こんにちはBullish Fanatic三神ですー。
(強気相場をBull:ブルと言う・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル)
メルマガではこういったマクロ経済やお金の生々しい話をしているのですが、今回の相場高騰はコーヒー関係者にとってかなり重要な事なのでブログに書いてみました♡
Coffee Fanatic三神の超Deepな・・・コーヒーワールド
ご存じの方は結構いらっしゃるかと思いますが、最近ブラジルで結構な規模の降霜があり、これによってNY相場価格が暴騰しています。ある輸出業者によると500~1,500万袋位の減産と言う報告でした。特にコーヒー生産の要である南ミナスでの被害が甚大です。
今年の収穫は終わっているので、21/22クロップの量は大丈夫なのですが、その次の年の22/23クロップの収穫量に影響が出ます。なので、減産するのは来年です。
ニューヨークのコーヒー先物市場を見てみると、2年位前は1ポンド当たり100セントくらいだったのが、コロナの影響によるインフレ加速(アメリカの現金支給政策)で140セント台に乗り、今回の降霜で200セントを超えました・・・・。
いやー。これ数年前の2倍の価格ですよ(/ω\)
怖いですねー相場物(コモディティ)は・・・・。
でも農産物だからこういうのは仕方がないですね。
減産による暴騰、暴落は何となく周期的に来るのですが、歴史的に見てみるとブラジルの降霜はいつも大きな影響を与えます。だから業界的にはブラジルの降霜=相場価格高騰です。
直近の2008年以降の暴騰はコロンビアの植え替えによる減産だったり、中米のさび病にブラジルの裏作がかかるのが原因だったりしたのですが、久しぶりにブラジルの降霜で大幅に上昇しましたね。
こうやって見てみるといかにも商品先物は不安定で怖い物の様に思えますが、どっこい、実は生産者達にも消費者達に対しても、価格と在庫を安定させるための超重要機能を担っているのです。
今日はそこら辺のところを書いていきたいと思いますです。
*注)コーヒーの生産国内流通は国によってかなり異なります。一応中南米に寄せた取引形態を上げていますが、結構複雑なので全ての国をひとくくりに論ずることができません。参考程度に読んでください(/・ω・)/
【目次】
- 商品先物市場の機能
- 生産者の生活を圧迫しているのは消費国??
- 石油に似ている?
- フェアトレードとリビングインカム
- コーヒーの取引形態:ディファレンシャルとアウトライト
- 今回の霜害はどのように影響するの?(価格上昇の連鎖)
- 噂で買って事実で売る
- コンビニコーヒーと〇ックのコーヒー・・・・
- まとめ
商品先物市場の機能
最近スペシャルティコーヒー等の“ダイレクトトレード”で印象がゆがめられていますが、商品先物市場(相場)と言うものは悪ではありません。むしろ価格と在庫の大幅な変化による衝撃を和らげる大切な緩衝材の役目を果たしています。
農作物はその年の出来、不出来によって作柄や収穫量が変動します。しかし農家もロースターも生活しているので、毎年ある程度の価格と数量はお互いに決めておきたいというのが一般的な心理としてあります。そのためには収穫前から将来の受け渡しにおける、販売価格と数量をあらかじめ決める売買契約をする必要があります。いわゆる先物契約ですね。こうした契約を結んでおけば、農家も将来の売り上げが確定されるので、作る量を前もって決められるし、ロースターは必要な時に必要分の在庫を確保できるのです。
しかし、未来は不確定なので、契約後に豊作で価格が下がったり、反対に不作で価格が下がったりする可能性もあります。そうした不確定要素を低減するために商品先物市場で発明された画期的な機能があります。
それがヘッジ(Hedge)です。
簡単に言うと、売り手/買い手共に、将来受け渡しの契約を行っているコーヒーに対して発生しうる“利益を放棄”、または“損失を補填”することによって、契約時の価格に対する利益を安定化させます。いわゆる保険のようなものですね。
