こんにちはーRoast Breaker三神です。
前回は今までのコーヒー焙煎における重要な概念の見直しでした。今回はファナティックの焙煎への向き合い方、スタンスについてお話しますです。
焙煎方法や情報、そしてその評価や、得られた結果に対しての考え方ですね。
最近はいろんなコーヒーの情報が仕入れられるようになりました。一方で焙煎ついてはなかなかリソースが手に入れづらく、書籍やマニュアルは日本国内にはほとんどないですね。
ぱっと頭に浮かぶ教本はおそらくバッハの田口さんか、カワンルマーの小野さんの2つくらいですかね・・・?その他は主に焙煎時に起きる化学的な現象を考察した本で、実践的な教本としては、上記2つ以外は皆無に近いと思います。
海外だと少しリソースがありそうですね。スペシャルティー業界界隈で今人気なのは前回でも触れたコンサルタントのScott Rao氏の書籍ですが、結構参考にしている人も多いんじゃないでしょうか?でも日本語翻訳の物はないので、英文を読み込むのは結構骨ですね・・・。でも仕方ない(; ・`д・´)。
しかしScott Raoの方法を採用するにしても、結局焙煎するのは自分です。そして出来上がった結果をどう考えるかも自分自身になります・・・(゜-゜)。
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そしてここが重要なのですが、やはり誰かの推奨方法を採用した時、必ずその人とカップを行って味覚評価基準のすり合わせを行う必要があります。いわゆるカリブレーションと言うやつです。(Scott Raoとカッピングしなきゃいけない・・・お金・・・・(;´・ω・))
参考にする人がどういう評価基準を持っているのか知らないといけない訳です。ひょっとしたら自分が求めている方向と全く違っている場合があるかもしれません。(あうち)
みんな違ってみんな惑う
もう一つ気になる点があります。それはみんな異なる焙煎機で焙煎しているという事です。もちろん参考にする人と同じモデルを所有していることもあるでしょうが、巷にはいろんなメーカーの物があるので、基本的に皆さんバラバラと思います。焙煎機の形式や、モデル、サイズ、そして使用するガス種が違うと温度計の温度表示がまるで変わります。
例えばあるProbatの5kg窯に2.5kg投入すると1ハゼが199℃位できます。しかし同じProbatでも1kg窯(Probatino)は160℃台で1ハゼが来ます。
Giesenの6kg窯は3kgの投入だと190℃位で1ハゼがきます。
Diedrichの5kg窯は投入量による偏差が少ない方ですが、生豆の種類によって1ハゼの温度が結構変化します。早いと190℃前半ですが、遅いと200℃近くで1ハゼが始まります。
フジローヤルの5kg窯は2kg投入の場合、174℃位で1ハゼが来ます。サンプルロースターのDiscoveryは火力が一目盛り違うだけで、1ハゼの温度が変化し、さらに同じ終了温度でも煎り上りの焙煎度合いが異なります。(バラバラ・・・)
上記は一例ですが、焙煎機の個体差、投入量、生豆のステータスでさらにこれらの偏差は拡大します。
なので何かが変わると温度表示が変わっちゃんですね。
またGiesen 6kg窯は旧モデルと現行モデルでは温度検知針の直径が違うので、同じ投入温度でも表示される中点(ボトム)の温度が異なります。現行モデルの場合はかなり低下します。100℃を維持することはまず無理です。仮に同じカロリーを与えることができたとしても、新旧で温度表示が違う訳ですね。(あうち)
ちなみにProbatの5kg窯だと余熱を強めれば110℃台のボトム(中点)を達成することができます。でも12kg窯は無理です。安全装置切ればいけるかもしれませんが、バーナーが溶ける危険があります(>_<)・・・・。
オールドプロバットとかのリビルト品に至っては、もはやどのような挙動を示すかは焼いてみないと本当にわからないです・・・。
・・・・もうハチャメチャですね(笑)。
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一般的に焙煎書籍やマニュアルには、1ハゼの想定温度や、各焙煎度合いにおける終了温度の記載があるかと思いますが、このようにメーカーや設計、投入量や焙煎におけるアプローチが異なると表示される温度が異なります。そして各社全く互換性がありません。
書籍の温度データをそのまま参考にすることができないんですね・・・( ゚Д゚)。
