こんにちは!!Science Fanatic三神です!!

当ブログではコーヒーの焙煎についてのネタが豊富になってきていると思いますが、ここいらで、ちと科学的な裏付けを行っていきたいとおもいますぅ。

9月の焙煎セミナー上級では最初の方で科学のことに触れるのですが、あまりにも全体のコンテンツが膨大になってしまったので、今回のブログで軽く触れておきます。ぜひ、予習がてらに読んでいただければ幸いです。

今までさんざんStir Fryだとか・・・、Bakeだとか・・・、Definition of Flavor Structureだとか・・・、焦げのメカニズムだとか・・・述べてきてますが(笑)、実際の科学的実験や検証などではどうなっているのか・・・・。

という事で、ファナティックが今まで述べてきた事柄が科学的にどのような相関がありそうなのかを、各種論文のリサーチを参照することで検証しようと言うのが今回の企画ですー(●´ω`●)。

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なお、“相関がありそう”

と、ぼかしているのは、やはり味覚そのものがかなり個人の嗜好や捉え方に依存するものなので、100%相関するものではないと考えているからです。

例えば質感なんかでも、いわゆるWeightが強い物を”しっかりした質感”であるととらえる人もいるし、Textureに優れてなめらかでまろやかな物を”しっかりした質感”ととらえる人もいます。

酸味なんかでも、実際の強度でも”しっかりした酸味”ととらえることもできますし、フレーバー的に柑橘系のニュアンスが強い場合にも、”しっかりした酸味”ととらえる事もできるしょう。

甘味では物理的な甘さが伴わなくても、バニリンのような甘さの印象を強く感じやすい芳香成分もありますし、こうしたことからも、人が感じる味わいには様々な要因があって、必ずしも「その物質があるからそう感じる」という事が無い場合も多々あるのではないでしょうか?

同じ味やフレーバーでもとらえ方や見方が異なると別の表現になることも多いですよね!

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という事でこれから興味深い論文などを引用していきますが、くれぐれも丸飲みせずに是非、話し半分で読んでみてくださいね♡

まずは生豆の成分から

ではまず生豆にどんな成分があるのかを見てみたいと思いますー。

大体こんな感じになっていますね。

これ以外にもトリゴネリンとか灰分とかのカテゴリーもあるのですが、まあ主要なところを上げてみましたー。

これらは全部足すと100%を超えちゃうのですが、そこは品種や銘柄などによって個体差があるので、それぞれ、あくまで大まかな数値ということでご理解ください。

【焙煎における各成分の状態】

まず水分はほとんどなくなっちゃいます。焙煎におけるウエイトロス(重量減)はほとんど水分の消失によるものですね

セルロースは植物の細胞壁で、いわゆる食物繊維にあたります。生豆からはがれたり、細かく崩壊したりしますが成分的にはほぼ残ります。

脂質はそのまんま油ですが、これも焙煎で含有量はほとんど影響を受けません。

タンパク質や遊離アミノ酸はメイラード反応の餌(笑)になります。

単糖類は甘さの成分ですが、これもメイラード反応やカラメル化の餌ですね。さらに熱分解も食らいます。

クロロゲン酸は加水分解で、キナ酸とカフェ酸に分解されて、苦味の物質になります。

有機酸はクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等が相当します。これらの酸は焙煎が進むにつれて量が増えたり減ったり、その配分=バランスが変わっていきます。

カフェインも焙煎で若干は減りますが、あんまり揮発しません。たまに深煎りの方が、カフェインが少ないというトンデモ記事を見ることがありますが、いやいや・・・濃度が高くなるので、深煎りの方がカフェインは多いですよ(´・ω・`)。

なんといってもフレーバー

・・・と言うように生豆の成分をざっと見てきましたが、ここでコーヒーのキャラクター決定する上で最も影響の大きいフレーバー(風味)を考えていきたいと思います!

Flavor:フレーバーは“風味”と訳されますが、意外と描写そのものは単純で、イチゴ味、メロン味、リンゴ味と言ったように特定の食物を例えに持って来ることによって描写されることが多いですね。食物のキャラクターを明確に彩るのはやはりフレーバーの影響が多いと考えられます。

それではフレーバーはコーヒー業界ではどのように考えられているのか?