こういった相殺は“反対売買”でヘッジすることによって行います。
(ここで反対売買の仕組みを話すと、超長くなっちゃうので(え?もうすでに長い?)、下記にリンク張っときます・・・。)
商品先物市場は日本では最初、大阪で興りましたが、こうした仕組みが発明されたことにより、売り手も買い手も安心して先物契約ができるようになりました。
“商品先物”と言うと、投機的なイメージが強いですが、実際の市場参加者はほとんどがHedger(ヘッジャー)と言われる、反対売買を使用して保険を掛けている生産国輸出業者と消費国輸入業者(商社)です。
例えば、アメリカのだとこういったコモディティ(商品)を扱う商社はヘッジを行わないと経営責任を問われることがあります。砂糖、小麦、コーヒー等生活必需品に関わる輸入でヘッジを行わずに取引を行うと、例えば大きな損失を出して商社が倒産した場合、国内の供給が寸断されて大変な事態になるからです。
という事で商品先物相場はサプライチェーンの金融インフラの一つでもあり、絶対に必要な保険機能を果たしている訳ですね。
生産者の生活を圧迫しているのは消費国??
スペシャルティコーヒーのロースターのHPをのぞくと、大手のロースターが生産者を買い叩いているように書かれていることがあったりします。
多国籍企業やグローバリズムによる弊害を研究した書籍も多いです。
19世紀後半以降アメリカでの消費増を背景に、特にブラジルが生産量をかなり伸ばしました。量がはけるので、作ったら作るだけ儲かる訳ですね。これによりコーヒーは高級嗜好品から一転してコモディティ化の度合いを強め、価格は降下の一途をたどりました(1920年代のブラジルの世界シェア80%・・・・)。
たまにブラジルの降霜があって200セントを超えることも周期的にありましたが、基本的には低価格化していったのです。
・・・・・
果たしてこれは消費国のせいで低価格していき、生産者を貧困の底に叩き落としたのでしょうか?
いえいえ・・・・これは需要と供給の問題ですね。
例えば昔(大航海時代?)では胡椒が同じ重量の金と同一の価値があった時代がありましたが、いまは胡椒は金と同じ価格ではありません。かなり安いものになっており、基本ラーメン屋ではかけ放題です(笑)。
昔は重要に対して供給が全く追いついてなかったので、こうした価格になっていましたが、現代では供給量が多く安定しているので、当然ですが、胡椒は安いです。
・・・・・
こうした価格の変遷は悪なのでしょうか?消費国は今でも胡椒の生産者のために、胡椒一粒を金と同じ価格で買うべきなのでしょうか?
・・・・・
んな訳ないですよね( ゚Д゚)。
一般消費者の家庭を考えてみたいと思いますが、例えば近くにAとBのスーパーがあって、キュウリを売っていたとします。
- Aのスーパーは一本100円
- Bのスーパーは一本50円
さあ、皆さんはどっちのキュウリを買いますか?ちなみにどちらのキュウリも同じ品質で同じ生産地域の物です。
・・・・・
当然Bの方を買いますよね?
如何にキュウリといえども、一般家計はそんなに懐が広くありません。日々の食料品ではできるだけ食費を抑えるべく、皆様は工夫しているはずです。
企業も同じく、品質が担保できるのであれば、仕入れの価格は安い方がいいし、そうした原料を調達して利益幅を拡大するのは企業努力と言うものです。
なので、安いものを買うこと自体は悪いことではありません。
私も商社にいましたが、生豆の供給側からすると、むしろトンデモない低価格をロースターに提示する競合他社の他商社に怒りの矛先が向かいます。低価格に合わせていこうとすると、結果的に皆がジリ貧になっていくからですね。
ロースターはお客様ですから、お客様に対して「安い生豆を買わないでくれ」なんて普通言いませんよね。もちろん非合法な物だったら問題(それでも買う側より供給する側に非がある)ですが、「安いコーヒーを買うロースターはモラルが無い」という風に言うでしょうか?
