。彼は自身の焙煎機さえ輸入した。なぜならアメリカの会社は小バッチ(Small Butch)の上質なアラビカコーヒーの焙煎方法を知らないと彼が思ったからだ。”
Schultz, Howard. Pour Your Heart Into It: How Starbucks Built a Company One Cup at a Time (pp.29-30). Hachette Books. Kindle.
こうしてみると当時のアメリカのコーヒーの品質はかなり悪かったという事が分かりますが、ちょっと気になるのは、“ほとんどのアメリカ人が飲むコーヒーはロブスタ~”という部分と“上質なアラビカコーヒーが北アメリカにもたらされたことはほとんどなかった~”という点が気になります・・・・。
・・・・・・
ちょっと寄り道します・・・・(・ω・)
上記のハワード・シュルツの主張は簡単に言うと、アメリカ市場のメインプレーヤーはロブスタとの事ですが、ここは疑問のあるところです。Robustaの主要市場はヨーロッパであり、基幹取引所はロンドンですが、Arabicaの主要市場はアメリカであり、基幹取引所はニューヨークになります。世界的生産量の内訳でもArabicaは80%でRobustaは20%位になります。ロブスタコーヒーの生産における歴史的統計データが見当たらないので、いつ頃からブラジルでコニロン(ロブスタ)が栽培されていたのかがよくわかりませんが、やはり生産のメインはアラビカ種です。
ヨーロッパにはブラジル以外のアラビカ種が入っていたと思いますが、ロブスタの市場が大きかったのはアメリカではなくてヨーロッパですね。
そもそもロブスタコーヒーが品種として認知されたのは1897年で、発生地はタンザニア周辺です。そしてRobustaの先物市場がロンドンに開かれたのは1958年のことです。なので、割と最近の出来事ですね。ヨーロッパのイタリアなどではクレマや質感の増強から、ロブスタの配合率が南に下るにつれて多くなります(Lavazzaなど)。スイスNescafe Classicのコーヒーにもロブスタがブレンドされています。
1929年の世界恐慌によりブラジルでは1931年から1944年の間に渡って余剰国内在庫の焼却処分を行いました。コーヒーの取引価格が10分の1に低下してしまったためブラジル国内で大量に余ってしまったためです。もちろんブラジル政府は自国生産者を支援するために買い支えを行った上で焼却を行いました(日本の減反政策と似たようなもんかね・・・・)。その後の第二次世界大戦では経済的にヨーロッパが疲弊したために、全世界的にコーヒーの需要が低下。1960年にはアメリカのインスタントコーヒーシェアは20~25%にまで拡大しました。
ロブスタが配合されたインスタントコーヒーはカフェインが強く保存性に優れるため、軍用傾向品としても需要が高まり、ヨーロッパでは1940年にイギリスに紹介され、スイスやフランスなどでも需要が拡大しました。
強いボディと味(カフェイン含有量はアラビカ種の2倍)をもたらすことから、ロブスタ種の使用頻度がインスタントコーヒーで高くなりましたが、もちろんアラビカ種も使用されていました。ロブスタ種はやはり低価帯のコーヒーでの配合が多くなったので、それ以外では主にアラビカコーヒーがアメリカ国内で流通していたと考えられます。
1960年代に入ると、アフリカのロブスタの競合としてブラジルではアラビカ種のSolubleコーヒー(インスタントコーヒー)が開発されました。このコーヒーはアメリカのバイヤーの興味を引き、グローバルマーケットの中でアフリカ産のロブスタはニッチな市場となってきました。1981年にはアメリカのインスタントコーヒーのシェアは28%に達しました。
上記の通り、世界的経済不況やそれによるブラジルコーヒーの大量滅却により、高品質/高価格帯のコーヒーのシェアは壊滅的だったので、コーヒー全体の飲料としての品質は低下したのは事実だと考えられます。しかし“ほとんどのアメリカ人が飲むコーヒーはロブスタ~”という表現は不正確でしょうね。
【寄り道部分の参考文献】
Taobot, M, John “The Struggle for Control of a Commodity Chain: Instant Coffee from Latin America” Latin American Research Review, Vol. 32, No. 2 (1997), pp. 117-135