COEのカッピングスコアシートを除いでみると・・・・

Flavor

フレーバーは、味覚(甘味、酸味、苦味、塩味、辛味)と嗅覚(香り)が結合したもので、優れたコーヒーがその上品さ、力強さ、そしてテロワール(Micro Clomate=小区画の土地の味)を顕わす項目でもあります。コーヒーカッパーはコーヒーのフレーバープロファイルが単に一般的な物なのか、それとも丁寧な収穫、生産処理の技術によってもたらされたテロワールの卓抜した顕現なのかを見極める必要があります。例えば発酵過程により生み出されたフルーティー(やや発酵的)なフレーバーが多くの人にとって好意的な印象であった場合、そのフレーバーが世界的に再生産可能である必要があります。反対にこうしたフレーバーがコーヒー本来のテロワールを覆い隠し、阻害する要因であれば低評価となります。

(参考)Cup of Excellence® Cupping Form 2022

というように難しく書かれていますが、簡単に言うと味と香りの合成ということですかねー。

これ以外にもCOEのカリブレーションで行われる試薬を用いたカッピングでは、単一の酸よりも、複数の酸(例えばクエン酸+リンゴ酸+酒石酸)の混合の方が酸の印象は複雑で豊かであることが確認されます。(これは味の相乗効果になりますね)

ここに甘味が加わると、よりフレーバーとしての印象は強まるという確認が行われます。(酸は弱体化するので、ここは味の抑制効果になります)

そしてさらに質感が加わることで複雑で重厚なテイストであることが確認されます。(質感成分は味成分の味蕾への到達を阻害する性能があるので、質感が強くなると味わいは重厚である反面、ぼんやりすることがあります)

また、このCOEの試薬カッピングでは、渋味、発酵、塩味などのネガティブ成分(タンニン、酢酸、カリウム等)はより強い抑制効果を発揮し、酸や香り、フレーバーにとって大きな阻害要因であることも確認されます。

という事で、味わいのベースとして重要になってくるのは甘味、酸味、香りになるのですが、やはり特定の食物を連想させるのはなんといっても、香り(アロマ)の影響力が一番大きいです。仮に甘味や酸味などが同じテイストバランスであってもアロマが違えば全く別物になり、連想される食物も異なってきます。

特にコーヒーの芳香成分は1000種を超える成分が報告されていますね!

なお、芳香/アロマ成分は超重要なので、今回の本記事のトリという事で最後にご紹介します。

なので、まず味の要素である、甘味、酸味から見ていきたいと思います!!

昨今のコーヒーの競技会では何故か甘味やボディー、味の強さ(Intensity)を重視する傾向が強いので(WBCとかWCRC)、甘味から取り上げていきたいと思います。

ふぁなてぃっくは個人的に酸や質感のテクスチャーを重視しているので、Intensity(強さ)はそもそもスペシャルティ的ではないと思っているのですが、とりあえず今の流行に従ってみますー・・・・(´・ω・`)

では、早速行ってみましょうー!

甘味の化学

甘味として感じられるのは基本的にショ糖等の単糖類と二糖類になります。また水溶性の多糖類も甘味成分ですが、非水溶性の多糖類は食物繊維になるので全く違ったものになってきます(甘くなくて、ごわごわする・・・だって繊維だもの・・・)。

なお、上記のスライドに表示しているのは甘味の感覚を発揮する糖類になります。

むぅ・・・・・・。

・・・・・結構種類がありますねー。

さらに、糖類以外のアミノ酸でも甘味を感じるものが実はあったりします。それがこちら・・・

こうした糖類、アミノ酸はメイラード反応が進むによって消費されていき、メラノイジンやカラメル化による甘味、苦味へと変異していく感じになりますね。

ちなみにカリフォルニアの有名ロースターであるSweet Maria’sのLibraryによると、ショ糖であるスクロースは、浅煎りで2.9%残留。中煎りで0.9%残留。深煎りで0%になるという事です。

