こんにちは!!
Coffee Varieties are filled upの三神ですー!!
以前ろくに整理もせずに羅列してきた、エチオピア品種の記事の再編をさせていただきました!!
ちょっとスペシャルティに関係があるかもようわからん品種がありすぎて煩雑になったので、ある程度なじみのある品種を選び出し、再度ピックアップして深堀することになりました。
2部同時にアップしておりまして、
- Gedeo、Sidama、Guji、BorenaゾーンのLocal Land RacesとCBD耐性種
- こんがらがったGeisha種とGesha種をどうにかしてみる
以上の記事を続けて掲載させていただきます。
という事で今回はエチオピアでも最も重要と思われる南部のLocal Land RaceとCBD耐性種をご紹介して来たいと思います!なお今回の参考文献はこちらです。
【参考文献】
Perfect Daily Grind
World Coffee Research
https://varieties.worldcoffeeresearch.org/varieties
A Reference Guide to ETHIOPIAN COFFEE VARIETIES(書籍)
Local Land Race
1970年以前のエチオピアの品種群は、土着品種が現地でわずかに選抜されている程度が一般的で、政府の研究所や、コーヒー関係の機関が主導したものは全く存在してなかったようです(ほったらかし・・・?)。1970年代に入ってやっとエチオピアの公式研究機関であるJARC(Jimma Agricultural Research Center:ジマ・アグリカルチュアル・リサーチ・センター)によって国内に生育している様々なコーヒー品種の種子が採取され、選抜や開発が始まりました。こうした背景にはアフリカで猛威を振るったCBD(Coffee Berry Disease)や干ばつ等に対応する必要があったからでした。
Jimma Agricultural Research Center
https://www.facebook.com/JARCmelko2021
森林の野生コーヒー群から採取されて、地元の栽培環境に適合し、なおかつ長年にわたって栽培されてきた品種群は“Local Land Race(ローカル・ランド・レイス:土着品種)”と呼ばれています。こうした品種群は他にもRegional Land Race(リージョナル・ランド・レイス)やHeirloom(エアルーム:遺産)やEthiopian Accessions(エチオピアン・アクセッションズ:エチオピア原生種)という名称で表記されることもあります。
数100年にわたって農家の種子獲得先は国のいたるところに存在する天然の自然森林だったのですが、こうした自然森林(Forest)は現在エチオピア国内で栽培されている品種群のソース(源)でした。採取された品種群は農家から農家へと受け継がれ、地区から地区へと伝播していった歴史があります。特にエチオピアの南西部に位置する山岳性の熱帯雨林は野生のアラビカコーヒーの豊かな遺伝的多様性に富んでいたため、様々な品種が採取されました。
・・・・という事で気候変動や伐採による森林(Forest/ Semi Forest)の減少は天然に育まれているコーヒーの遺伝子バンクが破壊されていることを意味します(涙)。
2002年にはいってエチオピアはそれまで配布していた生産環境に幅広く対応できる品種の代わりに、特定の生産環境により適合する土着品種群の推進、Local Land Race Development Program(LLDP)を2002年から開始しました。LLDPの目的はより特定の生産環境(テロワール)に適合し、そのエリアを代表する品質を顕す品種を作成、選定することでした。
*こういった野生種から耕作用に選抜改良された品種は正式には“Cultivar(カルティバー:栽培品種)”と呼ばれますです。
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エチオピアの各地域のLocal Land Raceを全て上げると数が多すぎて意味不(ノイズだらけ・・・)になるので、ここではSidama(シダマ)やGedeo(ゲデオ)ゾーン等のいわゆるSidamo、Guji、Yirgachffeなどと呼ばれる地域のスペシャルティシーンでよく見る品種を取り上げますですー。
*なおエチオピアの品種は基本的にみんな赤色品種(Red Varieties)です。