“90 Years Ago, Seeking Salvation, Brazil Burned Billions of Pounds of Coffee” Daily Coffee News, 22 Sep 2021 https://dailycoffeenews.com/2021/09/22/90-years-ago-seeking-salvation-brazil-burned-billions-of-pounds-of-coffee/
“Plant of The Mouth: Robusta Coffee” JSTOR DAILY, 25 May 2022https://daily.jstor.org/plant-of-the-month-robusta-coffee/
Thurston, W, Robert. Morris, Jonathan. Steiman Shawn “Coffee: A Comprehensive Guide to the Bean, the Beverage, and the Industry (2013)” Rowman & Littlefield Publishers p255
・・・・・・・
Peet’sの継承者Starbucks
ということでかなりの期間に渡ってコーヒーはどん底飲料だったのですが、Peet’sより始まった高品質コーヒーへの回帰は、かのコーヒー界の巨人であるStarbucksに継承されていきます。
StarbucksのルーツはサンフランシスコのPeet’s Coffee & Teaにあることは有名な話ですが、Peet’sのライムラインに戻るとこのような言及があります。
“Jerry Baldwin(創業者:ジェリー・ボールドウィン)、Gordon Bowker(創業者:ゴードン・ボウカー)、Zev Seigl(従業員:ゼブ・シーグル)の3人若い起業家たちはAlfred Peetの薫陶を受け1971年の4月にStarbucksを創業した(Peet’s 2022)。”
Peets Coffee, “Time Line” 10, May, 2022. https://www.peets.com/pages/timeline
原文ではStarbucksの創業者の名前は明記されておらず、“3人の若い起業家たち”と記載されています。彼ら3人は1971年にStarbucksをPike Place Market(パイク・プレイス・マーケット)に開業するのですが、当時のシアトルの状況はかなり悪かったようです。
”1971年はBoeing社に代表される不況の真っただ中で、美しかったキャピトルの町は寂れ、多くの人々がシアトルを離れていった時期でもあった。(Shultz and Yang p31)”
”Starbucksの開業初年度はPeetから焙煎豆を購入しており、一年後にオランダから焙煎機を輸入し、自家焙煎を開始した。(Shultz and Yang p33)”
Schultz, Howard. Pour Your Heart Into It: How Starbucks Built a Company One Cup at a Time (pp.31-33). Hachette Books. Kindle.
まあ、それでも何とか自家焙煎にこぎつけたようですね。オランダから輸入している辺り、かなりPeet’sを信奉していたことが分かります(・ω・)。
コーヒーの品質は悪いし・・・経済は良くない・・・。よくこんな状況から高品質コーヒーのトレンドが死なずに発展したのは本当にすごいことですね!!
このPeet’sとStarbucksによる、コーヒーに対する職人的/芸術的な付加価値を求め、コーヒーのオリジンや焙煎が重視された時期をSecond Wave(セカンド・ウェイブ)と言います。
Peet’sとStarbucksによるアメリカ全土の深煎りトレンド転換
今現在だとスペシャルティコーヒーはどちらかというとサード・ウェイブ系に代表されるマイクロロット(細かいトレーサビリティのある風味特徴が強い小ロットコーヒー)の浅煎りのイメージが強いかもしれませんね。
でも実は、これ以前はスペシャルティ=深煎りという概念だったの皆さんご存じでしたか(/・ω・)/???