(参考)“SUCUROSE” Sweet Maria’s Coffee Library

https://library.sweetmarias.com/glossary/sucrose/

スクロースはメイラードやカラメル化の進行により芳香成分に転化していき、結果“甘い”という印象が強まるのでしょうねー。

なおメイラードやカラメル化による化学反応で生成された芳香成分は、主にいわゆるトーストやお肉を焼いたときの“香ばしい”アロマや、キャラメル/チョコレートのような印象が主体になります。なので、あんまりフルーティーやフローラルな芳香の類にはならないです。

なお、これらは香りについては後ほどご紹介しまーす!!

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それでは続いて酸味いきまーす!!

酸味の化学

コーヒーの有機酸は焙煎の進行で量やバランスが変わっていくのですが、その移り変わりがこちらですー。

(・・・ソースが古い!!(;゚Д゚)、まだファナティック生まれてないわん♡)

えー、生豆の酸については、その物が持っている物に大体依存してきます。構成要素の配分として多く、重要な位置づけである、クエン酸やリンゴ酸はたいていの豆が含有している有機酸になりますね。これらを含む有機酸類は焙煎の進行によって減ったり増えたりします。

フレッシュ、フルーティーなクエン酸とリンゴ酸は”濃度”が減っていき、やや渋味を持つ酒石酸が増えてきます。乳酸はあんまり変わりがないですね。

最初の方でCOEの試薬カッピングの段で、“酸の種類が多い方が豊かな印象になる”と解説しましたが、やはり焙煎度合はLight~Mediumのレンジで酸成分の種類が最も多くなるので、相乗効果と抑制効果のスライドでご紹介した様に、フレーバー的にも酸味はこのレンジが最も豊かであると言えそうです。

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という事で次はいよいよ今回のメインである芳香成分に行きましょうかね!!

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ウホホ( *´艸`)

香りの化学①

焙煎豆の芳香成分は1000を超えるそうなので、まぢで果てしない領域です・・・・。

芳香成分の系統としては、酸、エステル、ケトン、ピラジン、フラン、フラノン、フェノール、アルデヒド等が重要になるそうですが、上記のスライドからすると、重要とされるのは、1000種のうち、30種類程度との事です(え!!ずいぶん絞ったわねΣ(゚Д゚))。

また明確に違いが現れる成分はさらに絞られて、12種類に特定されるというリサーチがあります。それが以下のスライドです。

スライドの中で、成分名の右側にカッコの番号が振られているのが伝説(?)の12種の芳香成分です。それぞれがどのような芳香を示すのかがざっくり区分されています(Sweet, Caramel notes等・・・)

成分一覧の中にバニリンとか、アセトアルデヒドが見えますね。これらも特徴的な香りを持つ物質ですね。

【伝説の12匂(笑)】

  1. 2-Methylpropanal:イソブチルアルデヒド(Sweet, Caramel)
  2. 2-Methylbutanal:2-メチルブチルアルデヒド(Sweet, Caramel)
  3. 3-Methylbutanal:イソバレルアルデヒド(Sweet, Caramel)
  4. 2-ethyl-3,5-dimethylpyrazine:2-エチル-3,5-ジメチルピラジン(Earthy)
  5. 2-ethenyl-3,5-dimethylpyrazine:2-エテニル-3,5-ジメチルピラジン(Earthy)
  6. 2,3-diethyl-5-methylpyrazine:2,3-ジエチル-5-メチルピラジン(Earthy)
  7. 3-Isobutyl-2-methoxypyrazine:3-イソブチル-2-メソキシピラジン(Earthy)
  8. 2-Furfurylthiol:2-フランメタンチオール(Roasty, Sulfury)
  9. 4-Vinylguaiacol:4-ビニルグアイアコール(Phenol)
  10. Acetaldehyde:アセトアルデヒド(Fruity, Flowery)
  11. Propanal:プロピオンアルデヒド(Fruity, Flowery)
  12. 5-ethyl-3-hydroxy-4-methyl-2(5H)-furanone/ furaneol:5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン/フラネオール(Sharp)

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うごわぁ・・・(@_@)

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またメイラード反応や、それによるストレッカー分解でも芳香成分は生成されます。

上記と重複している成分もありますね!

