こんにちは。

Roast Design Coffee代表、三神 仁美です。

コーヒー攻略本の発行から早2年・・・おかげさまで第5版まで重版され、多くのコーヒーラヴァーに愛されてきました。

そろそろ次のファナティック本も読んでみたいと思っておられるファン(?)の皆様に新作のお知らせです。

なんと、”小説”の連載をスタートさせることになりました!!!

そのタイトルは「バリスタ失格」

バリスタとして生きる苦悩と罪意識を綴った問題作です。

特別にブログにて、一部を限定公開いたします。

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第一章 ホンジュラスの森(過去への回帰)

その時は、いつだったか・・・。たしか僕は34歳でコパ・エアラインのボーイングのシートにすがっていた。少しラテンの香りがする独特な臭気の中、この飛行機は世界で最も着陸が難しいホンジュラス・テグシガルパ空港に着陸しようとしている所だった。

断崖絶壁の短い滑走路は、中米の地方らしい安全基準のおおらかさを感じさせてくれる。やれやれ・・・、また恐怖の着陸タイムかと僕は思った。滑走路の中心を目指す飛行機は、その体勢を右へ左へと変え、複雑なGを僕に与えてくる。

意外にもスムースな操縦で飛行機が着陸を完了すると、ベルト着用のサインが消え、天井のスピーカーからお世辞にも控えめと言えない音量でブラジルのポップが流れ始めた。それはミッシェル・テロのAi Se Eu Te Pegoだった。

そのメロディーはそれまで以上に僕を混乱させ打ちのめした。いや、ちょっとやばいくらいキテるかもしれない・・・。それほど胸にぐっとくるものがあった。なぜなら独り身の時にお嫁さんが欲しいと慰めに聞いていた曲だからだ(´Д⊂ヽ。

僕は変なものがこみ上げてこないように両手で口を多い、座禅を組むと般若心経を心の中でとなえた。ん?よく考えてみるとただ飛行機に酔っただけかもしれない( *´艸`)。・・・しばらくしてホンジュラス人のフライト・アテンダントがやってきて、頭は大丈夫かとエスパニョールなまりの英語で聞いた。

「Muy bien.」

無為自然。つたないエスパニョールで“大乗仏(大丈夫)”だと僕は答えた。

やや危険な香りを感じつつも、フライト・アテンダントは苦笑いしながら逝って(行って)しまった。音楽はウガンダのクラブミュージックに変わった。僕は窓からから閑散とした滑走路を眺めた。外に吹く、きっと生暖かいはずの中米の風を想像すると、自分がこれまで犯してきた痛恨のミステイクを考えた。失われた時間、生暖かい目で見守ってくれた人々、もう修正出来ない人生の汚点。

飛行機が完全にストップしてから機器不良でゲートに到達するまでの4時間、僕はずっとあのコーヒー・バーにいた。日に焼けたコーヒーの香りをかぎ、過抽出の風味を感じ、バリスタのコールを聞いていた。それは1999年の夏でアンゴルモアの大王がマルスの名をかたって世界征服するはずの年だった・・・。僕はもうすぐ20歳になろうとしていた。

全ての乗客がいなくなった後も僕は窓の外を眺めていた。すると前と同じフライト・アテンダントが来て、僕の隣に立って、本当に頭は大丈夫かと聞いてきた。

「Hola mi amor・・・.Come mierda.」

“大丈夫です愛しい人、ありがとう、ちょっと気分が悪くなっただけだから(・ω・)ノ”と僕は言って微笑んだ。

第二章 バリスタ失格(過去との対決)

思えば恥の上塗りの人生を送ってきた気がする。

僕はバリスタという職種の本質をいまだに理解できていないのだと思う。多摩の生まれで、初めてエスプレッソマシンを見たのは、アメリカのスタバに行ってからだった。バリスタ研修を受けて、触って、吹かして、火傷するまで、僕はその箱型の大きい機械がちっぽけな量のコーヒーを作るためのものだとは全く気付かず、コーヒーの液体を蒸すだけの機械なのだとばかり思っていた。しかも長い間そう思っていたのだからかなりイタい奴であったことは間違いない。

スチームで何かを温めるのは当時としては面白いサーヴィスだなと思っていたのだが、わざわざ水を高温蒸気にしてミルクを温めるのは意外と実用的ではあるものの、よく考えると、ただ温める割にはずいぶん高額な機械だなと、にわかに興ざめした覚えがある。

子供のころ、人前で話しをするよりかは、奥にこもって作業することを好んでいたので、リア充路線よりかは陰キャ&アングラ路線が分相応だなと思っていた。それにも関わらず突然目立ちたがるから、そりゃ気味の悪い人間判定される訳だ(^_-)-☆。