Gedeo、Sidama、Guji、BorenaゾーンのLocal Land Races
Gedeo(Yirgacheffe)、Sidama、GujiそしてBorena(ボレナ)のコーヒーはエチオピアでも最も有名で最高のテロワールを誇ります(やっぱり最強?)。フローラルかつシトラスを感じさせるカッププロファイルで知られていますね。これらの地域の土着品種群は数十年にわたって同地域の森林から採取、伝播したもので、こうしたカッププロファイルと品質に確実に影響を及ぼしているものと考えられています。
なおYirgacheffeのKochere、Gedeb(コチェレ、ゲデブ)Woreda(“ウォレダ”は小エリアの区画単位)の農家はその父や祖父の代に森林を切り拓き、コーヒーやその他の作物を栽培し始めたとも言われています。
という事で、いわゆるGedeoゾーン(Yirgacheffe)やGujiゾーンの辺りは人為的に開墾が行われ、コーヒーの耕作地(ガーデン・コーヒーが多め)として発展した土地柄になります。それゆえLocal Land Race(土着品種)以外にも、JARCが配布した74110等のCBD耐性選抜種(後述します)の採用も多くなっています
【Gedeo、SidamaゾーンのLocal Land Race】
- Kurume
- Dega
- Wolisho
Kurume/Kudhume(クルメ/クドゥメ)
クルメ/クドゥメ/久留米(笑)。小さい実を付け、高収量であった原生木(近くに植わっていたコーヒーとは別の樹木)の名がつけられました。1989年から1994年の間にこの品種名が広く定着したようです。この品種はGuji、Gedeoの両ゾーンで大変有名で、コンパクトな天蓋を持ち、やや小さい葉、そして緑色の新芽を萌芽することで知られています。JARCの品種シリーズでは74110、74122、74148、74158が似たような樹勢形態を持っており、これらは“Kurumeタイプ”として再定義されました。実は小さく丸くてコロコロした感じになり、ロングベリーではありません。
・・・・・Kurume種はこの地域では最も有名な品種ですが、品種の特定にあたっては基本的に木や実の形から特定することが通例であったため、厳密な遺伝子分析ができていないケースが多いと考えられます。またカップクオリティーが良好で有名なこの品種にあやかりたくて、何となく似ているからKurume種を主張する農家や農協も実際多いのではないかと思います・・・(Typica種みたいにね)。
カップはエチオピアライクさであふれており、シトリックでちょっと乳酸っぽい印象があるかと思います。いわゆるYirgachffe/Gujiのコーヒーのロールモデルといえる品種ですね!
Dega(デガ)
デガ。この名称の由来は2説ありまして、1つ目はDega(通称“Fire Wood”)と言う名前の原生木があって、この樹木は燃やすと香木のような甘い香りが漂うのですが、それがコーヒーを焙煎する時の香りによく似ていることから名づけられたという説。2つ目はアムハラ語で“涼しい高地”と意味が“Dega”という単語にあり、この木が標高の高いエリアによく植えられていたことから名づけられたという説があります。Dega種は中くらいの天蓋を持ち、同じく中くらいのサイズの実を結実することが知られています。
Wolisho(ウォリショ)
ウォリショ/ワリチュ。この名前も“Wolisho”と呼ばれる木に形が似ていることから名づけられました。Wolisho種は大きい実を持ち、また年ごとの収量にばらつきがあるという特徴があります。木は高く、開けた天蓋を持ち、新芽はブロンズ色という形態を持っています。この品種もGedeoゾーンのコーヒーの農園情報でよく目にする品種ですね。タイプとしては甘さ質感が強めな印象です。
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Kurume種、Dega種、Wolisho種は結構前から名前だけは良く出ていた品種ですね。かなり前にMoplaco(モプラコ)のエレアナさんが送ってくれた農園プロファイル(Kochereのロットだったかな?)にその名前が記載されていました。これら3つの品種は一つのロット中に混在していることが多いので、コーヒーの味わいに複雑性を与えているとも言えますね。
【Guji、BorenaゾーンのLocal Land Race】
- Bedessa
- Kudhumi
- Miqe
- Sawa
- Walichu
Bedessa/Baddessa(ベデッサ/バデッサ)
