TDS・・・とーきょー○ずにーしーではなく、抽出の猛者たちがしのぎを削る魔界。そして猛者たちが行き着くのはEYという名の無間地獄!!
魔界水先案内人のふぁなてっく三神です。
今回と次回は正直内容がかなり難しいと思います・・・(意識とぶかも)。
今では割と一般的になりましたが、数年前からバリスタさん達は濃度計を使用して客観的に抽出状況を分析するトレンドに入りました。
きっかけはGeorge Howellも関わった(主導した?)Extract MojoやGolden Cupが発端だと思います。濃度計で調べたTDSの値と、抽出比率(Brew Ratio)から収率=EY(Extraction Yield)値を算出し、それらを吟味するといったものですね。
はい。もうすでに意味が分からんですね。
簡単に言うと、収率(Extraction Yield)という値は抽出におけるコーヒーの成分がどれほど水に移動したかという指標になります。味覚評価を合わせることで、その数値が未抽出、過抽出にあたるのかを考察し、抽出の再現性、一貫性を高めるのがバリスタさんの仕事になりますね。
ファナティックは良くTDSについて質問を受けるのですが、最終的なEYと感応評価を合わせないと単体では意味があまりないので、順に追って説明しますね。
TDS(Total Dissolved Solid = 総溶解固形分)
ある溶液(溶媒)に何らかの物質を混ぜた時、その物理的特性により3種類の状態が確認されています。
- 混ざる(懸濁)
- 溶ける(溶解)
- 電離する(イオン化)
“混ざる”は液体に物体が粒子の形状として残り、時間が経つと沈殿します。例えば片栗粉を水に混ぜても時間が経つと下に沈んで、上澄みがきれいになっていきますね。一定の溶液として存在できません。
“溶ける”は物質が水の分子が持つ荷電(水素原子の+と酸素原子の-)に引きつけられて分子が溶液中にバラバラに存在する態のことを言います(エントロピーの増大)。
“電離する”は“溶ける”の延長上にあり、例えば塩=塩化ナトリウム(NaCl)は水(H2O)に溶けるとナトリウムが水の酸素分子に引かれてNa+という陽イオンになり、塩素が水の水素分子に引かれてCl-という陰イオンに分かれます。分子が分かれて溶液中に存在する態です(引き裂かれた恋人たち・・・いやああああああ)。
TDS(Total Dissolved Solids=総溶解固形分)は上記①~③の総和(懸濁物質と溶解性物質の総量)の値を指します。公式な単位ではppm(Parts per Million=100万分の1)を使用します。主に液体の場合は1L(もしくは1kg)の溶液中にどれだけ溶解しているかを定義しています。
PPM(Parts per Million)=100万分の1
例えば1Lの水に炭酸カルシウムが0.000001g溶けていたとすると、表記するたびにいちいち0を付けて表示すると読みづらいし、わかりづらいので(れーてんれいれいれいれいれいれい・・・?むご?)、100万分の1という単位を設定することで、判別しやすくしました。これがppmという単位です。
そうするとこの場合・・・。
“1Lの水に炭酸カルシウムが1ppm溶解している”
と表記することができます(だいぶすっきり!)。なお100万分の1グラムは“µg”(マイクログラム)と同じなので、ppmの代わりにµg/gもしくはµg/ml使っても問題ありまへん。ちなみに1Lの液体ベースなので1mg/Lという風に表記することも多いようです。
*1ppm = 1µg/g =1µg/ml
*1ppm = 1mg/l
*1ppm = 0.0001%
ということで、例えばコーヒー成分16,000µgが水溶液中に溶けていたらTDSは16,000ppmになり、パーセント(100分の1)換算すると1.6%になります(0が4つ繰り上がるのね)。
*TDS 1% = 10,000ppm
純粋にTDSの値が高いと言うことは液体溶け込んでいる物質の量が多いので、“液体が濃い”ということになります。
次につづくEYの計算では%TDSを計算に使用するので、コーヒー業界では一般的にTDSを%化した値で使用されています。
なおTDSの計測にはATAGOさんが出しているリフラクトメーター、PAL-Coffeeが一番手軽に入手できると思います。もっと正確にがっつりやりたい方はVST社が出している製品が信頼性高いと思います(でもむっちゃ高いけどね・・・)。
ATAGO
http://www.atago.net/product/?l=ja&k=CCF59218
VST