そんなの絶対おかしいですよね(;・∀・)?
という事で、コーヒーの低価格要因はどちらかと言うと、供給側である生産国側、特にブラジルによるものが大きいと言えるでしょう(他国の生産増もあるが、ブラジルの生産量がずっと増えていってる)。
ベトナムなんかも低価格で苦しんでいるとか言う人がいます。確かにそうなのでしょうが、そもそも国の政策として、安い為替を背景に低価格路線でバカスカとロブスタの生産量を増やして(世界生産量第2位)稼いでいたので、なんだかおかしな話です。
石油に似ている?
世界のコーヒーの総生産はおよそ1.7憶袋(1袋60kg換算)に上りますが、ブラジルは毎年およそ6000万袋の生産量を誇り、実に1/3以上を賄っています。
ブラジルは国土が広大で起伏が大きくなく、平坦な農地を取りやすい国です。こうした農地では人手を掛けないで、機械収穫期を使用することでき、また雨期、乾期が割とはっきりしているので、効率的な乾燥を行いやすくなっています。
生産処理設備も機械化およびシステム化されているので、効率的で低コストな生産設備を整えていると言えます。
またブラジルはBRICSに数えられたことがあるように、近年の経済成長が目覚ましいです。普通こうした国だと、国内の物価が上昇し、人件費が上がり、為替(レアル)がドルに対して強くなっていくのですが、殊に為替に関してはほとんどNYコーヒーの相場価格に影響を与えていません。
国内の生産努力により、機械化を進め、生産量を低コストで増やすことによって、収益を上げてきたことが伺えます。
ただ裏を返すとブラジルが生産量を減らせば、相場価格は上がって行きます。現に今ブラジルの降霜で相場価格が暴騰している訳ですが、こうした図式は別のコモディティである石油価格の値動きに似たものがあります。
石油を最も生産しているのはサウジアラビアですが、ここ数年で新たな興隆があったのはアメリカのシェールオイル革命でした。
以前からも、アメリカも石油を生産(West Texas Intermediate:WTI)していましたが、シェールオイル技術の発達により、供給量が増えて価格が下がり、いきなり生産国上位に踊りでました。
中国の成長が一服して価格が下がってきていたところに増産されたので、石油価格はさらに下がりました。
事態を重く見たサウジアラビアはアメリカの石油産業をつぶすために、増産を決定しました。アメリカの採掘コストはアラブ諸国に比べるとまだ高かったため、価格をどんどん下げることによってアメリカの採掘企業を倒産させる狙いがあったのです。
しかし、アメリカは企業努力により、シェールオイルの技術を発達させ、更なる低コストを実現させ、生きながらえました。
・・・・・・
ここでとばっちりを受けたのが南米のベネズエラでした。
ベネズエラも産油国(なんと埋蔵量世界一!!)ですが、通常より質の劣る原料のため精製コストが高い国です。石油の価格がどんどん下がることにより、ベネズエラの需要はなくなってき、最終的にはあれだけ裕福だった国がデフォルトに陥り、地獄のような国になりました(まあ、実際は石油価格よりも国内の悪政とアメリカとの関係が悪くなったのが原因なんですけどね)。
各産油国はあまりにも下がりすぎた石油価格を上げるために、協調減産に合意しましたが、直前に経済制裁を解除されたイランが増産していて、また各国が減産しても最大の産油国であるサウジアラビアの優位性が変わらない事もあったため、なかなか足並みがそろいませんでした。
コーヒーでも確かかなり昔にICO(International Coffee Organization)加盟国で各国の生産量を調整する提案があったと大先輩から聞いたことがあったような気がしますが、結局実施に至っていません。
上記の石油を見てみると、消費国側と言うより、どちらかと言うと生産国側での覇権争いによって自分たちの首を絞めているようにみえますね。
買う側は当然安いものを買います。それは自然です。供給過剰が問題の場合は生産国側に課題が多くあるという点であるかもしれません。
逆に供給が不足していると、今度は消費国などで買占めや転売等が横行し(ファンドの参入もあるし)、不当に高い価格が形成されることもありますね。
フェアトレードとリビングインカム
Fair Trade
平地が広くとれるブラジルは機械化の導入で生産コストを抑えられますが、中南米やアフリカの山間に生産国がある国はどうでしょうか?