ベデッサ/バデッサ。チェリーのパルプ(果肉)は食用可能なほど大きく、赤黒い実をつける同名の樹木に似ていることから名づけられました。Gujiゾーンでは最も一般的な品種でフルーティーなカップクオリティーを持つことで知られています。West GujiゾーンにHambela Wamena(ハンベラ・ワメナ)という有名なウォレダがあるのですが、ここにGoro Bedessa(ゴロ・ベデッサ)と言う場所があります。地名に準じた品種名かもしれませんねー。
Kudhumi(クドゥミ)
クドゥミ。小さい実を結実し、病気に耐性のある品種として知られています。上記のGedeoゾーンで紹介した”Kurume種(クルメ)もしくはKudhume種(クドゥメ)“の別名です。Kurume種に木や実の形が似ていることからほぼ同じ名前が付けられました。一応同じ品種のくくりになっていますが、すでに述べたように以前は木の形状や実の形から品種を特定するのが通例だったため、厳密に遺伝子分析すると違う品種である可能性が排除できないと個人的には思います。
Miqe(ミケ)
ミケ(猫?)。一般的な品種で中くらいのサイズの実を持ちます。同じくMiqeと呼ばれていた樹木が名の由来だそうです。
Sawa(サワ)
サワ。小さい実と病気への耐性を持つことで知られています。こちらも同名の原生木(樹木)から名づけられました。
Walichu(ワリチュ)
ワリチュ。大きな実を付けるGedeoゾーンで紹介した“Wolisho(ウォリショ)”の別名です。上記のKudumi/ Kurume同様、正式な遺伝子分析を施すと異なった結果が出るかもしれませんねー。
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ここら辺の品種もたまに耳にしますね。Bedessaとかが有名ですかねー。こちらも甘さと質感が強く印象的でした。
CBD耐性種(Wush Wush選抜、Metu-Bishari選抜/74110~シリーズ)
中米ではさび病の被害が猛威を振るいましたが、エチオピアを含むアフリカ諸国では実が変色して枯れ死するCBD(Coffee Berry Disease:コーヒー・ベリー・ディジーズ)が深刻な問題になっていました。エチオピアでは1970年代にこの病気に対抗できる品種を選抜するために、国内の様々な森林地帯からCBDに対応できそうな木々や種子を採取してきました。耐性有無の判定方法の一つとして、こうした耐性候補にあがった木々は周辺にCBDに感染した木があっても、その症状が出ていないことが外見で判別できたため、CBDに対応できるのではないかと言う観点で採取されたものも含んでいます。
この病気についは別記事で上げていますので、良かったらどうぞ(^○^)
Coffeeの病気を取り上げてみる。の巻
ここのパートもかなり種類が多いので、最近聞きなじみのあるWush Wush選抜(ウシュ・ウシュ)と74110種等のMetu-Bishari選抜(メツ・ビシャリ)を取り上げます。
Wush Wush選抜(ウシュ・ウシュ)
754/ Wush Wush 754(ウシュ・ウシュ)
1975年に開始されたCBD耐性種開発プログラムではKeffa ゾーン(ケファ)のGimbo Woreda(ギンボ・ウォレダ)内にあるWush Wushの森(Wush Wush村というのもある)から採取された品種群には、JARCによる複数回に及ぶ栽培試験と選抜が行われましたが、その中で唯一合格、配布に至ったのは754種と命名された品種のみでした。1981年にGera、Jimma、Metu/Illubabora(ゲラ、ジマ、イルバボラの各ゾーン)などに広く配布されました。
この品種は大きく開いた天蓋(Canopy:キャノピー)、長い横枝、広い節間、本数の少ない幹という特徴があるようなのですが、この感じだと密植ができないので、それほど多くの収穫量が見込めない品種であるように思われますねー。
これ以外にもGera Seleciton(ゲラ選抜)2006年のLocal Land Race Variety Development Program:LLDPにおいても“Wush Wush”と名づけられた2番目の品種が、最初に行われた1975年の品種選抜の再検証の後に配布されています。この品種は現在Specialty Groupとして定義されています。
