こんにちは!!
Coffee Fanatic三神です!!
先週行われたWCRC2024ですが、ファナティックは今回ローストマスターズ委員として現地視察に行ってきました!
大会視察で新しくなった箇所や変更点などを日本のJCRCに向けてフィードバックを行うのが私のミッションです!!(毎年恒例・・・・)
今回はコーチじゃないのでとっても気が楽!!(∩´∀`)∩ステージ外から応援してました!!
6月の最終週に行われたこの大会・・・・。恒例のレビューをしたいと思います!!
それではいってみよー!!
WCRC2024Copenhagen
2024年度のWorld Coffee Roasting Championshipはデンマークはコペンハーゲンで開催されたコーヒーの展示会、WOC(World of Coffee)で行われました。
ブースはC区画で、WOC展示会のメインとも言えるホール。しかもWCRCは入り口に入ってすぐ右側にあるため、入場者の注目が集まりやすい、とっても良い場所でした。
WOC
https://www.worldofcoffee.org/
このWCRC2024では心斎橋珈琲の天満一行さんが日本代表として参加し、Philocoffeaの粕谷哲さんがコーチとして随行しました。当コンペティションでは世界各国のロースター20余名が集結し、焙煎の技術を競い合います。
昨年にはCoffee Value Assessmentの評価軸が搭載され、また今年からはそれまで長らくスポンサーを務めてきたオランダのGiesenに代わって、韓国の焙煎機メーカー、Strongholdがメイン焙煎機のスポンサーとなりました。よって今年も昨年に引き続き、競技会の仕様が大きく変化した大会となりました。
大会スポンサー
- プロダクションロースター
- Stronghold S9X
- サンプルロースター
- Link
- グラインダー
- Kirimai
- 浄水器
- Brita
- ローストログ
- Cropster
- 生豆
- InterAmerican
- 計測機器
- Lighttells
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ということで今年からメイン焙煎機のスポンサーがSTRONGHOLDになったのですが、この焙煎機は熱風(対流)、ハロゲン(輻射)、ドラムヒーター(伝導)の三種類の熱源を使用することが可能で、これ以外にアジテーション(攪拌)、ブロワー(排気)などを設定することができます。
温度計表示ではレーザーを使用したBean Surface Temperature(豆表面温度)の他、Hot Air(熱風温度)などが参照できます。
焙煎ログのCropsterはS9Xのレーザー温度計の表示を行いますが、データトラッキングがS9Xは1秒間に1回。Cropsterは1秒間に3回なので誤差が出ます。Cropsterのログにはレーザー温度計の温度とそのRORが出ますが、データが単純すぎてあまり意味をなしていませんでした。結局Cropsterのログは主に競技オフィシャルの計測用として用いられました。
焙煎機の容量は最大8kgですが、大会で提供される生豆の量に限りがあるため、実際は3kg程度の投入量が多かったようです。なお同社の小型機であるS7X(700g)では火力不足が発生しやすかったのですが、大会機のS9Xはかなりパワーがあるようで、温度上昇させやすい焙煎機であったようです(天満さん談)
競技会生豆
- Single Origin
- Indonesia Gayo Weh Llang Triple Pick Wash(Wet Hull)
- 水分:13%
- 密度:826g/L
- Blend
- Malawi AA Plus Pamwamba Wash
- 水分:9.9%
- 密度:817g/L
- Indonesia Kintamani Natural
- 水分:10.6%
- 密度:795g/L
- Brazil Engenho Red Bourbon Natural
- 水分:10.1%
- 密度:798g/L
- Practice
- Congo Kabuya Natural
- 水分:?%
- 密度:?g/L
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シングルオリジンのインドネシアは“Gayo”と記載されているので、いわゆる”アチェ”のコーヒーですね。銘柄的には普通なんですが、なんと水分値が13%もあります・・・・(‘ω’)。
インドネシアは水分高めのオリジンではありますが、さすがにこの水分値では船での輸送中にカビが生える危険があります(ふつうはプレシップの段階でリジェクトだこんなもん)。枯れるスピードもかなり早いでしょう。またこれだけ水分が高いと一ハゼ後に大きくクラッシュ(温度上昇の鈍化)するのでDevelopment Phaseが伸びる可能性があります。