ブラジルをのぞくと、一般的にコーヒーは山間や谷の斜面に植えられています。こういうところは機械で収穫することはできず、基本的に人の手によって一粒ずつ収穫されています。いわゆる“ハンドピック”ですね。
収穫して満杯になったチェリーの袋は、急斜面ゆえ車両などでふもとに運搬することができないので、人力で運ぶ必要があります。アフリカなんかだと、一番近い水洗所まで人力で運ぶ姿を良くみますね。ホンジュラスとかでも45~70kg近くの穀物袋を肩に担いで斜面を下りるのですが、とんでもない重労働です。そして危険です。今の日本人には到底無理な労働負荷ですね・・・。
こうした国々は国内の経済が上がって人件費のコストが上がってしまうと、収穫、運搬などでコストを削減することができません。
相場価格が下がっていくと、固定コストを侵食してしまうことがあるので、児童労働や非合法な労働環境の発生率が高くなっていきます。
こうした負の連鎖を食い止める取り組みの一つがフェアトレードです。コロンビアの場合、認証が取得できれば、1ポンドあたり140セントが最低価格保証となり、さらに+20セントのプレミアムが付加されて計160セントとなります。NY相場価格が140セント以上の場合は、相場価格+20セントのプレミアムのみが加算されるようになっています。
生産者の生活維持においては一定の効果のある“公正取引”ですが、実際にこの認証を受けるにはペーパーワークやレギュレーションの順守など多くの手間や負担が農家にかかります。特に小規模農家だと実行できないので、結局周辺の農協や、企業でない限り認証の取得が困難であるといった側面もあります。
という事で相場価格の下落はブラジル以外の生産国にとって、より負荷が高いという現状が見て取れますね。
相場価格が低迷すると、ブラジルの場合はオレンジなどへ転作することがありますが、中南米では麻薬作物に転作してしまうケースが多いです。
エチオピアなどでも、“カート”といった麻薬作物はコーヒーより高値で取引されるため、コーヒー価格の地合いが悪くなると生産各国は、より一層悲惨な社会へ進んで行ってしまうリスクが高くなってしまいます。
Verified Living Income(VLI)
最近メルマガなどでも発信しましたが、コロンビアの小規模生産者を対象としたリサーチが発表され、こういった生産者が最低限生きていけるだけの収入を得るためには1ポンド当たり189セントが必要であると算出されました(フェアトレードの最低保証160セントでは結局足りなていないことが判明)。この価格は農家持ち出し価格=Farm Gateでの価格で、実際の輸出販売における甲板渡し価格=FOB価格にした場合は1ポンド当たり224セントになるとの事でした(ん?という事は輸出業者のマージンは35セント?)。
Bellwether, Sustainable Harvest and Heifer Unveil Verified Living Income Model
コロンビアの小規模生産者は2,3ヘクタール位の農地を持っているケースが多いので、この面積で栽培できるコーヒーの量に対して最低1ポンド189セントであれば1年間生活できる収入が得られるという推測ができます。
現在(7月末時点)相場価格は200セントになっているため、ここに後24セント加算できればFOB224セントになるので、スペシャルティのスペックでなくてもコマーシャルグレードで生活が成り立つことになります。コロンビアの通常のディファレンシャルだとNY相場価格+20セント位は余裕でしょうね。
・・・・・・・
という事で今生産者達は大変うれしいはずです。
ウハウハ(;・∀・)(?)