僕は子供のころから移り気で、学校を卒業してからも、シェフ、彫金氏、モデル、打楽器奏者、マルチの勧誘、OLなど色んな職を転々としたあげく、「自分はグレートな人間だからなんでもできる(∩´∀`)∩」という幻想を持っていたことに30歳手前になって気づき、あまりの愚かさにずいぶん恥ずかしく、身もだえする思いをした。

また僕は場の空気を飲む(読む)ということを知らなかった・・・。いや、それは僕が空気を吸って生きていないという事ではなく、そんなアホな意味ではなく、僕には「その場の空気」という感覚がどんなものだか、てんでわからないという僕自身の心象風景=テロワールが表す心理的風味特性があったのだ。だから周りのバリスタが、これは深刻な過抽出だと言っても、自分が未抽出だと思ったら、その場を破壊してでも主張を曲げることは少なかった。「お前それは見当違い」だぞ、と言われても、ブラジルNo.4/5のClean Cupに3点つけることに負い目を感じることはなかった。それがきっかけで“3点カッパー”と上司に揶揄されることになったとしても・・・。

これ以外にも品質評価で、中深煎りのエスプレッソに2点以下(普通以下)の点数を付けたり、バリスタの知識の足りなさを指摘したことがあった。その時は当時のお偉方から、若手の芽を摘むということで「バリスタ殺し」という不名誉な忌み名を与えられた。( ° ཫ ° )・∵. グハッ!!・・・馬鹿を言うな、僕がどれだけバリスタになりたくて自己研鑽を深めてきたのをお前らは知っているのか?

当時、バリスタにコーヒーの情報は入りにくいから優しくサポーティブであるべきという風潮があった。だがそれは間違った弱者憐憫であった。何故なら今バリスタの間で人気のWDTやRDTといった技術は、2000年代初頭からHome-Barista.comで提唱されていたし、抽出理論やグラインダーメーカー吟味、品質判定、さらには農園情報まで英語サイトを彷徨えばいくらでも情報は拾えたからだ。要はその人のガッツの問題だった。

Home-Barita.com

https://www.home-barista.com/

WDT (Weiss Distribution Technique)

https://www.home-barista.com/tips/do-you-use-weiss-distribution-technique-wdt-t6756.html

RDT (Ross Droplet Technique)

https://www.home-barista.com/grinders/ross-droplet-technique-eliminating-grinder-static-t24051.html

ただいくら空気を飲め(読め)ないからと言っても、危険だったり、深刻な雰囲気の場合はもちろん僕だって気を使う。気配を立って存在を消したりするのは実はかなり得意なのだ(*’▽’)。ただ、やはり珈琲談義となると空気を読めた記憶がない。今まで変わったエスプレッソ、高額な生豆を使ったエスプレッソなど多くの珈琲を飲んできた。ただそのころの僕にとって最も苦痛だったのは、インフューズド丸出しのコーヒーがバリスタ競技会で上位に勝ち上がるのを目の当たりにする瞬間だった(;´・ω・)。

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つづく・・・・・

Coffee Fanatic三神

*バリスタ(場利守多):

古代中国において、帝の食卓を外敵や暗殺から守る武闘衛兵を指した言葉。「帝の“利”する“場”にて、その“多“くを守”る」という意味で同名の故事がある。常に周囲に気を配り場の些細な変化を見逃さない姿勢や心構えは、年代が下るにつれてコーヒーのバーで働くサービスマンを指すようになった。これ以外には古代ヨーロッパで硬いコーヒー豆を粉砕するために大型弩砲である“バリスタ”を用いたことから、コーヒー豆を粉砕して抽出する人をバリスタと呼ぶようになったとも言われている。

(出典)民明書房刊 古代中国喫茶100選(原題:古代中國茶藝百選)

「帝のバリスタ」より

(出典)バリスタ(wikipedia)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF_(%E5%85%B5%E5%99%A8)

*この作品はフィクションです。登場人物の逸話や経歴は実際の人物、団体と全く関係ないので、取り扱いには十分ご注意ください。

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まぢで、本当にフィクションだから真に受けないでね(。◕ˇдˇ​◕。)/

元ネタのご紹介↓

https://blog.goo.ne.jp/azmnet/e/fe4455778f7176772563ccbf7a2a8b82

https://blog.goo.ne.jp/azmnet/e/afafde02ff2f04bfb7d3ad54a0b60135

Michel Telo:Ai Se Eu Te Pego:

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 皆様、お楽しみいただけたでしょうか?

こんな連載小説ありません。

私たちのエイプリルフールにお付き合いいただきありがとうございました。

現在、ファナティック三神は様々なお仕事をいただいており、4〜5月はどうも忙しいようです。

が、落ち着いたらまた以前のようなペースでブログを更新したいとのことです。

次回のブログ更新までもう少々お待ちください!