Cup of Fanatic三神です。(狂気の一杯♡)

最近品種編ばっかり書いてたので、ちょっと気分転換のつもりでCOEカッピングフォームの各項目について書いてみます。

ファナティックによる焙煎分析も、基本的にこのCOEカッピングフォームをベースに組み立ててます。またWCRC(World Coffee Roasting Championship)もSCAAのカッピングフォームをベースにした評価フォームを使用しています。

なのでカッピングの項目がそのまま焙煎の品質評価に直結できるようなっています。もちろんお店の最終的な抽出方法に合わせて焙煎プロファイルを設計しないといけないので、自店で行う分には別にカッピングでなくてもOKです。

昔のロースターの方にはカッピングを好まない方もいたのですが、やはりカッピングフォームによる各フレーバー項目の分析はとても有用ですね!

なおRDCの場合は実際のハンドドリップ抽出の220cc程度を飲み切れるような味づくりを行っています。カッピングだとやや物足りなさを感じる焙煎プロファイルなのですが、現在の(あくまで2020年2月の時点)焙煎大会で評価される焙煎を行うと、質感と味が強すぎて飲みづらくなるのと、ややシンプルな味づくりになるので、やはり最終抽出形態と味わい方を考慮して焙煎をアジャストしてます。ですが、その場合でも焙煎評価はカッピングを使用しています。

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ちょっと前置きが長くなりましたが、それでは実際のカッピングフォームの項目とその定義について解説していきますね!!

(今回も長くなったので複数パートでお送りします・・・)

Cup of Excellence Cupping Formのフレーバー項目

コーヒー界の巨人、George Howell氏がワインテイスターであるAndrew Sharp氏の著書“Winetaster’s Secrets”を参考に組み上げたカッピングフォームです。8つの項目があり、各項目8点満点になっています。計64点に基礎点36を足して合計100点満点になるように設計されています。

合計80点以上がスペシャルティーグレード

合計84点が旧COE認定コーヒー。各項目6点平均。模範的(Exemplary Coffee)スペシャルティー。

合計86点87点以上(2023年現在)(年や会場によって変動する)がCOEレベル

合計90点以上がPresidential Award Coffee。賞賛されるべきコーヒー。

ちなみに各項目の“6点”がスペシャルティー相当の点数になるので、ここが基準になりますね。

なお点数の付け方は個人差があります(でも最終的には審査員全員ある程度の点数レンジに入る必要がある)。今回の解説で点数の付け方にも触れてますが、Fanaticの付け方になるので参考程度にお考え下さい。

では各項目に行きますー。

  • Clean Cup
  • Sweetness
  • Acidity
  • Mouthfeel
  • Flavor
  • Aftertaste
  • Balance
  • Overall

カテゴリーは上記の8つで構成され、基本的に上からの順で評価するのが推奨ですが、強制ではありません。温度が下がるにつれて上から下の順番で各フレーバー項目が判別しやすくなるという説明がなされています。

Clean Cup

クリーンカップはコーヒー評価における基礎的な起点であり、欠点や汚れなどの味覚要素がない状態を指します。コーヒーのテロワール(Micro Climate)を明確に際立たせる“透明性”がこの項目では必要とされています。

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基本的に無欠点(発酵、フェノール、カビ等がない)でなおかつGlassy、Strawy、Earthy、Rough、Astringent等といったネガティブな要素がないことが前提になります。このきれいな液体の状態で得点“6”が付きます。

Fanaticがまだ駆け出しのころ、“Clean Cup”について厳格な教育を受けました。絵画で例えるとClean Cupはキャンバスに相当します。もし鮮やかな色彩が描かれていてもキャンバスが汚れているとそれらが鮮明に見えないし絵柄がはっきりしません。Clean Cupはこれと同じであると教わりました。