コーヒーの取引形態:ディファレンシャルとアウトライト
コーヒーの取引には2つの形態があり、それぞれDifferential(ディファレンシャル)とOutright(アウトライト)と呼ばれています。
Differential
ディファレンシャルは“値差”を表し、相場価格に対してある一定の値差を提示して価格形成する取引形態です。この取引は多くの場合ニューヨーク市場のIntercontinental Exchange(ICE)でのヘッジ:反対売買を伴います。
アラビカコーヒーの価格はニューヨークの市場が基準になっており、ここでの価格は主にブラジルNO.4/5のグレードに近しい(このグレードがアラビカで最も安いコーヒーであるため)価格形成がなされます。
いくら何でもここで形成された価格と同じ価格で生産国は販売することはできません。なぜならコーヒーには様々なグレードスペックもあるし、加算する利益、かかるコストや国の経済も違うからです。
ただ相場価格を全く無視すると、マーケットからどれくらい乖離しているのかが分からず、値付けの根拠もあいまいな物なってしまうので、この価格から“+~セント”と言う形でNYの相場価格からの値差を顕すことで価格を提示しています。
例えば現在の直近の限月(受け渡し月)は9月限となり、前日(7/29)の終値は201.8セントでした。価格提示条件がSEP+DIF30Cと言った場合は201.8+30=231.8セントとなります。
一例をあげてみたいと思います。
NY相場価格が1ポンド当たり120セント相当だった場合、ある生豆商社からの見積もりが以下の物だったとします(あくまでも一例ですよ!!価格は結構適当・・・・こんな感じ?(・ω・)ノ)
【NY相場価格=C120】
- ブラジルNO.4/5 C136 (+16)
- ブラジルNO.2 C145 (+25)
- コロンビアExcelso C181 (+61)
- コロンビアSupremo C190 (+70)
- グアテマラSHB C190 (+70)
- ホンジュラスHG C154 (+34)
- エチオピア Sidamo G4 C165 (+45)
- ケニアAA FAQ C 453 (+333)
上記の場合、()の中が値差=Differentialになります。
こういう風に基準のNYの相場価格に“+いくら”と言う形で価格が表示できます。
基本的に輸入者が買いに入る場合は生産国輸出業者からオファーをもらって価格を提示してもらいます。この時にNY+~という提示方式になります。
・・・・・・・
再度上記で述べたリビングインカムの話に戻りますが、このようにNY価格にディファレンシャルを上乗せすれば物理的にはFOB 224セントも達成する事もできます。ただこれは輸出業者が輸入者に対して価格提示する場合です。
コマーシャルグレードの販売では、自家精製設備(ウエットミル)を持っていない生産者は農協や輸出業者などと契約販売を行うか、もしくはチェリー集積場などに収穫したチェリーを持ち込んで現物販売します。
チェリーの販売はNY相場に連動した買い取り価格が提示されるため、生産者の言い値で販売することはできません。ざっくりいうとコロンビアの場合は、この時点での買い取り価格が189セント(VLI)以上でないと小規模生産者の生活が成り立たないということですね。しかし通常の相場感だとこの189セントはやはり、今回みたいにNY価格が高騰していないと実現不能だと思います。
生産者が言い値で販売するためにはこの後で説明する、アウトライト取引を行うために輸出業者に販売を委託する必要が出てきます。しかし余り実態に乖離した値付けをすると、輸出業者から難色を示されるので、実は価格決定に自由度がそれほどなかったりします。
コマーシャルグレードの場合は基本、味関係ない(品質相当のダメージがなければ)ので、価格勝負になりますね。ワタル時代でも各大手商社の見積もりをみて、一番安く提示しているところから購入していました。まあ、同じ商品だったら、安い方を買うのは当然というか当たり前ですね。
買う方は安値に流れるので、売る方の供給サイドは如何に競合より安くできるかが勝負でもあります。なので、こういった図式は上記の石油限らず、コモディティビジネスでは自然の成り行きでもあります。
