こんにちはーCup Fanatic三神ですー。
今回は以前にブログでも書いたカップやグラス形状がどのようにコーヒーの味わいに影響を与えるか、さらに深堀してみました。
*下記は以前書いたブログです・・・・
カップ、グラス形状だと、やはりワイン業界は研究が進んでいるので、こちらの方がリソースいっぱいありますね。ファナティックはワイン業界かじったので、ちょぼちょぼ知識はありますが、一応リサーチをしてどのような意図でグラスが設計されているのかを数点確認しましたですー。
(今回参考にしたサイト)
フィラディス
https://firadis.net/column/wine-column-no065/
神の雫
https://kaminoshizuku.jp/blog/202
リーデル
https://www.riedel.co.jp/about-riedel/why-riedel/
みあきログ
https://www.miaki-koo.com/entry/oishiitoha-taste-map
・・・・・・・
ただ、やはり味覚に関するものは結構個人的な感じ方に影響されやすいので、一応上記を参照しましたが、今回は実際にコーヒーを用いて検証を行いました。結果として参照したマテリアルとやや違う解釈が導き出されましたが、まあ、これも一つの見方だと思って楽しんでいただければと思いますですー。
・・・・・結局今回も読みづらい文章になり果ててしまい申した・・・(´Д⊂ヽ
味覚地図
以前のブログでもご紹介しましたが味覚地図は科学的に根拠が不明瞭(ほぼ否定されている)とされ、グラスメーカーにもはや採用されていないとの事ですが、やはり神経伝達/毒物感知の観点からある程度信憑性があることも分かっているようです(なんかあいまいやねー)。
【味覚地図上の感じやすい味の位置】
- 舌の先端=甘味
- 舌の両側=塩味
- 舌の中央(奥以外のほぼ全域)=うま味
- 舌の奥の両側=酸味
- 舌の奥=苦味
また 味の感度はそれぞれの味の種類によって異なっています。
(強)苦味>酸味>うま味>塩味>甘味(弱)
苦味の閾値は甘味の1000分の1なので、砂糖と苦味物質では感度が1000倍違うことになりますです(苦味に敏感なのね)。
【味覚別のシグナル】
- 甘味:エネルギーのシグナル
- 塩味:ミネラルのシグナル
- うま味:タンパク質(アミノ酸)のシグナル
- 酸味:腐敗物のシグナル
- 苦味:毒物のシグナル
もともと“苦味”は毒性物にあたり、この味の検知は動物が獲得した危機回避のための能力ですものね。酸味も上記の通り“腐敗”の危険性があるので、基本動物は食しません・・・。
よってこうした味覚を感じやすいように人間が進化してきたってことですねー。
飲み方の基本
当たり前ですけど、当ブログはコーヒー関連のブログなので、ワインと属性が異なりますし、飲料の仕方も違います。一番違うのは提供温度でしょうね。もちろんコーヒーにはアイスコーヒーと言うものもありますが、基本的には温かい飲み物です。
【飲料方法の違い】
ワインの基本
- 温度が上がっていく飲み方
コーヒーの基本
- 温度が下がっていく飲み方
コーヒーの場合は温度が高いと苦味を感じやすく、序盤は酸味/フレーバーが分かりやすいですね。温度が下がってくると、甘味/質感が分かりやすくなる特徴があります。
今回の検証にあたってはそれぞれの味わいのバランスを明確化するために5つ味覚要素を抜きだしてみました。
「コーヒーのテイスト=“甘味、酸味、苦味、フレーバー、質感”の5つ」
「コーヒーのテイストバランス=上記5つの味覚要素の配分」
・・・・としておきますー。
カップ形状におけるポイント
それではカップ形状に触れていきたいと思います。まず重要なのが以下の2点になります。
【大きなポイント2点】
①口内に運ばれる液体の量は“口径の広さ”に左右される
- テイストのIntensity=味の強弱に関わる=TDS濃度に近い概念
②舌上の投液位置(グラスと人間の首の傾き)による口内分布(液体の広がりと滞留時間)は“ボウルの最小径と最大径の差”そして“液面からリム(フチ)までの距離”に左右される
- テイストBalance=味の多様性に関わる=EY収率に近い概念
要はどの程度味の強さを感じるのか(TDS濃度的)、どの程度味の多様性を感じるのか(EY収率的)が焦点になる訳ですねー。
こうした点を鑑みて、グラス形状を選択していくのですが、結構パラメーターが多いです。
【グラス選定項目】
- 前提となる飲料の属性とテイスト傾向の把握
- 口径(リム:淵)の広さ
- 最大径と最小径の差
- 液面からリム(淵)までの距離
