こんにちはCoffee Fanatic三神です!!

先日SCAJのトークイベントで募集したご質問に対しての詳細なご説明をいたします!!(∩´∀`)∩

SCAJのCoffee Villageのイベントステージで、それはそれは眠たい(笑)マニアックな回答編を実施したのですが、今回こちらのブログに備忘録として載せておきたいと思いますー!!

それではいってみよー!!

「1ハゼの開始」の基準があいまいなので、ファナティックの見解を聞きたい!

【答え】

1ハゼの開始を音で特定するのはかなり無理があるので、自分自身のルールを決めて、どういったハゼ方を1ハゼとするのかを自分の中で定義化する必要があります。

しかし、もし排気温度計が豆ホッパーの下部に設置されていて(ここ重要(。◕ˇдˇ​◕。)/)、Crostper、Artizanのようなロガーシステムがあれば、排気温度RORの温度カーブから1ハゼ予測を行うことができます。

下記のグラフは一ハゼまでの火力を一定にして焙煎したプロファイルにですが、見てみると、1ハゼのおよそ10℃前あたりから排気RORが上昇に転じます。ここでExothermic(発熱反応)が始まることがわかります。

そして1ハゼが始まると排気RORカーブがピーク(山)を形成して下がっていきます。このピークを形成した時点が1ハゼになります。

1ハゼが始まると蓄えた熱を放出して、水蒸気の気化熱で温度上昇率が下がるため、このピーク(山)を1ハゼととらえることができます。

また予熱が高めの別の焙煎プロフファイルでも排気RORに若干の変化が見られます。

もし安定したロガーシステムがなく、豆温度計の温度しか参照できない場合は、豆温度RORの動向を基準に計測します。豆が黄色く色づくカラーチェンジあたりから、15秒ごとの豆温度を記録し、30秒、もしくは1分ごとのRORを毎15秒ごとで計測していけば、RORが上昇に転じた地点、RORが下降に転じた地点がわかります。ただ豆RORは排気RORより遅れてあがって来る(やや逆相関関係)ので、ハゼ音がどのタイミングで来たかをすり合わせれば、おおよその1ハゼを特定できる可能性があります。

なお10kgを超える大きい窯の場合は、蓄熱が高く火力操作による温度変化が鈍いのでRORが上昇する1ハゼ10℃前程度を基準に火力下げる操作を行うことが多いです。これ以下の容量の窯の場合(6kg以下など)は1ハゼ時に火力操作を行っても十分間に合います。

中点(Bottom、Turning Point)の重要性について聞きたい!

【答え】

中点=いわゆるボトムの温度は、これ以外の焙煎プロファイルにあまり変化を与えない場合、焙煎時間の長短に主にかかわります。

焙煎時間は短いと酸味が強くて質感が弱くなり、長いと酸味が弱くて質感が強くなります。

よって、

  • 中点が高いと焙煎が短くなって(特にDry Phase)酸味が強くて質感が弱くなります。
  • 中点が低いと焙煎が長くなり(特にDry Phase)酸味が弱くて質感が強くなります。

*ここら辺の部分はScott Raoなど反対の見解を持つロースターもおり、根拠とする論文や化学考察によって分かれています。ファナティックが採用する論文や多くのロースターからのヒアリングでは、中点が低いと酸味が弱くなり、質感は強くなるという結果に至っています。

【補足】割れる初期熱量動向の考察

ロースターによっては焙煎初期の方が豆の体積上昇が大きくなるという考察の方がいます。初期に高い熱量をかけた方が生豆内部への熱の通りがよくなって食物繊維の剥離と多孔化が促進され(More Inner Bean Develop)、質感が強くて抽出収率が高くなるという主張です。

しかし私はそれとは反対の考察を行っています。確かに熱量を高くすると生豆内部への熱量の移動は早くなりますが、比例しては早くなりません。肉を焼くときや、コメを炊くとき、その他の大抵の調理などでもそうですが、高熱量をかけると内部に火が入る前に外側の調理が先に進みます。内部に火を通す場合は熱量を柔らかくしてある程度時間をかけて加熱する必要があります。

上記の図は焙煎進行における生豆の体積膨張(ふくらみ)を現したグラフですが、焙煎初期で豆のサイズがそれほど変わらず、主に1ハゼ近辺で大きく拡張しています。ロースターの体感的にも通例はこの図の通りになるでしょう。

