こんにちは!!

Tasse & Mokaファナティック三神です!

個人的にはそれほどカップに造詣が深い訳ではありませんが、いろいろ調べてみると、やっぱり素敵なカップが市場にはたくさんありますねぇ・・・。ヴィンテージとかは造詣もいいし、雰囲気たっぷりなんで、高額ではあるものの、ついつい欲しくなってきますね・・・・(*´▽`*)ハアハア。

今日はイタリアの磁器とイタリアの家庭で最も愛飲されているコーヒー抽出方法、Moka Pot(モカポット)について書いていきたいと思います。日本だと少しなじみがないですが、とっても面白い世界ですよ!!

それでは行ってみよー!!

イタリア磁器とTazzina

前回はフランスのDemitasseのお話で、カップそのものを表す言葉はTasse(タッセ)でしたね。はイタリアではTazza(タッツァ)というスペルになるのですが、このTasse/Tazzaは十字軍の時代にヨーロッパで使用されるようになったアラビア語の「Tassah」(タッサーク)という古代ガラスのカップが語源となっているようです。

ちなみに品評会のCup of Excellenceは中南米のスペイン語では「Taza de Excelencia」(ターサ・デ・エクセレンシア)と言いますです。

現在では主に磁器で作られることが多くなったTasse/Tazzaですが、イタリアでのテーブルウェア磁器メーカーとして有名なのは、やはりRichard Ginori(リチャルド・ジノリ)でしょう!

Richard Ginori

https://www.ginori1735.com

16世紀の後半には軟質磁器が、フィレンツェのメヂィチ家の工房で作成されていたとの記録がありますが、これ以降1720年代に入るまである程度の規模をもった磁器制作は行われていませんでした。

1735年創業のGinoriはイタリア最古参の磁器メーカーであり、Marquis Carlo Andrea Ginori(マルキス・カルロ・アンドレア・ジノリ)によって磁器の工房がフィレンツェ近郊のDuccia(ドッチャ)に設立されます。タイミングとしてはフランスのLimogeよりもやや早い段階で工房が始まったようですね。Limoge(リモージュ)とは対照的にイタリアのGinoriでは硬質磁器(Hard Paste Porcelain)が発達しました。

初期の頃は置物や小型の像の制作が見られますが、テーブルウェアの作成のウエイトが多くなるのは1770年代になってからのようです。今でこそシンプルな装飾ですが、当時は結構凝った意匠でデコラティブな磁器(もはやスカルプチャー・・・・)もたくさんあったみたいですね!こうした装飾磁器は軟質磁器の*Capodimonte(カポディモンテ)様式が有名です。

*Capodimonte:1743年から1759年にナポリに存在した軟質磁器の窯。華やかな装飾が施された花や人物の意匠を特徴とする磁器様式

Capodimonteの置物

(画像引用)Harlequin and Columbine, c. 1745

https://en.wikipedia.org/wiki/Capodimonte_porcelain

(参考)Espresso cup, Italian “tazzina”: history, characteristics and curiosities

https://caffemorandini.it/en/news/espresso-cup-italian-tazzina-history-characteristics-and-curiosities

(参考)Italian Porcelain in the Eighteenth Century

https://www.metmuseum.org/ja/essays/italian-porcelain-in-the-eighteenth-century

(参考)OUR HISTORY

https://www.ginori1735.com/it/en/history

(参考)At its Florentine factory, Ginori 1735 still casts a spell

https://www.ft.com/content/b05012c1-47a2-4927-8735-c8b4d067278b?utm_source=chatgpt.com

18世紀ごろになるとヨーロッパではカップとソーサーの組み合わせが定番になってくるのですが、当時はカップの中のコーヒーや紅茶を一旦ソーサーに移して「冷まして」から飲む様式が一般的でした。しかし年を経るにつれてこういった飲み方は「行儀が悪い」ということで、現在の様にカップから直接飲料を飲むようになります。・・・そもそもソーサーからは飲みづらいですしね・・・・。

さらに年月経過し、19世紀末に入るとイタリアではTazzina(タッツィーナ:~inaはイタリア語では「小さい」という意味がある)という小さいカップが誕生します。このカップはRichard-Ginori Ceramic Society(リチャルド・ジノリ陶器協会)のディレクターであったLuigi Tazzini(ルイジ・タッツィーニ)によって発明され、これが以降のエスプレッソカップの定番様式となります。1900年のパリ万博を訪れたLuigi Tazziniはアールヌーボーに触れ、この様式をDocciaの工房に持ち帰って芸術性の高い磁器を多く生み出しました。