- リム(淵)の返り
- リム(淵)の厚み
- ボウルの大きさ
それでは順番に消化していきましょう!!!(・ω・)ノ
前提となる飲料の属性とテイスト傾向の把握
ワインでは白、赤、ロゼ等。コーヒーではWashed、Natural、Honey等。実際の飲料はかなりの多様性に溢れテイストバランスは千差万別ですね。しかしそれを言い出すと話が進まないので、一応モデルとしての典型例を品種別に分類してみました。かなり乱暴に分けたし、異論はたくさんあるでしょうけど、許してね・・・・(/o\)
ワインでの分類
- 白ワイン=酸味が明確で、ボディーが軽めな物を典型例と仮定する
- 香りに特徴のあるタイプ
- ゲバルツトラミネール、ビオニエ、ソービニヨンブラン、リースリング
- 甘さがあるタイプ
- ピノグリ
- 酸が明るく甘さを伴う
- シャルドネ
- 酸が明るくシンプル
- ミュスカデ
- 香りに特徴のあるタイプ
- 赤ワイン=甘味と苦味(タンニン)があり、ボディーが重めの物を典型例と仮定する
- ボルドー系=甘味、苦味(タンニン)がしっかりしてフルボディー
- カベルネフラン、カベルネソービニヨン、メルロー、シラー、マルベック
- ブルゴーニュ系=酸味が強くフルーティーでミディアムボディー
- ピノノワール、ガメイ、グルナッシュ
- ボルドー系=甘味、苦味(タンニン)がしっかりしてフルボディー
- ロゼ=白と赤の中間だが、物よっては、白に近いワイン、赤に近いワインがある
・・・・・・
コーヒーに変換してみる(@_@)
うへぇ・・・・・・
コーヒーでの分類
- 白ワイン的=水洗式コーヒー(Washed)
- 香りに特徴のあるタイプ
- ゲイシャ、ジャバ、ルメ・スダン、エチオピア原生種、
- 甘さがあるタイプ
- ティピカ、ビジャロボス、イエローブルボン、ウシュウシュ、カスティージョ、アルーシャ
- 酸が明るく甘さを伴う
- SL28、SL34、パカマラ
- 酸が明るくシンプル
- ブルボン、ビジャサルチ、カトゥーラ、カツアイ、マラカトゥーラ
- 香りに特徴のあるタイプ
*嫌気発酵の後、水洗を行ったロット等は“香りに特徴のあるタイプ”に準ずる
- 赤ワイン的=非水洗式コーヒー(Natural)
- ボルドータイプ
- 通常のNatural、やや果肉臭のあるNatural
- ブルゴーニュタイプ
- 酸に特徴のあるNatural(Winey、Funky、Carbonic、Anaerobic等)
- ボルドータイプ
- ロゼワイン的=パルプドナチュラル(ハニー)
- 赤に近い
- Red/Black Honey=Naturalに近似
- 白に近い
- White/Yellow Honey=Washedに近似
- 赤に近い
口径(リム:淵)の広さ
口径=飲み口の広さは、口内に運ばれてくる液体の量に大きく影響してきます。
口径が小さい
⇒酸が明確でボディーの軽い白ワイン用に多い。コーヒーでは酸が明確なWashedを想定できる。
- 口中に流れ込む横幅が狭くなる。液体は細長く、舌の上をストレートに流れる
- 液量が少なくテイストを弱く感じる(低TDSに近似)
- 液量が少ないため、最も強い味である苦味を感じやすい
- 甘味、酸味は感じづらくなる
口径が大きい
⇒甘味や苦味、渋味(タンニン)があり、ボディーの重い赤ワイン用に多い。コーヒーでは甘さ質感のあるNaturalを想定できる
- 口内に流れ込む横幅が広くなる。液体は幅広く、口の中にゆっくりと広がりながら流れる
- 液量が多くテイストを強く感じる(高TDSに近似)
- 液量が多いため、酸味、フレーバー、そして最も弱い味である甘味を感じやすい
- 苦味は感じづらくなる
最大径と最小径の差
飲み口の口径と、グラス中ほどの内径との差です。口径が内径に対して大きくなってくる(差が小さい)と液体は早く流れるようになり、反対に口径が内径に対して小さくなってすぼまってくる(差が大きい)と液体の流速が遅くなります。
内径差が小さいと液体がスムースに流れるので、それほど首を上に傾けなくても飲むことができますが、差が大きいとなかなか液体が来ないので首を上に向けないと口内に入っていきません。
こうしたグラスと接する口/首の傾きの違いによって、運ばれる液体の落ちる位置と、滞留時間に変化が生じます。
差が小さい(内径に対して上部口径が大きい目)
⇒飲料時のグラスと首の傾きが小さい(液体の流れが水平方向に近くなる)ので液体が舌の上/舌表に液体が乗りやすく、やや直線的に進む。いわゆるボルドー型
- 液体の流速が早い=テイスト時間が短い
- テイストがシンプルに感じられる(低EYに近似)