どんなに素晴らしいフレーバーあっても、コーヒーが“Clean”でないとそうしたフレーバーが分かりづらく、印象がはっきりしないのです。

なお点数の付け方については単体で高得点になることはほぼありません。ただ何となくきれいだなという程度では7点、8点がつけられません。このClean Cup項目で高得点を得るには、その他の項目、つまりはFlavorやAcidity等の印象が素晴らしく、またその特徴が明確に表れていることが必要になります。逆を言えばClean Cup以外の項目全てが”7点”になって初めてClean Cupも7点になるようなイメージです。

Clean CupはこのCOE方式では最も重要な要素ですが、最近は軽んじられている傾向があるかもしれません。「フレーバーがすごかったらClean Cupでしょ?」的な感じが蔓延しているような気もします。コーヒーもだいぶ進化したので、今までにないようなフレーバーを感じる事も増えました。しかし逆に良いフレーバーと言えないような物も数多くあり、ユニークだからと言ってすぐに高評価を与えるのは危険ですね。

SCAA方式やWCE(World Coffee Events)主催の各種大会の評価フォームではClean Cupの項目が単純な物に変更されたり、そもそもなかったりします。ただ結局何かしらのネガティブは減点になるので、常に意識しておきたい項目ですね。

Sweetness

スイートネスはコーヒーが収穫された時の、果実の熟度の均一性に直接的な関連性があります。単に焙煎豆の糖分の量に起因するのではなく、他の要素と結合することでも“甘さ”の印象は生み出されます。

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端的にコーヒーの甘さを指す場合は糖類とアミノ酸の結合によるメイラード反応が代表的なものです。キャラメルやチョコレート様の甘さはこうした香気成分の集合体=メラノイジンによってもたらされます。

しかし単に“甘い”というだけでなく、甘さを連想させる物、例えばPeachやVanillaといった甘味に関連性の高いフレーバーが感じられる場合には、実際の糖度に関わらず人は甘さの印象を強く得ることができます。また酸の種類によってはクエン酸<リンゴ酸<酒石酸といった具合に甘さの印象が上がっていきます。こういった複合的、または別要因で得られた“甘い印象”が感じられる場合には点数が高くなってきます。

甘さもネガティブな要因、Bitter、Glassy、Astringent等がある場合には味覚の抑制効果によって印象が下がることがあります。逆に上記の通り、明るい酸やフレーバーと結合し相乗効果が発生した場合には印象が上がります。“Sweetness”含め、全てのフレーバー項目は“Clean Cup”と強い関連性があり、特に大きなネガティブがなければ“6点”を基準につけても問題ないでしょう。

Acidity

アシディティはコーヒーの“明るさ”に相当し、コーヒーに生き生きとした活力を与えます。ワイン業界では“神経”、“背骨”、“脊柱”など液体の根幹/骨格を示す用語で表現されます。

このAcidityの項目において、酸味の強弱はそのまま品質の良し悪しに直結しません。ここでは酸の品質を評価することが求められており、酸のボリュームがどれくらい多いのかという量的な物を指しているのではないという点が重要です。ワインと違い(George Howellはほんとワイン好きだね・・・)、全てのコーヒーにおいて酸味が顕著である必要はありません。この項目においてはむしろ酸味そのものの表情が重要で、「酸味がパワフルであるか?それともマイルドであるか?」という見方ではなく、「酸の印象が荒々しいか?酸が突出して強すぎないか?」や「洗練された酸味なのか?小気味良く快活な印象があるか?」という視点が大切になります。このAcidityの項目においては多くの問を自身に問いかける必要があるのです。

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ワインもコーヒーもそうですが、飲料の根幹のフレーバーを決定する要因は主に酸と香りにあります。特に酸にはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、琥珀酸、乳酸等様々な酸が存在しており、それぞれ特徴的なフレーバーと香りの印象を持っています。なのでこの酸の特性がかなりコーヒーのキャラクターに影響を及ぼします。(酸がキャラクターのコアだからスペシャルティーやってるとどうしても浅煎りばっかになっちゃうのはしょうがないのよね)