ブレンドはマラウィとインドネシアのナチュラル、それからブラジルです。
マラウィはグレードがAAですけど、このオリジンは知名度のあるCWSやマイクロロット等をそれほど耳にすることはないですね。(でも天満さんによるとフレーバーはフローラルあったらしい(/・ω・)/)
インドネシアはKintamani(キンタマーニ)なので”バリ・アラビカ”です。インドネシア、しかもバリでナチュラルとは珍しいですね。
ブラジルはMatas de Minas(マタス・ジ・ミナス:ミナスジェライス州の南東側)のコーヒーで、少し酸は明確になりやすいテロワールかもしません。
生豆の物理データはバリとブラジルが近似しているので、競技者の選択としては、
- マラウィを単独で焙煎
- バリとブラジルをプレミックス(Pre Blend)して焙煎
- 上記2つをアフターミックス(Post Blend)
というパターンもあり得そうでした。
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・・・・・・・
・・・・・・・
しかし生豆は・・・
うーん・・・・どれもこれも実に微妙なセレクトですねー。
これ本当にスペシャルティコーヒーの焙煎大会なのかしら???(;´・ω・)
せっかくの世界大会だからCOEとかゲイシャとか使って、最後に上位4名のコーヒーを会場でふるまえば、とっても盛り上がると思うのですが・・・・。結局焙煎ログも会場では公開されなかったし、コーヒーはふるまわれないし、あいからわずセンスが皆無で誰のためにやっているのかよくわからない大会ですね( *´艸`)
あと練習豆がコンゴになってますけど、今まではシングルオリジンに近い特性の豆でしたが、今年はブレンドの方に合わせたようで、オリジン的や生豆特性上はマラウィに近いと思われます。
水周り
今回はポリタンクなどのパッケージされた水や意図的に調整された水を提供するのではなく、現地の水道水を小っちゃいBritaでろ過する形式(え・・・・?(`・ω・´)?)となりました。公式の水質における見解は以下の通りとなっています。
- ナトリウム:10mg/L
- 硬度:80ppm
- 総TDS:75ppm
- アルカリ度:55ppm
- pH:7
*ppm(100万分の1グラム)とmg/L(1リットル当たり1ミリグラム)は同じ重量を表す
・・・・・・・・・・・・?
総TDSは水の総成分値を表しているので、この中に硬度が含まれる(マグネシウムとカルシウムは大抵の場合、炭酸カルシウムに近い値でTDS計に反映される)はずなのですが、硬度の方が高くなっていますね。どういうこっちゃ???(/・ω・)/
なお数値はBritaを通した後の値なのですが、ろ過前はなんと硬度が400mg/Lもある現地水が元になっています(エビアンよりも硬い・・・・)。目標値は硬度75~80ppmとのことですが、Rep(大会の偉い人)のJakeさんが持ってきたTDS計でBrita水を計ってみたら総TDSで45ppmしかありませんでした。・・・・・あれ??????
・・・・・ていうかBritaのフィルター通しただけでそんなに水質変わるんだ・・・・・。?
しかも浄水は変な酸味が存在しており、ちょっとあやしい味の水でしたね(笑)。最初レモン水かと思ったよ(*’▽’)。
フィルターで都度ろ過する水だと、使用頻度が高くなるにつれて水質が変わっちゃうので、タンクとかで一定量の水を用意するのがやはり最も良い方法であると感じました(いちいちろ過するのもめんどくさいでしょ)。
粉周り
カッピングにあたっては、日本のTREE FIELD製のコーヒーグラインダーのKirimaiが使用されました。既存の設定だとカッピングの使用に適さないため、刃の回転速度が上げられており、また同グラインダーの最大の特徴である微粉/チャフ除去機能は意図的にOFFにされています。
カッピングのメッシュはUS#20の篩を70~75%通過するSCA基準メッシュが適用されますが、焙煎度の指標となるAgtron計測用のメッシュが前大会(WCRC2023台湾)と同じく、微粉に近いメッシュ(Kirimaiの最小設定)を用いることとなりました。運営側としては細かければ細かいほど良いという判断とのこと・・・。
よってAgtron値がSCAのカッピング基準の数値から13~15ポイントほど明るく(数値が高く)なります。これは粉粒同士の間のスペースが減る=影が少なくなるためです。なお通常AgtronはSCAのカッピング基準のメッシュで数値計測します。
天満さんの戦略
今回は焙煎やブレンドの戦略について天満さんにインタビューしてみました。詳細は伺ってないですが、概要は以下の通りです!