ATAGOさんのはまずBRIX値が出て、ボタンを長押しするとTDSに換算されます。大体係数0.8をブリックス値に掛けると近似値が出ます。なおエスプレッソとか、プレスとかの濁っている系のコーヒーは一度ペーパーで濾さないときちんとした数値が出ないので気を付けてね♡
EY(Extraction Yield = 収率)
エクストラクションイールド。収率(しゅうりつ)。これはコーヒーの粉からどれくらい成分が溶液に溶け込んだかの割合を示します。よくEYとTDSが混同される方も多いかと思いますが、定義が異なります。高TDS=高EYであるとは限りません。
EYは抽出成分の移動割合になり、これはすなわち“抽出不足か抽出過多か”を判定する指標になります。計算式は以下の通りになります。
EY% =
抽出された出来上がりコーヒーの液量(g)×計測TDS(%)÷使用コーヒーの粉(g)
TDSに関しては実際に計測器を使用して値を計測しておく必要があります。また補足としてコーヒーの粉とお湯の割合をBrew Ratioと呼称します。これはお湯の重量(g)をコーヒーの重量(g)で割った物になります。
例として、
10gのコーヒーを140ccのお湯で抽出(Brew Ratioは14)。
出来上がりが121ccで、計測TDSが1.6%だった場合。
上記の計算式を使用すると、19.36%と算出されます(VSTの計算アプリ使用)。これがEY、収率の値となります。
なお数値が高いほどよりコーヒーの成分がお湯に移動したことになります(成分がより溶けた)。ただどこを以って未抽出、過抽出か定めるにあたっては、人間の味覚評価で決まるので、厳密にはこの時点ではまだ判定できません。
ただいつものオペレーションで、同じコーヒーなのに抽出味が違った場合、TDSやBrew Ratioから液体のEYが算出できるので、いつもと異なった数値が出た場合は、粉の挽目、湯温またはオペレーションのどこかに原因があるかも知れないと予測がつきます。味の一貫性を保つのに大変優良なツールになりますね!
Golden Cup Standard
先ほどEYを算出してもどのようにとられていいか、すぐに判別できないと言いましたが、これについてある程度の指標を作ろうという動きがありました。それらがまとめられたのがこのSCAAが提供している“Golden Cup Standard”です。簡単に言うと、抽出のBrew Ratio、TDS、湯温、粉の粒度、EY等について、だいたいこの範疇に入るよね?という指標、基準です。
SCAA Golden Cup
https://www.scaa.org/PDF/resources/golden-cup-standard.pdf
もともとはMITのE.E.Lockhart教授が1950年代に指揮を執った研究で、後にSCAAが検証にあたったようです。これによるとEY値は18-22%の範疇に入るのが良いではないかと合意が得られたそうです。それによると・・・。
18%以下をUnder-Extracted(Under Developed)=抽出不足と定義。
望まれる成分が不十分に抽出された状態。
22%以上をOver-Extracted(Over Developed)=抽出過多と定義。
望まれる成分以上に抽出が進み苦味物質が増える状態
これは全日本の検定でも学びますが、コーヒーの成分はまず酸味の成分から移動が始まり、糖分などの甘味成分、そして後半に苦味成分が移動してきます。
これによりUnder=未抽出サイドでは酸が強く、舌触りが軽くて、Over=過抽出サイドでは苦味が強く、舌触りが重たくなるということになります
https://mountaincity.com/images/SCAA_brew_chart.jpg
なので、前回の抽出の記事はこれらを現象が生じていることを上記のように感応的に描写しました。ちなみに英語圏では味が濃いことをStrong、薄いことをWeakと表現します(TDS値)。前回の記事では味の強弱をUnder/Over Extractにファナティック流に置き換えてあり、世間一般と解釈が異なるのでご注意を!!
また成分の移動の速度は温度、抽出時間、粒度、複雑な抽出手順などによって変化しますがこれはまた別の機会にしましょうね・・・。
んー。内容は全然中級じゃなかったな・・・てへ
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彼女は私ではなく、TDSで夢の国の住人と戯れたいご様子。
だがあえて私は言う!
Tottemo DaiSuki!!
Beautiful Relationship!!
Especially for You!!!
・・・続く!!