このムーブメントを巻き起こしたのもPeet’sとStarbucksでした。
”Alfred PeetはDark Roastこそがコーヒーの全てのフレーバーを引き出せるという確固たる信念を持っていた。(Shultz and Yang p34)”
”開業当初からStarbucksはDark Roastに特にこだわり続けていた。JerryとGordonはAlfred Peetのロースティングスタイルに惹かれ、そして似たようなバージョンにたどり着いた、それは彼ら言うところのFull City Roastだった(現在は“Starbucks Roast”と呼ばれている)。Jerryはビールのボトル“*Guinness(ギネス)”を持ち上げてこう言った。「Full City Roastのコーヒーと普通のスーパーマーケット*缶詰のコーヒーを比べる事は、GuinnessビールとBudweiser(バドワイザー)を比べるのに似ている。ほとんどアメリカ人は*Budweiserのような軽いビールを飲む。しかし、一度Guinnessのような風味豊かな深煎りを愛飲することを学べば、もう二度とBudに戻ることはないだろう」(Schultz and Yang p35)。”
*缶コーヒーではなく、缶入りのコーヒー豆や粉のこと
*Guinness(ギネス):イギリスの大麦を焙煎した黒いスタウトタイプのビール
*Budweiser(バドワイザー):アメリカの代表的な明るいピルスナータイプのビール
Schultz, Howard. Pour Your Heart Into It: How Starbucks Built a Company One Cup at a Time (p.35). Hachette Books. Kindle.
以前Campfireのメルマガの方で、アメリカの消費トレンドは中煎り~深煎りが選好されていて、スペシャルティコーヒーの愛飲者の内、44%が深煎りを選好し、16%の人が浅煎りを選好しているとご紹介しましたが(National Coffee Association (NCA) https://www.ncausa.org/)。これは上記の通り一度焙煎のトレンドが深煎りの方に全米が一新されたため、現在でも一般的には深煎りのトレンドなんです(・ω・)ノ。しかし、実は1980年代辺りまでアメリカの焙煎度合いはかなり浅かったのでした。
Pour Your Heart Into Itでは当時の大手ロースターや販売者などが行っていた焙煎度合いに関しての記述があります(彼の解釈はネガティブです)。
”包装食品を販売していた会社は浅煎りを選好していた。なぜならその方が、歩留まりがよかったからだ。長く焙煎を行うと重量が減ってしまう。大規模焙煎業者は10%台もしくは0.5%の減損に神経をとがらせており、浅ければ浅いほどお金を節約することができたのだ。しかしStarbucksは歩留まりよりもフレーバーをより重視した。(Shultz and Yang p34)”
また、コーヒー界の古参であるKenneth Davids(ケネス・デイビス)は、オレゴン、ポートランドのRoast Magazine社が刊行している“The Book of Roast”の中で以下の様に述べています。
”1950年代のアメリカはいわゆる“American Roast”と呼ばれる焙煎度合であり、その当時は世界的にみてフランス北部が最も深く焙煎を行う慣習を持っていた。(Roast Magazine p34)”
”1990年代にDark Roastの神風が巻き起こった。この時までにStarubucksは全てのスペシャルティコーヒーがDark Roastであるように定義しており(一時的ではあったものの、結局はそうなった)、それ以外の小規模参入者はStarbucksよりさらに深い焙煎を行う事で、Starbucksとの差別化を図ろうとした。(Roast Magazine p35)”
・・・・・という事でアメリカの中でどんどん深煎り化が加速したわけですね!!!
めざすはBlue Metallic Roast!?(深煎りは程度が強くなると青くなる((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル)
・・・・・でもやりすぎると引火するから気を付けてね(笑)。
American RoastとCity Roast
と言うように、昔は浅煎り市場だったという事ですが、ハテ、それはどれくらい浅かったのか・・・・(・ω・)?
上記で“American Roast”(アメリカン・ロースト)という焙煎度合いが出てきましたが、果たしてそれがどの程度の焙煎度合いなのか?そしてそれがどのような位置づけだったのか・・・?