Outright
商品先物市場での反対売買(ヘッジ)や特定のオプションを付加しない取引形態をアウトライトと言います。
NY相場の価格とは基本的に関係なく、あくまでも生産サイドがコストや利益、付加価値を勘案して価格を形成し提示します。この場合は輸出業者に販売を委託する形になります。ディファレンシャルと異なり“一応”NY相場に連動しません。
スペシャルティグレードの取引、ダイレクトトレードの類はこの取引形態が主流になります。(ロットサイズが大きく、比較的低位のスペシャルティグレードはディファレンシャル取引にもなりうる)。
NY相場価格には連動しないのですが、例えば300セントでスペシャルティグレードを売っていて、その価格で十分元がとれているとしても、もし相場が暴騰して同じ300セントになった場合、当然それ以上の付加価値分の利益を得ようとする動きがでるので、実は潜在的にNY相場に連動しています。
アウトライトで契約すると、反対売買を掛けていないので、NY相場価格が下がると割高な商品になり、相場が上がると割安な商品に属性が変わります。せっかくスペシャルティグレードを作っても今回の様にNY価格が暴騰していると、手間をかけていないコマーシャルグレードがまあまあいい値段で、それもかなり早い換金速度で売れてしまうので割に合わなくなります(スペシャルティの場合はロットが売れてから換金サイクルが始まる)。
こうした場合、生産者は農協や輸出業者との契約を破棄して、そこら辺のコレクターとかにチェリーやパーチメントを売ってしまうことがあります。いわゆるノンデリ(Non-delivery:契約不履行)ってやつですね。
一度契約をチョンボすると、二度と農協とか輸出業者に契約販売できなくなるので、国の機関や農協は契約の大切さとそれが如何に将来にわたって生産者の生活の安定に繋がるかをすごく一生懸命説明しています。
契約を破棄して正規のコーヒー取引のサイクルから外れると、通常の取引ができなくなるのでアングラな麻薬組織とかの言いなりになってしまうことがあります。一度麻薬組織に関係ができてしまうとそこから逃げられなくなるので、目先の好条件に安易に身を任せてはいけないのです。
消費国では、コーヒーの仕組みを良く知らないロースターさんなんかが、安易に契約キャンセルしたいという方がいたりしますが、本当にトンデモないです。予約じゃないですからね!“契約”ですからね!(-_-メ)
例えば株を買った後で株価が下がったから、無しにしてくださいと言っているのと同じことですよ(そんなことできる訳ないでしょ・・・(-_-メ))。
アウトライトの場合はこのように相場変動の値動きを緩衝することができないので、実は意外とリスクのある取引形態でもあります。スペシャルティの場合は売れてから換金サイクルが始まるので、利益は高いにもかかわらず、キャッシュフローが回りづらいのが難点です。
下手にコストを掛けて高額なコーヒーを作っても売れなければ、最悪その場のNY価格+DIF(ディファレンシャル)の当該輸出規格のスペック(つまりコマーシャルグレード)で叩き売って損切するしかありません。
無計画に高いゲイシャとか植えて、肥料いっぱい撒いて、嫌気発酵とかして、売れなくてコマーシャルの値段で損切・・・・
考えるだけでまぢ恐ろしい悪夢ですな!!!(;゚Д゚)
アメリカや日本でもそうですが、農業は基本的に国がかなりの資金を投じてバックアップ(補助)するものなので、生産国もスペシャルティコーヒーの生産に取り組むには政府、銀行、農協、等の生産国コミュニティーやお金のインフラが整っていないと実現不可能だったりします。
アフリカの小国のブルンジの場合、そもそも国土が狭くてコモディティコーヒーを売っても、儲けられるだけの生産量を賄えないところは、国の政策としてスペシャルティの生産に力を入れざるを得なかったりすることもありますね。
今回の霜害はどのように影響するの?(価格上昇の連鎖)
まず、最初のブラジルの減産予測が500~1,500万袋でしたが、間をとって1,000万袋としてみます。
ブラジルは自国消費で1,000万袋消費するので、この分の穴埋めも必要になってきます。