という訳で、こういった点からも焙煎という業務がコーヒー業界にとって重要でもあるに関わらず、きちんとした統一見解が生まれづらい状態になっています。ロースター各社はそれぞれ自前の焙煎理論と実証のみでしか、コーヒーの焙煎検証をするより他ないのが現状です。
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匂いも、色も、温度計もあてにならない・・・・
じゃあどうしたらいいの?(゚Д゚)ノ
ぐほ!!って感じですね。
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主観を排除する
すでにお話した様に、ある焙煎プロファイルを採用した場合、設計者と同じ目線で焼けているのかどうかはその設計者と一緒に焙煎したり、カップしなければきちんとした整合性がとれません。書籍やマニュアルをみて焙煎しても、指定された通りにできているのかどうかは残念ながら自分だけではわからない訳ですね。
焙煎する人には結構攻撃的な方もいて、「業界全体が焙煎のことをわかってない」とか「サードウエーブはそもそも焙煎になってない」とか「あそこはせっかくのスペシャルティーなのに深煎りにして無駄にしてる」とか「その焙煎操作は科学的に正しくない」とか・・・・。まあ生豆の営業をやっているとこんな話ばっかです。基本的に自家焙煎の方はみんな自分が一番だと思ってます(笑)。
まあその方がビジネスとしてはいいですけどね。自分のコーヒーに自信がある訳ですから。ただこれらの言い合いは全く無意味です。なぜならみんな主観で意見を言っている上に、評価軸が全くバラバラだからです。お互いが交わらない世界で言い争いしてもなんにもならんのですわ・・・・(意味なし芳一)。
という事でファナティックは誰にでも観測できる、焙煎における当たり前の事実を収集するために、まず余計な主観を排除することを決めました。
主観が残っているとそれが邪魔して客観的な事実を収集することができなくなるからです(バイアスがかかっちゃう)。それが以下のアプローチです。
- 良い悪いを決めない
- おすすめをしない
- ピンポイントを狙わずレンジを設定する
- 必ず2つ以上の検体を比較する
- 生豆が持っていないものは作り出せないことを認める
- いいとこ取りはできないことを知る
- ロースターが味のバランスを決める
- 結果が一番大事
まず①ですが、世の中にはいろんな考え方を思っているロースターさんがいます。たとえどんなに生焼けであろうと、コゲコゲであろうと、それ自体に良い悪いはありません。良し悪しを決めるのはロースター自身だからです。大切なのはそれらを排除するのではなくて、焙煎の結果を意図的に達成したのか?という点です。味のバランスや要素を網羅し、味づくりを“コントロール”できているか?という事が最も重要です。浅くて生焼けでも、深くてスパイシーでも意図して得られた結果には何の問題もありません。
んで②ですが、基本的にファナティックはおすすめの焙煎方法や焙煎度合いを提案しません。もちろん自分の好き嫌いはありますよ。でも上記の通り、人によって求めるコーヒー像や味わいが違います。好みが似ていればいいのでしょうが、そうでなかった時に平行線になってしまいます・・・。なので、おすすめの焙煎度合という尺度は持っていません。ファナティックにとって良いと思う焙煎はあくまで自分でやっているRoast Design Coffeeの範囲においてのみしか存在しないのです。そもそも世界大会に競技者側として参加していると、トレンドが毎年変化するので、様々な評価基準に合わせられるスタンダードを複数持ってないとやっていけない訳です・・・・。なので、こうしたらこうなるという“原因と結果”をお伝えするのが私の仕事です。
で、③ですね。まずピンポイントでベストの焙煎なんかを探求してはいけません。なぜなら自分の最高と思っているポイントはトレンド、体調、気分によって動いてしまうからです。そうではなく、コーヒーのプロとして、自分の商品として、提供可能なレンジを設定することがよっぽど大切です。例えば、“これ以上酸が強くなるとダメ・・・”とか“少しデベロップが進んでるけど、酸と質感のバランスは許容範囲だからOK・・・”といった品質基準の範囲です。発生するブレを意図的にコントロール下に置きます。もちろんスキルが上がっていけばこのレンジを狭めることは可能になります。しかしあくまでもレンジを保つことを忘れてはいけません。レンジがあると特定の焙煎の立ち位置が分かります。しかしピンポイントだと位置関係が分からなくなります。そうなるとAll or Nothingになってしまいます(博打になっちゃう・・・)。