単語だけだとよくわかりませんが、皆さんもよく知る焙煎度合いであるCity Roastの定義と比較して考察するとその経緯と位置付けがよくわかるようになります。
まさか、City Roastにそんな意味があったなんて・・・・(´∀`*)ウフフ。
それでは複数のソースを上げてみます。
”American Roast(アメリカン・ロースト)”
”アメリカにおいてポピュラーな焙煎スタイルであることから名づけられた”
”City/ City Plus(シティー/ シティー・プラス)”
”中煎りを指し、“New York City” にちなんでこの名がつけられた。City RoastのプロファイルはHalf Light、Light Roast、City、City Plus、そしてFull City Roastらを含む(Patrick 2022)。”
Patrick “Coffee Roasts Names (Their Meaning And Flavor Profiles)” Kahawa Planet, 10 May 2022 https://kahawaplanet.com/coffee-roasts-names/
・・・・なんと!!City RoastはNew York Cityの“City”だったことが分かります(みんなこれ知ってた(*‘∀‘)?)。またKenneth DavidsのCoffee Reviewにはこんな記述があります。ここはちょっとカタカナで行きます。
”シティー・ロースト。又は浅めのフレンチ・ロースト、ビエネーゼ・ロースト、浅めのエスプレッソ・ロースト、フルシティー・ローストとも。この用語は伝統的なアメリカンの基準よりもやや深い焙煎だが、エスプレッソ、フレンチ、又はイタリアンと言った伝統的な深煎りよりも浅い焙煎度合を示している。カップクオリティーにおいてフルシティー・ロースト等の焙煎度合は伝統的な中煎りであるフルシティー・ローストより酸味は少なくなめらかな特徴を持つが、元来の素材が持つ固有のキャラクターを表すことはあまりない。アメリカの比較的新しいスペシャルティロースターの多くは、かつてフルシティー、ビエネーゼなどと呼ばれていた焙煎度合を典型的で“レギュラー”な焙煎度合と言及することがある。”
Davids, Kenneth “COFFEE GLOSSARY: C” Coffee Review. 10 May 2022 https://www.coffeereview.com/coffee-glossary/c/
さらに下記の文面ではさらにその詳細についての考察を見ることができます。
“City Roastという用語は初め、New York Cityで好まれていたコーヒースタイルを形容するものとして用いられるようになった。”
”しかし現在では上記の意味では用いられていない。”
”かつて昔のアメリカでは中煎りのコーヒーが、それまでは最もポピュラーな焙煎度合であった。(“American Roast”という単語になるほどだった)しかしNew York Cityでは、それよりやや深めの焙煎が好まれていた。よって、本来の“City Roast”は中煎り~深煎り間の焙煎度合を表していた(そして、現在我々が認知しているような浅煎り側の焙煎度合いを指していない)。”
”この点を推測するにアメリカ人の嗜好が深煎りに傾倒していったため、”City Roast”と言う用語が反対に浅煎り側の焙煎尺度に関連付けられるようになっていったのでないかと私は考えている(readmorebetter 2019)。”
readmorebetter “Why is it called city roast?” reddit(2019) https://www.reddit.com/r/roasting/comments/c67njm/why_is_it_called_city_roast/
・・・・・・
昔はCity Roastは中~深煎りとして認知されていましたが、現在は深煎りのトレンドが主体なので、逆に浅めの焙煎度合いとしてとらえられているという事ですね!!これは面白いですねー。
readmorebetterの文面は掲示板での投稿を抜粋したもので、明確なソース添付がありませんした。独自研究ではありますが一読の価値はあるかと思います。
またWikipediaの”Coffee Roast”の項目ではかなり簡潔にまとまった焙煎区分が参照できます。焙煎においてはブラジル産の生豆を用いて、下記の様にそれぞれの温度帯において焼き分けたそうです。一部を抜粋しました。
Light Roast
196℃ Cinnamon Roast(シナモン・ロースト)
一ハゼ開始直後のかなり浅い焙煎度合。甘さは未発達で、トーストした穀物や草のようなフレーバーとシャープな酸味が顕著。
205℃ New England Roast(ニューイングランド・ロースト)
適度な浅煎り(Light Brawn)だが、外観はややまだら。特定のスペシャルティロースターに選好されている焙煎度合で、元来のキャラクターと複雑な酸味が際立つ。
Medium Roast
210℃ American Roast(アメリカン・ロースト)
一ハゼを迎えた中浅煎り(Medium Light Brawn)。酸はやや減衰するが元来のキャラクターは保持されている
219℃ City Roast(シティー・ロースト)
多くのスペシャルティコーヒーで最も一般的な中煎り(Medium Brawn)。元来のキャラクターを味わうのに適しているが、焙煎由来の特徴(Roast Character)も感じられる。
Dark Roast
225℃ Full City Roast(フル・シティー・ロースト)