コーヒーは輸出作物なので、品質の高いものはなるべく輸出に回さないといけません。それで品質の低い方から国内消費に充てても、輸出用の分が足りなくなります。
来年の22/23クロップはブラジルの裏作(ブラジルは豊作年と不作年が交互に来る)にあたるので量の確保が結構しんどいです。(すいません22/23は表作でした・・・・m(_ _)m)
どうしても足りない分はどうするかと言うと、おそらくコロンビアから買うことになると思います。ブラジルの次にアラビカコーヒーを作っているのはコロンビアなので価格も安いし、同じ南米で調達がしやすい訳ですね。
まあさすがに1000万袋もコロンビアの豆を買う事はできない(コロンビアの生産量は1,400万袋)し、ブラジルにも前年の滞留在庫(パストクロップ)も少しは残ってるはずなので、ブラジルが消費国に売るための必要最低限の玉(既契約分の補填)を買うことになると思います。これをショートカバーと言います。
- Short(ショート)=在庫に不足がある事
- Long(ロング)=在庫に余剰がある事
実際にどの程度買い付けが必要なのかは当事者になってみないとわかりませんが、こうした動きが出た場合、コロンビア産の豆がブラジル産となって輸出、もしくは消費される不思議現象が発生します。表向きはもちろんわかりませんが、後々ブラジルの生産量と輸出量の統計を取ると、数が合わないことが出てくると思います。
こうしてコロンビアの需要が増えるので、コロンビアの価格が上がります。
そうすると、アザーマイルドの需要がより多くなっていきます。次に多いのは中米のホンジュラス(約700万袋)と北米(中米?)のメキシコ(約400万袋)です。これらの需要が高まり価格が上がって行きます。
こうしてブラジルの穴を埋めていく形で、他のコーヒーが値上がって行く訳ですねー。
なお原料が低価格でないとビジネスができない、安い缶コーヒーとかインスタント等の工業系のメーカーとかになってくると、アラビカの使用をやめて、ロブスタに切り替える動きが出てきます。そうすると今度はロブスタの需要が増えるのでロンドンのロブスタ相場価格(ロブスタの基幹市場はイギリスのロンドン)が上昇していきます。
・・・・・・
噂で買って事実で売る
見出しは投資の格言ですが、価格高騰の予兆が出てくると、お金儲けをたくらむ方々が市場に流れ込んできます・・・。
すでに述べましたが、NY市場のメインプレーヤーは実際に反対売買を用いてヘッジを掛ける実需筋の人達です(Hedger:ヘッジャー)。ここに投機目的で市場に参加する人たちが出てきます。これを投機筋(Speculator:スペキュレーター)またはファンド(ヘッジファンド)と言ったりします。
株や、債券、コモディティ等、様々な金融商品を投資対象として、世界のマクロ経済が変動するときに利益を上げようとする投資をグローバルマクロ戦略といいますが、こういった資金運用を行う投機筋が絡んできてしまうのです。
今回の場合、ブラジルの霜害のニュースが出た後140セントから160セントへ上がり、そこから200セント台になるまで1週間くらいしかかかっていません。
実際にファンドの建て玉を調べるのはめんどくさいのでやらないですが(笑)、こうした価格上昇機運では絶対絡んできているはずです。
コーヒーの場合、一度ファンドが噛みつくと、なかなか外れません・・・。そうすると高値の水準を維持することになります。
ファンドが外れるタイミングは、ブラジルの霜害の被害がそれほど悲観的でなかったという事実が確認されるか、ブラジルの植え替えなどで増産のめどが立った段階で、売り逃げていくと思います。
・・・・・
まあ、たいてい産地側は悲観的な報道をするのが常です。その方が、価格が上がるので・・・・。
今回の場合、早くも商社から追加報告が上がっているのですが、実際の減産量は多く見積もっても500万袋程度の減産ではないかとみられています(え・・・・?(・ω・)ノ)。
しかし市場は当初の1,000万袋以上減産するかもしれないという悲観的なニュースに踊らされていて、現在(7月末時点)200セントを付けています。
市場を荒らすだけ荒らして、一足先に退散していくファンド達・・・・。
そりゃあ、みんなから嫌われますね(笑)(´∀`*)ウフフ
コンビニコーヒーと〇ックのコーヒー・・・・
はい!!両方共まずくなります!!
