こんにちはーDeadly Roaster三神です。
ちょっとJCJC(こーひーじぇりー)で息抜きしましたが、引き続き焙煎のトピックに行きたいと思います。
今回は主に火力操作や焙煎度合いの整理とカテゴリー分けになります。
まずはWCRCの焙煎欠点の定義をおさらいして、ファナティックが整理した用語(Terminology)をご紹介したいと思います。
WCRC定義の焙煎欠点
焙煎時に生じる欠点(生豆由来でない欠点)が下記の通り4種あります。World Coffee Roasting Championshipの2020年度のルールでは以下の様になってます。
- Underdevelopment
- Overdevelopment
- Baked(Baking)
- Scorch(Scorching)
・・・・ちょっとそれぞれ和訳しますね
【Under Development】
焙煎による酸、甘さ、フレーバーの不十分な発達に関連している。最初に攻撃的な酸とフレーバーが感じられ、後味は皆無。SCAフレーバーホールに明記されている、青い/野菜のような味が感じられることがある
【Overdevelopment】
過度の焙煎によるフレーバーの破壊に関連している。全ての酸とフレーバーが消失している状態。SCAフレーバーホイールに明記されている、焦げやロースト臭が感じられることがある。
【Baking】
Baking(=乾燥焼き)はカラメル化プロセスの失速に関連している。ポップコーンや硬いシリアル/オーツのようなフレーバーを伴う。SCAフレーバーホイールに明記されている、シリアルのような味が感じられることがある。
【Scorching】
焙煎中の過度の高い熱量を加えた場合に関連している。SCAフレーバーホイールに明記されている、灰や焼け焦げた味が感じられることがある。
・・・・・・
大分シンプルですね(^○^)。
・・・・でもちょっとわかりやすいようでわかりにくいような・・・。OverdevelopmentとScorchingの違いってなんでしょうね????Bakingの穀物臭はどちらかというとかなり焙煎の浅いUnderdevelopmentで感じられることが多いような気がします。
なんかちょっとあいまいで同じような定義がそれぞれに食い込んでいるようにも見えます。
・・・・・・
という事でファナティックは詳細に分類し、再定義することにしました。
ファナティック定義の焙煎状態の分類
ファナティックが分類し再定義したカテゴリーを紹介します。それが、
- 焙煎度合(Roast Degree)
- 焙煎傾向(Roast Trend)
- 焙煎欠点(Roast Defect)
の3つの焙煎カテゴリーです。これらのカテゴリーにのっとって焙煎プロファイルを設計することをRoast Design(ろーすとでざいん)と呼称することにしました。
焙煎度合(Roast Degree)
Under、Overと言いますが、どっからが浅煎りか深煎りかという明確な定義はないですよね。HighローストはCinnamonより深いですが、Cityより浅くなります。アグトロンでそれぞれの範囲の目安は決まっていますが、それでもある特定の境界から浅煎り、深煎りが決まる訳でもないです。
ここで正確に言えることは、ある焙煎度合いの違う2種類以上の焙煎豆があった場合、どちらかが”Under側”つまり浅い方であり、もう片方が“Over側”つまり深い方になります。
図の場合、ブルーのカーブはオレンジよりOverですが、グレーよりUnderです。オレンジがいちばんUnderですが、それより浅い焙煎をすればそっちの方がよりUnderになります。あくまでも対比、もしくは”方向性”のみでしかUnder、Overと認識できない訳です。
明確な境界線は存在しませんが、上記の様に比較対象があるとそれぞれの焙煎の立ち位置が対比を用いることによって明確になります。という事でファナティックはUnderdevelopment、Overdevelopmentを以下の様に定義づけしました。
【Underdevelopment(あんだーでべろっぷめんと)】
焙煎度合いが浅くなることを指す。(浅煎り方向=Under Vector)
- 酸とフレーバーが強く、甘さと質感が弱くなっていく
- 焙煎が浅すぎると“Raw Burn”(生焼け)を伴いやすい
- 度合いが強くなると渋みを伴いやすい
【Overdevelopment(おーばーでべろっぷめんと)】
焙煎度合いが深くなることを指す。(深煎り方向=Over Vector)
- 質感と甘さが強く、酸とフレーバーが弱くなっていく
- 焙煎が深すぎると“Scorch”(焦げ)を生じやすい
- 度合いが強くなると苦みを伴いやすい
・・・・・
ある2つのコーヒーを比べた時、焙煎度合いが違うと当然浅い方が、酸が強く感じられます。CityとFull Cityを比べたらCityの方により酸が感じられるわけです。当たり前ですね。そしてFull Cityの方が苦みは強いです。
繰り返しですが、どこからかがUnderとかではなくて、比べたときに浅い方が酸が強く質感が弱いという事です。
またLightとHighを比べたらLightの方が、渋みが出やすいですね。浅く酸が強いコーヒーは渋さが表れやすくなります。これも当たり前です。
まず上記のように分離させたうえで、“生焼け”や“焦げ”がどういう概念なのかを整理する必要があります。浅くても生焼けの味がしないこともありますし、深くても焦げてない焙煎だってあります。なので焙煎の“浅さ/深さ”と“生焼け/焦げ”を混同してはいけないのです。
焙煎傾向(Roast Trend)