中深煎りで、表面がドライ、もしくはやや小さいオイルの飛沫やにじみを伴うことがあり、焙煎由来の特徴(Roast Character)が顕著。二ハゼ開始の時点でボディは最大限に発達する。
“Coffee roasting” Wekipedia Wikimedia Foundation ,11 March 2022, at 07:06 (UTC) https://en.wikipedia.org/wiki/Coffee_roasting
まあ焙煎機や温度計の位置、形状によって表示温度は変わるのですが、温度感覚としてはGiesen~Probatなんかの温度帯に近いものがありそうですね。
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蛇足ですが上記からも分かるように、コーヒーの飲み方でいう”アメリカン”は薄いコーヒーやお湯で薄めたコーヒーではなくて、浅煎り(American Roast)のさっぱりしたコーヒーを指していました。ただ現在はイタリア式のエスプレッソのお湯割りであるアメリカーノも有名になってしまったため、なおのこと昔飲まれていたの”アメリカン・コーヒー”がよくわからなくなってしまった状態と言えますね。
Starbucksの生産地投資
ここから生産地の方に目を向けていきます。
上記の様にスペシャルティ=深煎りのトレンドを作ったStarbucksですが、実はかなり生産地に足を運び、積極的な買い付けを行いました。通常コーヒーの買い付けは商社が行うので、ロースター自らが現地入りするというのは結構稀なケースであったと言えます。Nestleなどは自社農園やプランテーションがありましたが彼らは巨大企業ですし、当時はそれほど規模が大きくなかったStarbucksの高品質コーヒーを仕入れようとする、生産地に対する思い入れはかなり強かったように感じます。
例えばStarbucksが扱うブランド銘柄には以下の物がありました(現在のラインアップにない物もある)。
- Guatemala Antigua(グアテマラ・アンティグア)
- Colombia Narino Supremo(コロンビア・ナリーニョ・スプレモ)
- Brazil Ipanema Bourbon(ブラジル・イパネマ・ブルボン)
- Indonesia Sumatra(インドネシア・スマトラ)
- Arabian Mocha Sanani(アラビアン・モカ・サナニ)
- Ethiopia Sidamo(エチオピア・シダモ)
Whole Bean
https://www.starbucks.com/menu/at-home-coffee/whole-bean
それまでは生産国+グレード(例:Guatemala SHB)表記の多かったコーヒー業界ですが、さらにエリアが特定された地域名(AntiguaやNarinoなど)を冠していたことが当時としては珍しかったでしょうね。
グアテマラのAntigua地方やコロンビアのNarino地方は同社によって名が知れるようになった生産地区で、同社を代表するコーヒーの銘柄になりました。
このようにロースター自らが生産地に赴き、コーヒー生豆を仕入れるトレンドは、後のサード・ウェイブコーヒーロースターの代表格である、Intelligentsia、Counter Culture、Stamp Townなどに継承され、日本では堀〇珈琲やコーヒーの味〇塾(現J〇N)などが購買グループ(自家焙煎グループ)を形成して積極的に生産地に買い付けに入るようになりました。
しかしStarubucksは巨大になるにつれて、マイクロロットの細分化によるロットサイズの減少と多様化、価格の高騰などでそれまでの農園から買い付けができなくなっていきました。コスタリカで有名なマイクロミルであるHerbazuミルは以前、Starbucksに販売していました。Starbucksでは主にブレンド用にコスタリカを使用していたため、単独ミル名や農園名でコーヒーの銘柄が流通することはありませんでしたが、同社にとってコスタリカは重要な産地でした。いまではStarubucksとの*取引はないものの、実はアメリカ、テキサス州にあるヒューストンの空港のターミナル内の店舗にはHerbazuミルのオーナーであるバランテスさんの写真が大きく店内に掲示されています(現在もそのままかは不明ですぅ)。
*かつては輸出業者に納入する形で販売を行っていた。現在でもコスタリカはハイコマーシャルやベーシックスペシャルティグレードをStarbucks向けに販売していると思われる。
この他にもStarbucksはTarrazu県のDataエリアのコーヒーも買っていました。この様にStarbucksがある意味“育てた”農園や生産者のコーヒーを今のマイクロロースター(自家焙煎店)やスペシャルティバイヤー(ロースター、インポーター)が購入している形になります。いうなればこういったスペシャルティロースターやバイヤーはStarbucksの恩恵に浴しているのですね。
現在ではStarbucksの企業規模から考えるに、通常店舗の扱いのコーヒーはハイコマーシャル程度の品質であると思われます。安定した品質的でそれなりのボリュームのコーヒーを供給する必要があるため、少量高品質のコーヒー扱っても全店に行き渡らないのは明らかですね。
ですがその一方で、同社は近年Reserve(リザーブ)やRoastery(ロースタリー)といった別のコンセプトストア向けにマイクロロットを購入しているので、今のところハイコマーシャル~マイクロロットまでカバーしている状態です。ファナティックが2015年にRwandaのCup of Excellenceに参加した時にはStarbucksのスタッフが審査員として参加していました。世界中の自家焙煎業者の集まりでもあるこのCOEの場にStarbucksが参加したことは我々の中(COE常連の人たち)でかなりの話題になりましたね。