カッピングフォーム上では、酸の強弱と質を分けて評価できるように、酸の強弱のグリッドと実際の配点用のバーと2種類が記載されています。カッパーはまず強弱のグリッドのマーク(High、Medium、Low)を付け、まず酸の量的な要素を分離させます。その後その酸がきれいなのか、特定のフレーバーを連想させているか、コーヒーに明るさをもたらしているか、骨格があるか等を探索していきます。

酸味がはっきりしていても未熟で青い印象の時はGreen、さらに収斂味を感じる場合はAstringentといった表現がなされ、Tanninのような渋みが感じられることがあります。WBC(World Barista Championship)ではこの渋さ=Tannin=Astringentはボディー、つまりは触感項目であるMouthfeelの表現に分類されていますが、COEのカッピングにおいては様々なフレーバー表現が割と自由に各フレーバー項目を行き来して表現させることが可能になっています。

なのでこのAstringentをClean Cupの項目で表現してもいいし、Acidityの項目で表現しても構いません。同様に酸味の表現でもあるRefineといったような表現をClean Cupの項目で用いてもかまいません(フレーバープロファイル用語についてはまた別のパートで解説しますね♡)。

特に青さが感じられず、酸による変な刺激がなければ“6点”となります。

Mouthfeel

マウスフィールはコーヒーによってもたらされる触感の印象です。この項目では液体から感じられる“粘性”、“密度”、“重さ”、“きめ細かさ”そして“刺激”といったものが含まれます。

Acidityと同様にMouthfeelにおいても、その強さがそのまま品質に直結しません。カッパーはあくまでも触感における“品質”について評価する必要あります。

AcidityとMouthfeelの2つの項目はその強弱と質を分けて評価できるように、Mouthfeelの項目にも強弱のグリッドと実際の配点用バーの2種類が記載されています。カッパーはまず強弱のグリッドのマーク(High Body、Medium Body、Low Body)を付け、質感の量的な要素を分離させてから具体的な品質描写へと移ります。

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Mouthfeelについては色々な表現があるのですが、カテゴリーが混じりやすいので触感の印象の分類を行う必要があります。なお下記に示す分類は一部Fanatic定義です。この触感のパートは人によってその定義や感じ方がかなりぶれるので、あくまでも参考程度にお考え下さいね♡

①液体の重さ=Body=Weight

主に舌にかかる液体の重さや、舌の動きを抑制する液体の粘性を指します。Heavy/Medium/Light Body、Thick、Thin、Big Body、Full Bodyといった表現があります。

②液体をホールドした時(液体の動きがない時)の触感

液体の流れがない状態で、口腔内を満たす粘性の印象です。口腔内には無数の穴があり、それらをカバーしコーティングした時の触感になります。該当する表現はあまりなく、Round、Creamyといった表現が当てはまると思います。逆に口に含んだ時に刺激を感じる場合はAstringent、Tannin、Roughといったネガティブな表現が用いられます。

③液体の流れがあるときの触感

口に含んだ時、飲み込んだ時、口の中の液体を回した時等、液体に動きがある時の触感の印象です。最初のWeightに相関があり、重たく流れる場合にはSyrupy、軽く流れる場合にはSilkyといった表現が用いられます。表現としては、Syrupy、Smooth、Silky、Velvety等になります。

一応量的なものは除外されるので、②と③が品質にあたるのですが、このMouthfeelのパートでは①の量的な物でも、ある程度品質が伴っていれば評価されているように感じます(よくFull Body使うしね)。

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こんなとこかな?

とりあえず前半4項目でいったん切ります。

このままの調子だとおそらく1万字超えてしまうので(;^ω^)

ちょっとの息抜きのつもりが全くガチな感じになってもうたー・・・・

次回は超重要項目の“Flavor”からですね。

・・・・でもその前に品種編にとどめを刺しておかなければ!!

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CuppingよりもCouplingしたいと思う今日この頃!!!

貴女と食べるフードペアリングは真のコーヒーマリアージュなのだー!!!

うぽ♡