- 閉じ気味で、味にまとまりがある
- 香り(アロマ)がこもらず、すっきりと立つ
差が大きい(内径に対して上部口径が小さめ)
⇒飲料時のグラスと首の傾きが大きい(液体の流れが垂直方向に近くなる)ので液体が舌の先/舌裏に落ちやすく、横幅に液体が広がる。いわゆるブルゴーニュ型
- 液体の流速が遅い=テイスト時間が長い
- テイストがコンプレックスに感じられ、酸味/甘味/フレーバーが付加されていく(高EYに近似)
- 開き気味で、味に解放感がある
- 香り(アロマ)がこもりやすく濃密になる
液面からリム(淵)までの距離
濯がれている液体の上面から飲み口までの距離です。
距離が短い(液面が高い)
- 傾きが小さくなる=舌上/舌表に落ち、ストレート上に流れる
距離が長い(液面が低い)
- 傾きが大きくなる=舌先/舌裏に落ち、口内に広がりやすい
(飲むにしたがって液面は低下していくので、この傾向が強くなる)
リム(淵)の返り
飲み口の口径の外側への開きの有無です。
*少々加筆修正しました(;・∀・)
淵が外側に返っている場合
- 液体が淵から離れやすくなり、垂直方向に落ちやすくなる。舌先に落ちやすく、口内の広がりが多くなる
口径差の大きいブルゴーニュ型だと、上記の様に角度があって飲料時に液体にブレーキがかかります。淵が外側に返っていないと、液体が淵から離れにくくなってグラスの外側を伝ってしまうため、飲みづらくなって適量を口に含みにくくなります。これにより液体は口と逆方向に行きやすくなるため下唇に落ちやすくなります。
こうした作用を調整するためだと思われますが、ブルゴーニュ型のような口径差が大きくてすぼまっているグラスには、淵の返りが外側に開いている形状のものがあります。
リム(淵)の厚み
飲み口の淵の厚みです。飲みやすさに影響があり、同時に液体の質感の感じ方に錯覚を及ぼします。
厚い
- 液量が少ない=口径が小さいと同じ効果
- テイストがあまり感じられない(低TDSに近似)
- 質感は重く、硬いと錯覚する
薄い
- 液量が多い=口径が大きいと同じ効果
- テイストが感じられやすい(高TDSに近似)
- 質感は軽く、柔らかいと錯覚する
ボウルの大きさ
ボウルの大きさや形状は液体の流れ方や落ち方以外に、温度変化と香りの容量にも影響を与えます。
温度変化
- 小さいグラスは容量が少なくて早く飲めるので、温度変化が少ない(Consistent=テイストが開かず開放的でない)
- 大きいグラスは容量が多くて飲むのに時間がかかるので、温度変化が多い(Inconsistent=テイストが開いて開放的)
白ワインなんかは比較的低温で飲むことが多いのですが、あまり時間を掛けると温度が上がってテイストバランスが変わってしまいます。なので、早く飲み切れるようにグラスが小さめにできているようです。
香り(アロマ)の容量
- 小さいグラスは香りの容量が少ない。
- 大きいグラスは香りの容量が多い(熱いと蒸気でむせる・・・(/o\))
フレーバーはアロマに影響される(フレーバー=風味)ので、ボウルが小さいとフレーバーは感じづらく、大きいと感じやすくなります。
液体が温かいと曇ってむせたりしますね・・・・・
これでひととおりさらったので、実際の検証に移りたいと思います。
実際の検証①
Kenya Nyeri AA Maganjo Washed(ニエリ・マガンジョ)のハンドドリップをボルドーグラスとブルゴーニュグラスで飲み比べてみました。水洗式のケニアゆえ酸が明確なコーヒーなので、グラスによるテイストバランスの変化が分かりやすいと考えました。提供温度は50℃でテイストの判別しやすい温度帯に設定。それぞれ100cc程度を注ぎました。
【使用グラス】
- Riedel O Big:Cabernet/Merlot 600ml(ボルドー型)
- Riedel O Big:Pino Noir 762ml(ブルゴーニュ型)
左ボルドー型、右ブルゴーニュ型
【口径の大きさ】
ボルドー型>ブルゴーニュ型
【口径の差の大きさ】
ブルゴーニュ型>ボルドー型
基本的に両者共にボウルが大きくて香りを取りやすい。口径も大きめなので液体が口内に広がりテイストも取りやすい。リムはうすはり(薄玻璃)で液体の質感が柔らかくなめらかに感じられる。
ボルドー型
味にまとまりがあって芯のあるしっかりした印象。アロマの立ち方はすっきりしている。口径差が小さいため舌上/舌表に液体が乗りやすく、テイストの多様性や広がりは制限されるが、まとまりがある。固めの質感。コーヒーの酸はエレガントに感じられやすっきりした味わいが強調される。
ブルゴーニュ型