International Jury “Rwanda COE 2015”
「スターバックスが通った後には良いコーヒーが全く残らなかった。まさに青田買いだった」と昔堀〇さんが語っていました。それほどStarbusksのバイイングパワーと生産地にかける情熱には驚愕すべきものがあったのです(今もあるか・・・・)。
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む!!(・ω・)
だいぶ長くなりましたが、取り敢えずここまでで、前編終了としますー。
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ダ―クロースとの神風だと( ゚Д゚)・・・・!?
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バカめ!!!
ワシのは、“ちょっぴり恋目の甘酸っぱいロースト♡”じゃあ!!!!!!
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ぴゅーーーーーーーーーーーー♡
【参考文献】
“Coffee roasting” Wekipedia Wikimedia Foundation, 11 March 2022, at 07:06 (UTC) https://en.wikipedia.org/wiki/Coffee_roasting
Davids, Kenneth “COFFEE GLOSSARY: C” Coffee Review. 10 May 2022 https://www.coffeereview.com/coffee-glossary/c/
Patrick “Coffee Roasts Names (Their Meaning And Flavor Profiles)” Kahawa Planet, 10 May 2022 https://kahawaplanet.com/coffee-roasts-names/
Peets Coffee “Timeline” 10 May 2022. https://www.peets.com/pages/timeline
“Plant of The Mouth: Robusta Coffee” JSTOR DAILY, 25 May 2022 https://daily.jstor.org/plant-of-the-month-robusta-coffee/
readmorebetter “Why is it called city roast?” reddit(2019) https://www.reddit.com/r/roasting/comments/c67njm/why_is_it_called_city_roast/
Rhinehart, Ric “What is Specialty Coffee?” Resources Specialty Coffee Association of America, 10 May 2022 http://scaa.org/?page=RicArtp1
Roast Magazine “Saying Coffee” Book of Roast (2017) Portland, Oregon, USA: JC Publishing, Inc.
Shultz, Howard and Yang, Jones, Dori “Pour your heart into it (2012)” New York, New York, USA: Hachette Books. eBook Edition
Starbucks “Timeline” STARBUCKS STORIES & NEWS2022
https://stories.starbucks.com/uploads/2022/05/AboutUs-Company-Timeline-5.5.22.pdf
Taobot, M, John “The Struggle for Control of a Commodity Chain: Instant Coffee from Latin America” Latin American Research Review, Vol. 32, No. 2 (1997), pp. 117-135
“THE TIHRD WAVE COFFEE” BLACKOUT COFFEE CO, 25 May 2022
https://www.blackoutcoffee.com/blogs/the-reading-room/the-three-waves-of-coffee
Thurston, W, Robert. Morris, Jonathan. Steiman Shawn “Coffee: A Comprehensive Guide to the Bean, the Beverage, and the Industry (2013)” Rowman & Littlefield Publishers p255
“90 Years Ago, Seeking Salvation, Brazil Burned Billions of Pounds of Coffee” Daily Coffee News, 22 Sep 2021 https://dailycoffeenews.com/2021/09/22/90-years-ago-seeking-salvation-brazil-burned-billions-of-pounds-of-coffee/