・・・・・・このように2種類あることになっているのですが、現在の状況だとどっちがどっちなのかはちょっと判別不能かもしれませんね。ということでコロンビアにもたらされたWush Wushがどっちなのかは、もう本当にわからんです!!一応コロンビアの研究機関であるCENICAFE(セニカフェ)には30年前にエチオピアから直接苗が渡ったそうです。しかし、もうすでにコロンビアのWush Wushで20種以上も遺伝型があるそうなので、結構変異していますね・・・。
コロンビアのWush Wush種のカップはなめらかで甘く、酸はそれほど鋭くない印象でしたが、これもやはりテロワールによって変わってくるでしょうねー。
Metu-Bishari選抜(メツ・ビシャリ)
2020年にエチオピアCOE(Cup of Excellence)が開始されましたが、それまでに聞いたことがない品種名が連発されました(笑)。入賞したほとんどのロットが74110、74158等先頭に“74”の番号を冠した数字だけの品種名が出てきたので、日本のコーヒー関係者はみんな「なんじゃこりゃ?」状態でしたね(笑)。ちなみにこの“74”は“1974年”を意味していて、該当の開発品種が最初に採取された年を表しています。なので74~は全て1974年に母木が採取された品種群になります。
COEが始まるまではKurume種やDega種等のLocal Land Races種等の入賞がメインだと個人的に予想していたのですが、こうした土着品種も若干入賞していたものの、蓋を開けてみれば、ほとんどの入賞ロットがCBD耐性種として選抜/開発された品種でした(きゃうん)。
74110/ 74112/ 74148/ 74158/ 74165
それぞれ1974年にIllubaboraゾーン(イルバボラ/イルバボア)に属するMetuウォレダ(メツ)から採取された母木達がもとになっています。Illubabora ゾーンもエチオピア西側の地域なので、やはりその他の品種の例にもれず、かなりの品種群が西側の森から採取されて来たことが伺えますねー。
これらの74○○○シリーズはJARCによってCBDへの耐性試験が行われ、そのほとんどが数年後の1979年に承認/配布されました。主にGera、Jimma、Illubabora等の西側のエリアでの栽培が推奨されたようですが、Sidama、Gedeo、Gujiゾーンといったエチオピア南側のテロワール=いわゆるYirgachffeやGujiとして認知されているエリアにもかなり配布されたようです。
そして何となく樹勢が似ている(コンパクトな樹勢や小さい実)ことから、これらの74○○○シリーズはこのエリアの代表的な品種であるKurume種にあやかって“Kurumeタイプ”と呼ばれるようになったようですね。
COE(Cup of Excellence)では2020年に74158種が、2021年には74165種が優勝していますが、入手ロットの数で言うと74110がかなり多い品種でした。人為的に配布されたため比較的品種のトラッキング(トレーサビリティ)がしやすいのでしょうねー。
*COEのオークション結果ページでは“Typica”と言う記載があるロットがありますが、これはいわゆるTypica種ではなく、新芽がブロンズ色に萌芽するタイプの品種である(=つまり詳細がよくわからない)ことを意味していると考えられます
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厳密にカッピング比較できてはいないのですが、最近のエチオピアNational Winnerやその他のロットの傾向からすると、74110種等の数字が若い方の品種はシトラス系の酸があって明るく上品な特徴があるようです。対して74158種等数字が後の方になっているロットはリンゴのようなフレーバーがあって甘さとボディーがしっかりして力強い特徴があるように感じられますね。・・・・まあテロワール次第でしょうが・・・・(;’∀’)
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というところでエチオピア南部のLocal Land RaceとCBD耐性種でしたー。
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思えば遠くへ来たもんだ・・・・
そういえば故郷のあの子はどうしてるのかな・・・・(‘_’)
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さあ!!帰ろう!!
あなたの心のふるさと!!
Local Land Race村へ・・・・・!!!!( *´艸`)
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