Tazzina(1875~1899), Richard Ginori, 5.8 cm x Ø 6 cm

(画像引用)LombardiaBeniCulturali

https://www.lombardiabeniculturali.it/opere-arte/schede/x8020-00215

Luigi Tazziniは1896~1923年のまでの間、同社のアートディレクターを務めたのですが、彼の革新性は1902年のトリノ国際博覧会で発揮されることになり、カップボウルに取手が付けられる形で具現化しました(それまでのボウルには蓋があったものの、取手は付いているものは一般的でなかった・・・・本当にお茶椀みたいだね)。こうした取手付きカップは様々なサイズで作られたのですが、市場に流通し始めるとミラノ市民によってサイズ別に以下のように名称化されていきました。

  • Tazzinin per il caffè:                   コーヒー用カップ
  • Tazzin per il vino:                        ワイン用カップ
  • Tazzinetta per il caffèlatte:       カフェラテ/ミルクコーヒー用カップ
  • Tazzina per la pasta e fagioli:    パスタ/豆用カップ

・・・・・・我々日本人からすると、小さいカップのパスタや豆への用途がよくわかりませんが、このTazzinaカップがエスプレッソカップとして使用されるようになったみたいですね。

今日のコーヒー業界では、エスプレッソカップの事をDemitasse(デミタス)と呼ぶことが多いのですが、正当なイタリア流にのっとるのであれば、Tazzinaこそが真のエスプレッソカップと言えるでしょう。

なおスペシャルティシーンでのイタリアンメイドはANCAPやIPAが有名ですね。

【ちょっと前のスペシャルティ定番コーヒー磁器】

ANCAPやIPAのカップ様式を見ると、「そうそう、2000~2010年代はこんな感じだったよねー」と感じる方も多いかもしれませんね!

ANCAPはWorld Latte Art Championshipの公式カップになったこともあるし、結構多くのバリスタやカフェで使用されていた記憶があります。これ以降はLOVERAMICS(香港)、とかORIGAMI(日本)などが登場してきましたね。

ANCAP Torino 170ml

(画像引用)FBC International

https://fbc-intl.co.jp/item/3300-05041_2310

カラフルな色遣いのLoveramics

(画像引用)WLAC 2023 Competition Cups Set (Taipei)

https://www.loveramics.com/products/wlac2023-competition-set

(参考)Italy: Tazzina isn’t just an espresso cup- it is named after Luigi Tazzini

https://earthstoriez.com/italy-the-tazzina-isnt-just-an-espresso-cup-luigi-tazzini-designed-it#luigi-tazzini-and-his-tazzinin-with-handle

Moka Pot

すでに前章でお話した通り、ヨーロッパにおけるコーヒーの飲み方は「少量」で「濃い」のが基本ですが、そのルーツはTurkish Coffeeにあります。イタリアでもこうした濃いコーヒーが家庭で飲まれているのですが、その代表例が*Moka Potです。

今回色々調べたところ、イタリアと北欧を除くヨーロッパではあんまり家庭でコーヒーを手点てしないみたいですね。どうもカプセル式や家庭用全自動エスプレッソマシンが多いようです。さらに街にカフェが多いので、基本は外で飲んだりするんでしょうけど、イタリアの場合は家庭でMoka Potを使って飲むことが一般化しています。

*Moka Pot:サイフォンの原理を利用した家庭用コーヒーメーカー。Moka Express(モカ・エクスプレス)、Stove Top(ストーブ・トップ)、Machinetta(マキネッタ)とも。

Moka Expressは1933年にAlfonso Bialetti(アルフォンソ・ビアレッティ)によって発明されます。フランスのアルミ工房で10年間働いていた彼はその経験を活かし、ピエモンテ州、Crusinallo(クルジナッロ)の地で工房を開くのですが、ここで家庭用アルミ製品の制作にいそしみます。ある日彼の妻が洗濯をしているとき、蓋にチューブが付いた液体洗剤(石鹸)の容器が目に留まります。妻はその容器を加熱することで洗剤を沸かし、洗剤はチューブを伝って衣服の上に散布されていました。その様子を見ていたAlfonsoはこのサイフォンの原理に着目し、Moka Expressの着想を得ます。