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なお、中点が高いと焦げにくくクリーンになりやすいです。中点が低いと豆表面が焦げやすくなり、苦味や焦げ味が出やすくなります。ドラムの温度が低い場合には吸着水が悪さをし、また焙煎時間が長いと純粋にドラムとの接触時間が長くなるので焦げやすくなります。

*焦げについては下記ブログのScorchの項をご覧ください♡

焙煎においては狙った通りに正確な中点(Bottom=Turning Point)を達成することは結構難しいのですが、プロファイル設計の観点からみると、この投入温度管理ではDrying Phaseでの熱量管理と組み合わせることによって、焙煎初期のプロファイル調整や修正を行うことできます。

例えば、投入後想定よりボトム温度が下がってしまった場合にはDrying Phaseでの熱量を高くすることで焙煎序盤のプロファイルの補正を行うことができ、反対にボトムが上がってしまった場合はDrying Phaseでの熱量を低くすることで補正できます。

この様に投入温度管理とDrying Phaseの熱量管理をシーソーのように操作(Roast Control)することで、予測しづらい焙煎初期の熱量動向をコンロトールすることができます。

Bufferって必要ですか?マグネシウムとカルシウムの役割は?

【答え】

最近ではカスタムウオーターといったように、純水にミネラルを添加して水を作成する事例が増えてきました。

実はこういった水質調整の元ネタは、ほぼほぼ熱帯魚屋さんや水族館でのお仕事内容なので、難しい英語の文献を読まなくても、実は近くの熱帯魚屋さんに聞いてみた方が理解度は高くなるかもしれません(笑)。

まず水の酸性度合を緩衝する機能のあるBuffer成分についてですが、コーヒーの場合はまず全く必要ないといっても過言ではありません。一般に高度の高い水は酸性に傾きやすくはなるのですが、コーヒーに使用される水は高くても硬度150mg/L程度で、ほとんどpHや酸度に影響を与えません。硬度1,551mg/Lを誇るコントレックスでさえもpHは7.3です。

過去にブログに書きましたが、推定硬度526,500mg/Lのマグネシウム濃縮液でもpHは高々5.6くらいで、それほど酸性に傾いていませんでした。

またBuffer成分である炭酸水素ナトリウム(重曹)は苦味を持っています。よって余計な苦味を添加しないためにも、無理にBuffer成分を計算して混入させる必要はないでしょう。そもそもBufferでのpH調整は魚が生活できるように、魚の種類に応じて調整される訳です。なので、やみくもにそのまま採用してはいけませんね。

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また各ミネラルの味わいの傾向ですが、味の対比効果によりコーヒーには以下の影響を与えます。

  • カルシウム=甘さの印象向上と質感の強度と苦味の増大に寄与
  • マグネシウム=甘さ、酸の印象向上と、質感の強度と苦味の増大に寄与

なおミネラルは含有量が多すぎると苦味と質感の荒々しさが顕著になり、コーヒーのフレーバーや酸といった要素を棄損していきます。現実的な硬度は200mg/L程度が上限なのではないかと思います。

上記のようにマグネシウムはカルシウムの要素を内包しています。よって、カルシウムも特に理由がなければ実は添加不要です。

ちなみに、マグネシウムは反応が強い元素の一つでもあり、硬度の計算においてはカルシウムの1/2の量でも同程度の硬度を表します(分子量の関係)。

私は決死の覚悟でマグネシウム濃縮液をなめてみましたが(笑)、あわやテイスター生命と引き換えにほのかな甘さに、塩味、金属用の酸、そして強烈な苦味と収斂味を感じました。カルシウムの場合は塩味、と強い苦味が感じられました。

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ということで対象がマグネシウムだけになればカスタムウオーターの計算もすごく楽になります。

一般的にはエプソムソルト(硫酸マグネシウム)を使用することが多いと思いますが、私のようにマグネシウム濃縮液を使用してもよいと思います。ただいずれの場合もマグネシウムのみを溶かすことはできないので、若干の硫化物、またはナトリウムなどの他の塩も含まれてしまう可能性がありますね。

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というところで、今回の回答編はここまでになります。

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ちょっとはすっきりしたかしら?

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果たしてその問に答えはあるのか・・・・。

悩めるこのときめきはまるで激しいマグネシウムの様・・・・・。

そうだ!!

これこそ恋の一ハゼだ!!!

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投入準備よーし!?(/・ω・)/

ちゅどーん