焙煎中の火力の当て方について上記の度合いと同じように、2種類の焙煎を比べたときを基準にして定義付けしました。それがStir FryとBakeです。(”傾向”はTrendとTendencyとどっちがいいのかな・・・悩む・・・。( ゚Д゚))
【Stir Fry(すてあ・ふらい)傾向】
短時間、高火力、高攪拌焙煎傾向。
- 酸とフレーバーが優位になる
- Balance = Solid Structure(はっきりとしたフレーバー)
- 渋みやRoughness(塩味)を伴いやすい
- ROR(Rate of Rise)が高い
- 生豆の投入量が少ない
- 余熱(Bottom/中点)が高い
- Convection(対流熱)効率上昇
- 高火力、高攪拌、比較的短時間の焙煎
- 焙煎が浅めに推移した場合は“Raw Burn”(生焼け)を生じやすい
【Bake(べいく)傾向】
長時間、低火力、低攪拌焙煎傾向
- 質感と甘さが優位になる
- Balance = Dull Structure(ぼんやりしたフレーバー)
- 苦みやMetallic(金属味)を伴いやすい
- RORが低い
- 生豆の投入量が多い
- 余熱(Bottom/中点)が低い
- Conduction(伝導熱)効率上昇
- 低火力、低攪拌、比較的長時間にわたる焙煎
- 焙煎が深めに推移した場合は“Scorch”(焦げ)を生じやすい。
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焙煎中の熱量が生豆の量に比べて大きくなるのがStir Fry。
焙煎中の熱量が生豆の量に比べて小さくなるのがBake。
といった感じです。
(Stir(かき混ぜる) Fry(揚げる/炒める)はいわゆる中華料理で言う炒め物のことを指します。短時間で高火力、攪拌回数の多い調理法ですね)
同じ焙煎度合いで2種類の豆を比べた場合、焙煎時の熱効率が高い方が酸とフレーバーは発達し、対して質感と甘さの印象は弱まります。反対に熱効率が低い方は質感と甘さが主体的になり、酸とフレーバーの印象は弱まります。
かんたんねー( *´艸`)
より細かくいじりたい人は、Drying Phase、Maillard Phase、Development Phase等にそれぞれStir Fry傾向とBake傾向を入れ込めばいろいろ変化させることができるのでいじり甲斐があります。
ファナティックはもうめんどくさいので一本焼(一定火力焙煎)してますが・・・。(笑)
焙煎欠点(Roast Defect)
前にも書いた通り、生焼けだろうが焦げていようがファナティックは全然かまわないのですが、やはり巷には生焼けや焦げを回避したい方々が多くいるのも事実です。なのでここで改めて焙煎欠点を定義づけしました。それがRaw BurnとScorchです。
【Raw Burn(ろう・ばーん)】
生焼けを指す。
豆内部へのカロリー伝達不足により、フレーバー成分の前駆体が十分に変異しなかった状態。特にUnderdevelopmentの度合いが強い(焙煎が浅い)と生じやすくなる。
【Stir Fry傾向の生焼け】
主にナッツや乾燥した穀物様の生焼けフレーバーが感じられる。Nut、Straw、Hay、Cereal、Breadなどが相当する。加えて酸が強く、ボディは軽くなる。RORが高すぎてDevelopment Phaseが短いと生豆表面と内部の焙煎度合いに差がつきより顕著になる。
【Bake傾向の生焼け】
主に新鮮な草や、青いフレーバーが感じられる。Green、Cut Grass、Vegetative、Citrus Peel等が相当する。酸は単調で印象がはっきりせず、ボディは重くなる。RORが低すぎて1st Cruckが弱い、もしくは発生しない場合には前駆体の変異に必要なカロリーが足らずより顕著になる。
【Scorch(すこーち)】
焦げを指す。
カロリー供給過多により、焙煎が進行しすぎて豆表面の組織の炭化が始まってしまった状態。Bitter、Burnt、Iron、Metalic、Carbon、Pepper、Dry、Dark Chocolate、Pungent、Astringent等のフレーバーが感じられる。Over DevelopmentでBaked傾向が強く出ると生じやすく、特に1ハゼ以降のDevelopment PhaseでBaked傾向が強い場合により顕著になる(高温のドラム面との接触時間が長くなるため)。
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昔Bakedの定義はきちんとしていて、サンプルなんかもカップ焼程度の焙煎で発達不良の味が確認できました。
しかし現在WCE(World Coffee Events)のRepresentative(国内大会のヘッドジャッジを行うために派遣される代表)が持ってくるBakeサンプルはなぜかかなりの長時間焙煎で、焙煎度合いも深く焦げており、OverdevelopmentとScorchが合体したようなものに変容してしまっています。かなり焙煎も進行しているので肝心のBakeフレーバーであるWCRC定義のシリアルやオーツは感じられないですね。一体何のためのサンプルなのか・・・・??(;´・ω・)
まあ、厳しい言い方をするとRepの方できちんと理解できてないんだと思います。そもそもBakeが何なのかが・・・・。んでもってRepの審査員プログラムを受講する国内審査員はたまったもんじゃないですが・・・。
実際問題きちんとしたBakeサンプルを作るのは結構難しいですけどね。
なんでこうなっちゃったのかしら?