④。よくファナティックは焼豆サンプルを渡されて、“どうですか?”と聞かれるのですが、返答にすごく苦労します。なぜなら答えようがないからです。逆に“どうしたいのですか?”とヒアリングを開始することになりますね(笑)。もし焙煎に困っていることがあっても、改善可能なのかはまず生豆の品質評価を行って(コーチ側のサンプル焙煎)、渡された焙煎豆と比較カップしてみないと何とも言えないのです。焼豆サンプルが単体だとプロファイル的位置付けが全く分からないからです。GPSと同じですね。他の計測地点がないと自分の位置が測定不能です。なので、焙煎でどこまで味のリバランスができるかは比較対象がないと検証できないのです。
そして⑤。あたりまえですけど、ないものは作り出せません。味を出さないようにすることは幾分かできますが(欠点とかダメージ、オフフレーバーを目立たなくさせる)、錬金術ではないので、「普通のグアテマラのカトゥーラ種を超絶焙煎テクでフローラルなゲイシャ感を出すぜ!!」・・・・なんてことはできません(/ω\)。
⑥。「酸が明確で強い甘さがあり、フレーバーはフルーツカクテル。質感はクリーミーで重厚なボディーを持ちクリーン。アフターはシルキーなフローラル感で明るく消えていく・・・・。」・・・・なんて少女漫画に出てくるような完璧な王子様コーヒーは存在しません(笑)。もちろん複数項目の印象が強いコーヒーはありますが、基本的にいいとこ取りはできません。酸が明確なコーヒーに甘さを付加していくと、酸の印象が弱まっていきます。シルキーなマウスフィールは質感が強すぎるとシロッピーになってエレガントさが失われます。個性があるという事は意外とアンバランスの上で成り立っているものです。どの要素を重視し強化するのか?それを“取捨選択”しないといけない訳です。
⑦。上記の通りいいとこ取りはできません。なので、与えられた素材の味のバランスを可能な範囲でリバランスすることになります。酸重視で軽やかにするのか、質感を強めてずっしりした感じにするのか、個性を強めるのか、弱めるのか・・・。ここら辺はロースターの考え方に依存されます。そしてそれこそが、ロースターがお客さんに提案する“うちのスタイル”ってやつです。
・・・⑧。焙煎を模索していると、ふとした時に自分がイメージしていたバランスを超える期待以上のコーヒーが焼けることがあります。例としてロースターさんが大胆なチャレンジをしていた時や、いつもの自分ではありえないようなプロファイルで焼いたときにポジティブな結果が出たとします。その時に最も重要なのはその結果そのものです。間違っても理論やいつもと理屈が違うからといって目の前の結果を否定してはいけません。歴史の長い業界なので、いろいろな価値観や焙煎方法がありますが、それにこだわりすぎるのは本末転倒です。理論というものはある結果を再現するための方便です。そしてその結果に至る方法は1つとは限りません(そこに至るプロファイルは複数存在する)。なので、ぜひ得た結果を大切にしてください。ターゲットの味のバランスが生み出せるのであればやり方は何だっていいのです。
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というような事を念頭にファナティックはクライアントのコーチングをしています。あくまでも主体はクライアント(焙煎者)です。焙煎者がどうしたいのかをヒアリングし、それに対し数種オプションを提示します。そしてクライアントの希望やイメージが達成可能かどうかを共に検証する手伝いをするわけです。(滅私奉公)
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ということで今回は焙煎をするにあたっての不確定要素とスタンスの話でした。
次回は誰にでもわかる、いわゆる当たり前の事実を収集した焙煎傾向等の話をしたいと思いますです!!
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ねえ?最強の恋愛テクって知ってる・・・・?
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それはね・・・・
“聞き役に徹する”ことだって♡
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わたしは貴女の録音機(言行録)♡♡♡になりたい・・・。(変態注意)