(画像引用)Our History, Bialetti

https://www.bialetti.com/it_en/la-storia

Alfonso Bialettiが開発したアルミ製のMoka Expressは八角形の形状を持ち、①(下部)水チャンバー②(中部)コーヒーバスケット③(上部)抽出液チャンバー、の3つのセクションから成り立っていました。抽出においては、まず下部チャンバーに水を入れ、コーヒーの粉が入ったバスケットをセットし、最後に上部チャンバーを下部チャンバーにねじ止めして直火又はストーブにかけます。

沸騰した水は蒸気圧で上昇し、コーヒーが入ったフィルターを通過した後、上部のチャンバーに抽出液が運ばれる仕組みです。これで濃縮されたコーヒーを作ることができる訳ですね。

このBialetti製Moka Expressは現在ではイタリアの90%に及ぶ家庭に置いてあり、のべ3億台以上(!!)が販売されたようです。・・・・まさにイタリアの家庭にとってなくてはならない抽出器具になりました。

おじさんのマークがおなじみのBialetti, Moka Express

Moka Express, Bialetti

https://www.bialetti.com/it_en/moka-express.html

なお「Moka Express」はBialetti社の商標登録になっているため、こういったマキネッタの類は「Moka Pot」と呼ばれています。宅急便と宅配便の違いみたいなもんですね(笑)。

Moka Potは様々なサイズがあるのですが、その一杯用の抽出レシピは粉量およそ7gに対して水が60ccと、やはりTurkish Coffeeの抽出比率とほぼ同じです。ただ粉の挽目はあまり細かいと蒸気圧を使っても水が透過できなくなってしまうので、粉の挽目はターキッシュやエスプレッソより粗めになります。あ、あとこれは意外とやりがちなのですが、タンピングは禁止なので宜しくお願いいたします(*´ω`*)コーヒーガデテコナクナルヨ。

なお、このMoka Pot系のコーヒーメーカーは「直火式エスプレッソメーカー」と解説されることが多いですが、実はそれって不正確なんです・・・。ポンプを使用して9気圧で、25秒程度で抽出するのが「Espresso」であり、Moka Pot系のコーヒーは「Moka」と呼称します。実際Moka Potの抽出圧は2bar(2気圧)程度までしか上がらないので、こういった観点からも、いわゆるエスプレッソとは別物なんですよねー。

(参考)The History of the Moka Pot

https://sundaybaker.co/the-history-of-the-moka-pot/

ハイエンド系Moka Pot

このようにBialettiのMoka Expressは一つの定番として確固たる地位を占めるようになったのですが、近代のコーヒー機器の革新に触発(おそらく・・・)される形で、高性能なモデルもリリースされてきました。

(画像引用)Espresso Brewing Lab

https://www.eb-lab.coffee/moka/classic-moka-pot

Espresso Brewing Lab社(E&B)のMoka Potはステンレスメイドで黒いサンドブラスト塗装が施されており、各部に品質の高い部材が用いられています。また最大の特徴ともいえる「Competition Filter」を搭載しているため、コーヒー・ベッドを崩さずに均一に水を接触させることができ、抽出効率と一貫性を高めることが可能です。

(画像引用)COMPETITION MOKA FILTER

https://www.eb-lab.coffee/moka/competition-moka-filter

この精密フィルターは従来の0.8mmの穴ではなく0.2mm径を採用しており、小さな水流を保つことで高圧の水流がコーヒー・ベッドを侵食することを防ぎます。また目が細かいため、抽出後の液体に混入しがちな微粉を低減してクリーンなコーヒーに仕上げます(VSTフィルター似たような印象がありますね)。結果として苦味が少なくなり良好な酸味が感じられるとのことです。

加熱に際してはガスコンロの直火やストーブ等のプレートなどが基本になりますが、IHヒーターに対応しているモデルもあり、汎用性がありますね。BialettiでもIHヒーター用モデルがありますが、両社ともコンセントに差して自立加熱するタイプは販売して無いみたいです(加熱はビームヒーターでも行けそうな感じはあるな・・・(´・ω・))。

・・・・・・それではせっかくなので、Moka Potのレシピを紹介したいと思います!!