味に広がりがあって開いた印象。アロマはこもり気味で濃厚。口径差が大きくかつリムが外側に返っているため舌先/下裏に液体が広がりやすく、酸や甘さフレーバー等様々なテイストの多様性を感じやすいが、ややくどさを感じる。柔らかめの質感。このコーヒーが持つ柑橘系の酸、フローラルさや甘さが引き出される。
実際の検証②
Ethiopia Guji Hambela Natural(グジ・ハンベラ)のエスプレッソを3種類のグラスで飲み比べてみます。フレーバーが明確で質感がしっかりしているエチオピアのナチュラルで検証を行いました。提供温度は50℃。複数のショットをブレンドし攪拌して均一化を行います。提供温度を50℃に設定し、それぞれ45ccをグラス内に注ぎました。
【使用グラス】
- KINTO CAST:グリーンティーグラス180ml
- Riedel O:大吟醸O 375ml
- ワインテイスティング用国際規格グラス:DOC 215ml
左からKINTO、Riedel、テイスティンググラス
【口径の大きさ】
KINTO>Riedel>テイスティンググラス
【口径の差の大きさ】
Riedel>テイスティンググラス>KINTO
KINTO
飲み口の口径が内径より大きいが(口径差がマイナス)、リムが外側に返っているため液体はかなり舌先/舌裏に落ちやすく酸味や甘味などがエチオピアナチュラルの多様なテイストをとても感じやすい。また口径が大きいため液体がかなり広がっていくのでテイストはしっかりするものの、まとまりがなく、ナチュラルのくどさをやや助長している感がある。
Riedel
やや口径に差があるため液体が舌先/舌裏に落ちやすく、酸味や甘味などを感じやすい。ボウル状になっているため香りもしっかり感じられる。KINTOより口径が小さいため小さく液体の広がりが制限され、ややエチオピアナチュラルのキャラクターやテイストは感じづらくなったが全体的なバランスは取れている。リムがうすはり(薄玻璃)のため厚みが少なく、質感はなめらかに感じられる。
テイスティンググラス
口径が小さくすぼまっており、あまり多くの液量が口内に入ってこない。また口径差が少なく舌奥に行き届きやすいため、やや苦味が主体的になる。エチオピアナチュラルのキャラクターはキャッチしづらく、甘さやフレーバーなどは感じづらいがすっきり飲める。硬質な印象。
・・・・・・・
KINTOが一番テイスト全般(酸、甘さ、フレーバー)の要素が感じられるものの、少しくどい印象。Riedelはバランスが取れていました。テイスティンググラスはまとまりがあるものの、テイスト全般の要素をキャッチしづらい印象です。
*RDCのエスプレッソは浅煎りで酸が強く苦みが弱いエスプレッソなので、口径の大きいカップでも良いと思われます。しかし一般的な深煎りのエスプレッソだと苦味とテイストが強すぎるので、小径カップの方が飲みやすくなるかもしれないですね。
まとめ
まとめるとこんな感じかしら・・・・?
☆ 口径が小さくて飲む量が少ないと、主に苦味を感じやすく、テイストが弱く感じられる(味が分かりにくい)
☆ 口径が大きくて飲む量が少ないと、酸味、甘味、フレーバーを感じやすく、テイストが強く感じられる(味が分かりやすい)
★ 口径差が小さい、または液面が高いグラスは、液体が舌表に乗りやすく、テイストの要素を少なく感じる(主に苦味と酸味)。Simple(シンプル:単純/)ですっきりした味わい。
★ 口径差が大きい、または液面が低いグラスは、液体が舌裏に落ちやすく、テイストの要素を多く感じる(酸味、甘味、フレーバー等)。Complex(コンプレックス:複雑)で濃厚な味わい。
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このようにコーヒーの液体が持つテイストバランスの感じ方を、カップ/グラス形状で変化を持たせることができます。その時の嗜好に合わせて形状を変えるとテイストが変化するので面白いと思いますー。
ワインは赤白でグラスの形状を使い分けますが、何がだめで、何がよいというものではないので、コーヒーでも同じ液体を様々なカップ/グラスで飲み分けてその違いを楽しむのよい(あ・・・・)でしょうねー(´∀`*)ウフフ。
・・・・・・・
こんなとこかな?
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・・・・・・・
グラスにたゆたう其の液面は、
まるで揺れ動く私の心のよう・・・・。
回せば回すほど開いていく香りこそ、
私の真の心なのです・・・・。
・・・・・・・
本当のわたしデビュー(≧◇≦)!!
どかーん・・・・・・