余裕のある方はぜひ個別に調べてみてくださーい♡

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香りの化学②

と言うように様々な芳香成分がある訳ですが、実は焙煎傾向によって、それぞれの発生ピークと総量が全然変わってきます(゚Д゚;)。それを示すのが下記のスライドです。

このスライドでは各温度帯の供給熱風を用いて焙煎した際の、焙煎時間帯における芳香/揮発成分の発生分布を示しています。

これにより、芳香成分の発生量は短時間高温焙煎(High Temp Short Time=HTST)の方が著しく多く、長時間低温焙煎(Low Temp Long Time=LTLT)では発生がかなり少ないことが分かっています。そして焙煎時間が長い、あるいは焙煎度合が深いと芳香成分は減少していくという実験結果が出ています。

ファナティックが言及するところの焙煎傾向では、Stir Fry傾向が“HTST”と同義で、Bake傾向が“LTLT”に当たります。なお科学界隈では焙煎傾向を2分する場合には、この様にHTST(高温短時間)とLTLT(低温長時間)と呼称することが多いです(他の論文でも出てくる)。

んでもって次でまとめてみます。

それではまとめてみると・・・・

やはりフレーバーのコアになるものはアロマ=芳香成分になり、そしてそこに様々な酸が構成させることによってフレーバーの表情と言うものが変異していきます。

酸味には多くの印象が感じられますが(特にクエン酸、酒石酸、乳酸の味わいはかなり異なる)、基本的に甘さというものに多様性はほとんどありませんね。甘さに多様性を感じる場合、付随するアロマによってキャラメル、チョコレート、トーストといった印象になることが通例です。こうしたことからやはりアロマがフレーバーにおいての主導的立場になり、それに酸の味わいが付随していくものと考えても間違いは少ないでしょう。

今までの解説からアロマの発達においては高温短時間(HTLT)が有用で、酸味の種類の多さは、生焼けを回避したLight~Mediumレンジにおいて最大化することが分かりました。

この様に甘さ、酸、芳香成分の分析とその配分に迫ってみましたが、結論としてファナティックが提唱していたように以下の様になると思います。

【Underdeveloped/Stir Fry(HTST)】

焙煎が浅い、もしくは短時間高温焙煎傾向

⇒酸味とフレーバーが優位で、甘味と質感が劣位

【Overdeveloped/Bake(LTLT)】

焙煎が深い、もしくは長時間低温焙煎

⇒甘味と質感が優位で、酸味とフレーバーが劣位

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焙煎が浅目だったり(Light-Medium)、短かったりする場合には酸の種類と芳香成分の量が多いので、“酸味とフレーバー”が顕著になります。

そして焙煎が進むと甘味と苦味が強くなっていくのは、相対的に酸と多様な芳香成分が焼失し、メラノイジンやカラメルが持つ甘味と苦味が優位になるからですね。また、これらが持つ芳香成分は甘さに関連するものがほとんどです(キャラメル、チョコレート、トースト等)。

質感が強くなっていくのも、セルロースと脂質は焙煎の進行によって成分量があまり変わらないので、相対的に配分が多くなる=濃度が上がるからですねー。さらにセルロースは焙煎が進むと崩落/崩壊(Degradation)が進むので、質感の増強により寄与していきますー。

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ということで、ファナティックがひねりだしたStir FryとBakeなどについてのエビデンスは、一応とれていることになりますかね!?うほほ。

やはり論文は偉大だな!!とっても役に立つ!!(≧◇≦)

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愛の究極の選択!!

燃え上がるHTST!!

じっくり煮詰めるLTLT!!

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貴方は愛はどっちスタイル!?

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「いずれも鉄は熱い内に叩くのだ!!まずは愛の炎を燃やしてみろ!!(/・ω・)/」(ふぁなてぃっく談)

きゃー!!迷言!!!( *´艸`)

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【今回の参考文献様たち】