(≧◇≦)
〇ック:コーヒーSサイズ=¥100(税込み)
〇ブン:ホットコーヒーR=¥100.44(税込み)
今のところ、上記の価格ですが、この価格で美味しいと言っていたのは相場が100セント台の時です。
今はその2倍になっているので、普通に考えてもこんな低価格を同じ品質で維持するのは不可能ですね。
安いブレンドの場合は一番安いブラジルNO.4/5にコロンビアExcelsoを混ぜてちょっと美味しくするパターンが多いと思います。もっと価格を抑えるのであれば、ホンジュラスHGをコロンビアの代わりに使えばさらに安くなりますね。
ブラジルNO.4/5の次に安いコーヒーはホンジュラスHGかエチオピアのG4/G5のナチュラルとかですが、ここら辺は欠点豆が多くて品質が不安定なので、アクセントに加える位であれば良いですが、ブレンドのメインにするにはちょっと厳しいですね。
過去を振り返ってみると、似たようなパターンが実は10年位前にあります。
2008年当時の〇クド〇ルドの¥100コーヒーは結構美味しいと評判だったのですが、まず農薬問題でエチオピアが入らなくなり、ついで植え替え政策で大幅な減産になったコロンビアも入らなくなり、一瞬にして美味しくなくなりました(;・∀・)
当時の〇ックのコーヒーの配合比率は正確なところはわかりませんが(そんなの企業秘密だわい)、コロンビアと特にエチオピアのナチュラルで美味しさを作っていたと推測されています。本当に上手にローグレードのスペックをブレンドしていたので、問題が起こるまでは確かに美味しかったですよ。
このコロンビアとエチオピアのショート問題は結構大変で、ファナティックも2009年以降、業務用の価格交渉で企業様のところに何回も訪問しました(死)。
コロンビアとエチオピアがだめだったら、もう美味しくしようがないんですよねー・・・・。低価格を維持するためには、仕方ないからブラジルNO.4/5の配合率を増やすしかない(=もはやブレンドじゃない(笑))という状態でした。
まとめ
と言うところでニューヨーク先物市場価格について書いてきましたが、この様にディファレンシャル取引(主にコマーシャル)、アウトライト取引(主にハイコマーシャル/スペシャルティ)は異なるものなので、どっちが良い悪いではないです。
それぞれマーケットにおけるセグメントが違うので、相場に連動したコマーシャルを貶める必要もなければ、ダイレクトトレードのスペシャルティを美化する必要もない訳です。
生産者も生活のかかったビジネスですから、採算が合わなかったらそれは続けようがないし、土地にポテンシャルがあればスペシャルティやればいいし、見込みがなければ違う作物を植えるなどの業態転換をせざるを得ません。
ただアラビカコーヒー取引のベースのルールはニューヨークの商品先物市場になるので、くれぐれもそれだけはお忘れなきよう・・・・( *´艸`)。
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こんなとこかな?
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霜が降りたら相場が上昇なんて・・・。
まるでクリスマスみたいだね!!!!!!!(?)
私の恋心は絶賛爆騰中!!!!(?)
テンションあがるぅ♡(?)