- Linkでのプロファイル
- オートのカッピングモードを使用。208~209℃上げ
- Productionのプロファイル
- 投入量は2.7kg
- ゴールド4分、メイラード4分弱、デベロップ1~1分10秒(シングルのインドネシアはデベロップ長め)で、全体の時間は9分以内を目指す
- 投入温度は190℃、1ハゼは213℃想定で、終了温度は215℃(実際は218℃で終了)
- ハロゲンは後半下げるがドラムヒーターの出力は固定
- 目標AgtronはSingle:88、Blend:86~87(共にKirimai最小メッシュ)
- ブレンドはアフターミックス(Post Blend)で各オリジン毎に焙煎。バリが最も多い配合(80%)を選択。ブラジルとマラウィは10%ずつ使用する
・・・・・・・
という感じでした!!
シングルオリジンのインドネシアは温度がなかなか上がらなかったとのこと、目標よりも3℃高い温度で排出することにしたそうです。
ブレンドでは、カッピングから、バリのナチュラルのカップが良好だったとのこと、マラウィもフローラルなニュアンスがあったのですが、バリの方を選好し、配合率は高めになりました。
煎り止めの判定については、日本での練習時から一貫してテイストを取りながら納得のポイントで焙煎度合やプロファイルを決めたとのこと。コーチの粕谷哲さんと共に検証した、自分たちが”おいしい”と思えるコーヒーを焼くのが天満さんの目標です!!
ガンバレ!!天満さん!!!(∩´∀`)∩
結果
WCRCは勝ち抜きではないため最後にまとめて発表されるため、ドキドキが半端ないですね!
1位:中国 Tai Yang Liu
2位:ポーランド Mateuzs Derkacz
3位:オーストリア: Andrea Trevisan
4位:中国: Chenglei Diao
*中国はコロナで出場延期をしたチャンピオンがいたため2名出場
天満さんは残念ながら入賞ならずでした・・・・・・。
結果はオーバー2(発達過剰)とスコーチ2(焦げ)の焙煎欠点を判定されて、減点となり、アキュラシー(描写の正確性)の項目で点が伸びませんでした。
オーバー判定を受けるとスコーチも同時に判定されやすいのがこの大会の特徴でもあります。本当は焦げていなくても、焙煎が深く推移した事による苦味の発生を”焦げ”とみなすことも多いため、深めの焙煎は不利になりやすい傾向があります。
ただ熱源のハロゲンは豆の表面を熱する性能が強いので、この焙煎機では焦げのニュアンスはやはり出やすいのかもしれませんね。
今回のブレンドは目標Agtron88(SCAメッシュで75位?)をクリアしましたが、シンググルオリジンの方は3℃高い温度で終了したこともあり、Agtron値が70台(SCAメッシュで約60台?)に低下したようです。
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ファナティックの本音を言うと、WCRCはどういったコーヒーが素晴らしかったのがイマイチわからない大会です。
今年は一時、競技者用カッピング(オープンカッピング)が中止になりかけたので、もし本当に中止になっていたら、審査員以外は焙煎した本人含めて、誰も焙煎品質を確認することのできない“闇の大会”になるところでした。ちなみにこの大会では、競技者は最後に豆を返却されるまで、提出用豆のカップすることができない仕様になっています。
できれば今後の透明性の改善と、競技を盛り上げる運営側の工夫を期待したいところですね。
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今大会は新しいメイン焙煎機という大きな変更がありました。日本ではS9Xは電気規格が特殊なため導入している店舗がまだなく、練習するのも大変な環境でしたが、天満さんは現場でもミスすることなく、高い集中力を発揮して競技に臨まれていました!!
ぜひ天満さんの健闘を讃えたいと思います。
天満さんお疲れさまでした!!!!!!!
・・・・・・・
ふぁなてぃっく三神