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Scorchは焦げのことですが(Charとも言う)、焙煎の深さから来る苦みではなく、胡椒や炭、金属臭や辛味といった刺激的な炭化した味を指します。排煙不足やドラム面への長時間接触が主な要因です。だからOverdevelopmentときちんと区別しないといけません(まあフレンチローストとかになると最終的に焦げてるようなもんだけど・・・(笑))。
そして実は高火力要因でScorchは発生しません。仮に1ハゼ後のDevelopment Phaseで高火力を維持しても焦げることはありません。“焙煎進行が早くなる”のみです。
そう。高火力はコゲの原因にならないのです。
焦げたと思ってしまうのは、想定よりも早く焙煎が進行してしまうからです。なので、そう思いやすくなるのです。(特定の小型焙煎機だと供給火力をかなり大きくでき、その場合1ハゼと2ハゼが連続してくることがある)
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実は低火力、Bake傾向の方が焦げます。(;´・ω・)
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どういう事か・・・。
生豆が接する鉄板は温度が高いのですが、十分に加熱していないと鉄板の温度分布がムラになりやすくなります。料理と全く同じですが、こうした場合に食品は焦げ付きやすくなります。同時に低火力は鉄板の吸着水(化学的に金属に結合している水分子)が揮発せず、タンパク質と金属の吸着性が高くなるので余計に焦げやすくなります(80℃でくっつくので温度をそれ以上に保つ必要がある)。200~250℃位まで一度昇温させないと吸着水が分離しません。
例えばお肉焼くときは必ず煙が出るまでフライパンを熱しますよね?
そうすることで温度ムラをなくし、高温を維持することによってタンパク質の吸着性を排除しているのです。(という事はある程度ボトム温度は高くする必要がある)
さらに攪拌についてですが・・・・。
中華料理のチャーハンを引き合いに出すとわかりやすいですが、高火力で鍋をあおって攪拌を促進し、対流熱優位にするとパラっとしたチャーハンになります。逆に鍋をあおらないで低火力でチャーハンを作ると焦げ付いてべたっとした仕上がりになります。
つまりは生豆の鉄板への接触時間を短くし、生豆の鉄板への接触回数を増やす(高攪拌)と焦げにくくなります。(Stir Fry傾向)
攪拌を向上させるには、生豆の投入量を少なくしたり、窯の回転数を上げるなどがあります。
特に深煎りの場合、Development Phaseで時間がかかるとすごく焦げやすくなります。200℃を超えると今度はタンパク質が変異してさらに焦げやすくなってきます。その場合、焦げを回避したいのなら、高火力を維持して、焦げる前に焙煎を終了させる必要があります。
今まで思ってたのと逆ですねー(/・ω・)/。
でも実際にそういった事実と結果が確認されているので、やはり思い込みって怖いですねー。1ハゼ来たら火力下げないと焦げるって言われたらその通りだと思うよね。実際そうやって教わってきたし・・・でもまさか反対だったとは。
量に関してもまさか投入量が多い方が焦げやすくなるなんて・・・。
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こりゃ目から鱗だ!!!!!!(*_*)
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という事でファナティックの焙煎設計における諸定義でした。
・・・・・なんのこっちゃでわかんない??
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じゃあ今すぐファナティックにトレーニング依頼だ!!!(ただの宣伝)( *´艸`)
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まあ実際の焙煎におけるプロファイルの設定=Roast Designingはカッピングの検証を行いながらセッティングしていくため、結構複雑な作業になります。なので、上記の文面見ただけではさっぱりわけわかめですね。
ということで、とりあえずファナティックの頭の中の一部をご紹介しましたー。
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恋の炎は、焦げつく前にもっと燃やしとけ!!
焙煎と恋に正解などないわ!!!
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貴女の全てが正解♡
にゃはははははははははははははははははははははははははははは