E&B Moka Pot3分クッキング♡

それではここで恒例のレシピの紹介です!!Barista Magazin Onlineの2022年6月24日の記事にE&Bの3杯用のMoka Potを使用したレシピがのってましたので、こちらに最近よく行われる抽出オプションを追加して整理してみました!

Recipe: E&B Moka Pot 3cup/150ml

【概要】

・・・・豆はコスタリカのVolcan Azulですか・・・(*´ω`*)。なかなかの銘柄を使用していますね。ファナティックはCOEのカッピングサンプル以外でVolcan Azul飲んだことないですが、この農園はWest/Central Valleyのエステート・プロジェクトでCOEに良く上位入賞しています!

【抽出手順】

  1. 17gのコーヒーの粉を挽き、バスケットに入れる
    1. Aeropress用のペーパーなどを底に敷くなどの小技もあり(この場合、水の浸透がゆっくりになるのかな?)
  2. 粉のDistribution(分配)を整えて均す。場合によってはCombなどのWDTツールを使用してClump(ダマ)を崩す
    1. (注!)間違ってもタンピングしないように(; ・`д・´)
  3. Competition Fitlerを上部チャンバーに装着し、パッキンで留める
    1. このステンレスフィルターにもペーパーを被せることができる。(この場合、微粉が液体に入らないのでよりクリーンになるね)
  4. 下部チャンバーに沸騰したお湯を水位線まで入れる(約150ml)
    1. 冷水を入れると沸騰に時間がかかり、本体の熱がコーヒーを焼いてしまう
  5. 下部チャンバーにバスケットを装着し、上部チャンバーでねじ止めする
  6. コンロ、又はストーブのプレートで加熱する
    1. 上部チャンバーの蓋を開けて、状況を見ながら加熱
  7. 上部チャンバーにコーヒーが流れてきたら火を止める
    1. 早めに火を止めることで過剰な加熱を防ぐ
  8. 約2分半で抽出完了

【カップクオリティ】

The end result is a cup more similar to a filter coffee than a traditional coffee brewed with the Moka—a sweet coffee that shines with bright acidity.

カップは伝統的なモカポットよりかはフィルターコーヒーの味わいに近い。明るい酸が光る甘いコーヒー。

・・・・・・

なるほど・・・

17gに対して150ml(g)なので、CBRは約1:9ですね。1杯取り換算の7gで想定すると約63gの水量になります。構造上、下部の水は全て上部に移動することはできないので、実際は7gあたり60gくらいの水量に近づくかもしれませんね。・・・まあ、レシオはこんなもんでしょうか?

全体として見るとそれほど難しい箇所は無いので、すんなり行けると思いますが、やはりポイントは「タンピング禁止」だと思います。エスプレッソなんかに慣れているとついついタンピングして粉を固めてしまいますが、そうすると抽出液が出てこなくなっちゃうので、要注意です!!

味わいはフィルターコーヒー(つまりはドリップコーヒー)に近いんですね。これは穴の小さいCompetition Filterのおかげでしょうね!

Barisat Magazineのレシピでは使っていませんが、最近は紙フィルターを間に入れる人が増えているようですね。Homebarista.comやRedditなどでも議論されていますが、おおむね好評のようです。

ここにペーパーを敷くのである

(画像引用)This Hack Changed the Way I Make Moka Pot Coffee

https://www.americastestkitchen.com/articles/7146-how-to-make-better-moka-pot-coffee

この方法での抽出時間は2分半なので、バッチシ3分クッキングに相成りました(≧◇≦)ヤッタア!!

ぽこぽこ・・・・

(画像引用&参考)Test Drive: E&B Moka Pot

https://www.baristamagazine.com/test-drive-eb-moka-pot/#:~:text=The%20First%20Moka%20Pot%20Brew,into%20the%20funnel%20without%20pressing.

・・・・・・

ふと思ったんですが、これってWBrCとかのブリューの大会でも使用できるんじゃないかな?ビームヒーターのサイフォンで出場した人もいますし、ルール上加水もできるしね。やってみたら意外とおもしろいかもー!!

・・・・・・

と言うところのTazzinaとMoka Potでした!!

次回は超山場のエスプレッソマシンについてですな!!!

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

吹きこぼれろ!!

私の想い!!!

心のTazzinaをナミナミに満たすのだぁぁぁぁあああああああ!!!!

ふぁなてぃっく・えくすぷれす!!!

・・・・・・

ぷしゅぅ(‘Д’)